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株価の動きが読めない…投資は見送るべき?→実は「タイミングを考えない継続投資」が望ましいといえる理由【マクロストラテジストの見解】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年8月17日 9時15分

株価の動きが読めない…投資は見送るべき?→実は「タイミングを考えない継続投資」が望ましいといえる理由【マクロストラテジストの見解】

(※写真はイメージです/PIXTA)

今月5日には日経平均株価が過去最大の下落幅(前日比−4,451円)を記録し、その翌日には過去最大の上昇幅(前日比+3,217円)となるなど、乱高下する株式相場。このような状況下では「いまは投資を見送ったほうが良いのでは」と考える人も多いでしょう。しかし、そのような「タイミングを見極める行為」は、長い目でみるとむしろ非効率かもしれません。フィデリティ・インスティテュートの首席研究員である重見吉徳マクロストラテジストが、「継続投資」の有効性を解説します。

今日や明日の値動きに意味はない⁉

米国の景気後退入り懸念から、世界の株式市場では大幅な下落が続きました。

他方、債券市場では利回りは大きく低下したものの、たとえば利下げの織り込みについていえば、年内に1%強(0.25%換算で4~5回程度)、来年に1.25%程度(同5回程度)と、「ソフト・ランディング」の織り込みといえます(≒「深刻な景気後退ではない」、あるいは「深刻な景気後退と決め打ちはできない」との見方です)。

(複数の調査がある)米労働省の雇用統計は「悪化」というよりも、「鈍化」の範囲ですから、「ソフト・ランディングの織り込み」は自然といえるでしょう。「決め打ち」も、「決め打ちに基づく恐れ」も良い行動にはつながりません。

いまは、「資産運用を続けることを運命と覚悟する」かのように感じて(⇒もちろん、実際にはみなさん次第です)、「時間と資産の十分な分散を行う」ことです。そうすれば、「短期的な痛み」は小さくなり、「長期的なリターン」の獲得に向けて、資産運用の継続を容易にします。

今日や明日の値動きは意味のないものです。資産運用の予定期間、資産運用の目的を思い出してください。5年先の米国経済、10年先の世界経済、20年先、30年先のイノベーションを見据えてください。

継続投資の重要性

[図表1]をご覧ください。

【緑のライン】は、S&P500です。【赤の縦線】は、あるタイミングを示しています。【赤の縦線】はおおむね、【緑のライン】のS&P500が大幅に下落するタイミングと同じです。

実は、【赤の縦線】は、「S&P500の日次上昇率トップ40のタイミング」です。確認すると、「下落率」ではありません。

すなわち「株価の大幅上昇」は、株式市場が急落しているタイミングで発生しがちです。

なぜでしょうか。たとえば、

・急落の局面はパニックが生じていて、相場の下落が過剰であり、自立的な反発(買い戻し)がある

・急落の局面は金融緩和や財政出動などの政策対応が打たれ、これが相場の転換につながる

といったことが挙げられるでしょう。

急落の局面で売却すると、大幅な反発・戻りを取ることができない可能性があり、その後に投資を再開してもリターンが大きく減ることになります。そうなるよりも、資産運用は継続するほうが、成果が高いことはいうまでもありません。このことを[図表2][図表3]で確認します。

[図表2][図表3]は、【青色の棒】「S&P500への継続投資の成果」(1988年1月以降)と、【灰色の棒】「S&P500が大幅上昇を記録した日に投資していなかった場合の成果」(同)を比べたものです。

1988年から直近までに約9,500営業日ありますが、このうち、たった1日、たった5日、たった10日……、投資をしていなかっただけで、資産運用の成果は大きく異なります。

タイミングを取らず、継続投資を続けることが望ましいとわかります。

資産運用は経済・企業活動の成果を取るもの

[図表4]は、投資期間に沿った「最大上昇率と最大下落率」(年率、円ベース、1985年1月以降)を測ったものです。

【一番左】「投資期間が1年」の場合、大きく上昇する場合もあれば、大きく下落する場合もあります。非常に良い「12ヵ月間」に当たれば大きなリターンを得られますが、非常に悪い「12ヵ月間」に当たれば大きな損失となります(→前節の観察にならえば、両者は近いタイミングで生じている可能性があるでしょう)。

同様に、【真ん中2つ】「投資期間が5年間」や「10年間」の場合、非常に悪いタイミングに当たれば、投資成果がマイナスになる場合もあります。

他方で、【一番右】「投資期間を20年間」まで伸ばせば、マイナスになることはありませんでした(→将来を保証・示唆するものではありません)。

このデータは、「資産運用は短期間で行うものではない」ことを示しているでしょう。逆に、たとえば、12ヵ月間しか投資をしないなら、それは投機と似た性格を持ちます。

また、資産運用は、経済成長やこれに伴う企業活動の成果を得るものです。このデータはそうした成果は、長期間によってはじめて安定的に得られることを示唆しているでしょう。

下落したら売るべきか?

[図表5][図表6]は、S&P500とTOPIXの「年間リターン」【緑の棒】と、「年初来の最大下落率」【赤の点】、を比較したものです。わかることは、

・【赤の点】毎年、それなりに、年初来で見て下落します。

・【赤の点】1年のうちで大きく下がった時に売却することに比べると、【緑の棒】年末まで持ち切ったほうが下落率が少ない場合がほとんどであり、年末値が年初来安値になるケースはまれです。もちろん、年間で上昇する場合が多くあります。

株式市場は大きな下落を経験したとはいえ、まだ年初来で見ると上昇しています。そして、「ソフト・ランディング(≒「深刻な景気後退ではない」)」の可能性も十分に考えられます。仮に、下落に転じる場合にも、資産運用は継続することが望まれます。

これから下落なら積み立て投資

[図表7]は、2000年のITバブルのピークから、基準価額10,000円の米国株式投資信託(S&P500に連動)積み立て投資を始めた場合の、投信の基準価額【緑】と平均買い入れ単価(=持ち値)【灰色】の推移を見たものです。言い換えれば、「最悪のタイミング」から積み立て投資を始めた人の状況を追いかけています。実は最悪ではなく、良いタイミングです。

この投資家は、2000年8月のITバブルのピークから積み立て投資を始めていますから、買い始めた途端に【緑】の基準価額はどんどん下がっていきます。ITバブルの崩壊です。ただし、それとともに【灰色】の買い入れ単価(=持ち値)も下がっていきます。

その後、【緑】の基準価額が10,000円に戻るのは、2006年の10月です。ただし、投資家が含み益に転じるのは、それよりも3年程度早い2003年12月です。当然ながら、この投資家は、2000年8月から毎月積み立てをして、持ち値が下がっているためです。

株価の下落局面で積み立て投資を開始すれば、株価の完全回復を待たずとも、含み益が出ます。同じことは、2008年のリーマン・ショックでも確認できます。『100年に1度のショック』でも大丈夫でした。

もしも、みなさんが、「株価は「長期右肩上がり」だと思うが、しばらく株価は下がる」と考える場合には、積み立て投資は「痛みを少なく、そして、大きな成果を得られる」可能性があります。

合わせて、【右】の【緑】と【灰色】の「系列名称」のところに直近の基準価額と買い入れ単価を載せておきました。

24年間ほど積み立て投資をし、直近の基準価額が57,000円を超えても、買い入れ単価は18,000円台と持ち値はかなり低い状態です。

まとめると、「これから下がるなら、積み立て投資。全戻しせずとも、プラスに転じる」です。

重見 吉徳

フィデリティ・インスティテュート

首席研究員/マクロストラテジスト

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