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新宿在住・生活保護の45歳男性、青森には足の悪い高齢母がひとり暮らしも「地元には仕事がないから戻らない」【社会学者が解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年8月22日 10時45分

新宿在住・生活保護の45歳男性、青森には足の悪い高齢母がひとり暮らしも「地元には仕事がないから戻らない」【社会学者が解説】

(※画像はイメージです/PIXTA)

若者期と高齢期に挟まれた35歳から64歳のミドル期のひとり暮らしが増加しています。シングル化の傾向は日本全土で強まっていますが、特に東京区部で卓越して進行しています。本記事では、宮本みち子・大江守之編著、丸山洋平・松本奈何・酒井計史著「東京ミドル期シングルの衝撃」(東洋経済新報社)から一部抜粋・編集して、ミドル期シングルにおける親との関わり方の実態を解説します。

すでに存命でないケースも多いが…親との交流頻度

まず、ミドル期シングルの人々が、親とどのような交流をしているのかをみてみましょう。

親の状態をみると、親の健康は40代までは父母共に良い状態にありますが、50代に入ると3割強の父母は健康が良くない状態にあります。50歳未満の人では、父親4人に1人が亡くなり、50歳以上の人では7割が亡くなっています。一方、母親に関してはそれぞれ1割、4割が亡くなっています。つまり、ミドル期後半まで母親が存命の人は少なくないのです。

ではシングルは親とどのくらい交流しているでしょうか。交流頻度をみると男性と女性とで大きな違いがあります。男性は年数回の交流が最も多いのに対して、女性は週1回以上、月数回が多くなっています。週1回以上の頻繁な交流をしているのは女性で、男性を大きく上回っています。

年齢でみると図表1の通り、女性の場合60〜64歳で最も交流が多く、週1回以上が半数を占めるのは、高齢に達した親を気遣っているからではないかと思われます。これらの人の中には親が遠方にいる場合もあることをみると、携帯電話やSNSによる交流が頻繁に行われているのではないかと思われます。それとは対照的に同年代の男性にはそのような傾向はみられません。

インタビュー調査から、親子関係がどのように維持されているのかをみてみましょう(新宿区新宿自治創造研究所[2014])。毎日電話している女性、誰かとつながる必要を自覚して親との関係を復活させた女性、未婚の息子を頼る孤独な母親の姿が浮かびます。

・宮城県の親とはほとんど毎日電話をしています。(47歳女性)

・母親とはあまり仲がよくなかったのですが、最近やっと話せるようになりました。仕事中心の生活で、母親と話すことは時間の無駄ぐらいに感じていましたが、自分ひとりでは生きていけない、大きな仕事をしようと思ったら、誰かとつながっていないと何もできないという思いをもつようになってから、いろいろ話すようになりました。(41歳女性)

・母親は寂しいようで、よく電話をかけてきます。毎日かけてくることもありますよ。姉や弟は結婚しているので、気兼ねしているみたいです。母親の電話に出なかったら怪しむでしょうし、母親は家も知っているので、何かあったら来ると思います。(43歳男性)

遠方の親との交流頻度

親との地理的距離(出身地でみる)でも関係をみてみましょう。

図表2は、出身地との関係を示しています。男性と女性とでは傾向がまったく異なっています。男性の場合、出身地が遠くなるほど交流頻度は下がり年数回が多数を占めるようになります。一方女性の場合、距離による違いはそれほどなく、週に1回以上、または月に数回の交流をしている人が少なくありません。なお、東京区部出身者の場合は週に1回以上接触している人が男性で約4割、女性で約5割と接触頻度が高くなっています。日常的に親と行き来している人が少なくないものと思われます。

東京区部出身の女性は、身内が近くに複数いるので頻繁に連絡をとっているといっています。

・家族はみんな都心にいるので、すぐ連絡を取り合えます。(41歳女性)

なお、「ほとんど交流がない」という人に限ってみると、男女とも必ずしも親が遠方にいるとはいえません。距離のバリアのために頻度が低いというよりも何らかの理由があって疎遠になっていることが感じられます。

本人の年収が親との交流頻度に影響を与えている?

交流頻度が経済状況と関係するかどうかを「年収」でみると、図表3の通り、週1回から年数回までに関してはそれほど大きな違いはみられません。一方、「年収300万円未満」の層に限ってみると、親との交流が「ほとんどない」人がやや多くなっています。特に男性にその傾向がみられます。

・実家には用事がない限り電話もしませんし、実家からも連絡は来ません。(37歳男性)

・母親が青森に住んでいて、たまに連絡をとるくらいです。母は足が少し悪いですが健康です。青森には仕事がないので、母も戻って来いとはいいません。(45歳男性、生活保護受給)

おひとりさまは正月を誰と過ごす?

次に、親との交流の具体的例として、正月を誰と過ごすのかをみてみましょう。親のいない人は除外した上で、年齢でみると、図表4(左)の通りで、若いときほど親と過ごす比率が高くなっています。男女で比べると、どの年齢でも女性のほうが10%以上上回っています。出身地による違いはありません。

正月に郷里で過ごすには費用がかかりそれが障害になる例もあると思われますので、年収との関係をみますと、図表4(右)の通りで、300万円未満層で正月を親と過ごす人が顕著に少なく、男性では300万〜500万円未満でもややその傾向がみられます。先にみた交流頻度と比べて年収との関係が顕著に出ているのは、実家に帰るための費用が障害になっているのかもしれません。

ただし、日頃の交流頻度が少ない場合でも正月をともに過ごす比率が高いのは、正月というものが身内で過ごす行事として定着し、シングルにとっては親と正月を過ごすことが年中行事となっているのだろうと思われます。

インタビューのデータ

本稿で用いるインタビューのデータは、新宿区新宿自治創造研究所が2014年に、新宿区で暮らす35歳以上のシングルに実施したインタビュー調査で得たものです。本稿でそのデータを活用する理由は、家族的関係に関する質問紙調査結果を補う生の声が豊富であると判断したためです。

この調査の対象者は、新宿区広報、ホームページ及び単身世帯意識調査対象者からの公募によって選定しました。インタビューは、区の施設やインタビュー協力者の指定した場所において、研究員2名による面接方式で実施しました。

但し、この調査の実施年は質問紙調査の実施時期より5年早い2014年です。その点を考慮して、データから質問紙調査の対象者の生まれ年に該当する40代・50代の44ケースを選んで本稿で利用することにしました。筆者は調査プロジェクトのアドバイザーとして調査に参加しました。データの使用については使用許可を研究所から得ています(新宿区新宿自治創造研究所[2014])。

宮本 みち子

放送大学・千葉大学

名誉教授

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