じいちゃん、なんとかして!…年金27万円“安泰の老後”を手に入れた80代・元公務員夫婦、愛する孫への「大学入学祝い」を後悔したワケ【税理士の助言】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年8月25日 11時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
教育資金として1,500万円まで非課税となる「教育資金の一括贈与の特例」。しかし、使い方を誤ると恐ろしい悲劇を招くことも……具体的な事例をもとに、本制度の注意点をみていきましょう。多賀谷会計事務所の宮路幸人税理士が解説します。
なにがあったんだい…“安泰の老後”を脅かす「孫からの電話」
88歳のAさんと86歳の妻Bさんはどちらも元教師です。月約27万円の年金のほか、十分な退職金も受け取っていたため、金銭的には何も不自由のない老後を送っていました。
そんなA夫妻には息子(Cさん)がひとり。そして初孫であるCさんの息子(Dさん)は、1浪の末、見事難関私立大学に現役合格しました。浪人にかかる費用を援助していたA夫妻も、自分たちのことのように喜んだといいます。
なにか孫が喜ぶことはできないか……そう考えたA夫妻は、孫が大学へ入学するタイミングで「教育資金の一括贈与の特例」の制度を使い、上限額の1,500万円を贈与することにしました。Cさんは「Dが甘えるから」と遠慮していましたが、最終的にはA夫妻の熱意に負けて贈与を了承しました。
Dさん「じいちゃん、ばあちゃん、本当にありがとう! 絶対良い会社に入って恩返しするから!」
4年生の夏、孫は第一志望だった大手広告代理店に就職先が決まり、翌年無事に大学を卒。
Dさん「おじいちゃんたちからもらった入学祝いのおかげで楽しい学生生活が送れたから」と、初任給で回らないお寿司に連れて行ってくれたそうです。
老後の金銭的な不安もなく、独り立ちした孫は初任給でごちそうしてくれる良い子に育ってくれた……A夫妻は「もう思い残すことはないな」と笑いながら話していました。
そんなある日、Dさんから1本の電話が。電話に出たAさんは、Dさんの狼狽っぷりに驚きます。
Dさん「じいちゃん、やばいやばい! 大変なことが起きた……なんとかして!」
あまりの熱量に最初は振り込め詐欺かと疑うほどでしたが、どうやら本人のようです。動揺するDさんをなだめて話を聞こうとするも、どうにも要領を得ません。
Aさん「ちょっと待ってなさい。いま行くから」
A夫妻が暮らす家は、Dさんがひとり暮らしをする家まで電車で約1時間。そこで、思い切って直接Dさんの家へ行ってみることにしました。
順風満帆だったはずが…孫が取り乱していたワケ
Aさん「それで、いったい何があったんだい?」
Dさん「みてよこれ……」
そこには、税務署から届いた1通の封筒が置かれていました。
Dさん「入学祝いでもらったあの1,500万円の贈与税を払わないといけないんだって……200万円なんて急に払えないよ!」
なんと、大学生のDさんは教育資金として贈与を受けた1,500万円のうち、約1,000万円を車や旅行に使ってしまっていたというのです。このため、教育資金として使ったと認められないものについては、贈与税が課税されることに。
Aさん「なんてバカなことを……あぁ、こんなことになるなら入学祝いなんてあげなければよかった」
悔やんでも悔やみきれないA夫妻。今後は孫の給料から月々返済するという条件で、納税費用を肩代わりしたのでした。
「教育資金の一括贈与の特例」のメリット・デメリット
ではここで、「教育資金の一括贈与の特例」のメリットとデメリットを確認してみましょう。
メリット
①最大1,500万円までの生前贈与が非課税になる
贈与したお金の使途は限定されるものの、1,500万円までは贈与税がかかりません。このため子供や孫の学費を払いたい、学習塾代などの負担を軽くしたいと考えている場合は良いでしょう。
②暦年贈与と併用できる
「教育資金の一括贈与の特例」と「暦年贈与」は、併用が可能です。教育資金の一括贈与の特例を使っていたとしても贈与税の基礎控除額110万円は適用されるため、節税効果を高めることができます。
デメリット
①使い切れなかった分の贈与資金は相続財産に加算される
贈与者が途中で死亡するなどして使い切れていない部分は、原則として相続税の課税対象財産として扱われます。
②扶養者からの教育費・生活費はそもそも非課税となっている
両親や祖父母といった扶養義務者からの教育費や生活費の贈与はそもそも非課税であり、贈与税がかかりません。そのため入学金や授業料を支払う際、都度贈与をする形でも問題はありません。
③手続きが煩雑で大変である
税法改正等により所得制限などの要件も年々厳しくなり、また制度を取り扱っている銀行や金融機関から預金を引き出すときは金融機関に領収書等を提出しなけらばなりません。この手続き等が煩雑で、さらに教育資金であるかどうかの基準も厳しくなっています。
非課税のはずが…「思わぬ課税」のリスクには注意が必要
「教育資金の一括贈与」の制度は、教育資金であればまとめて1,500万円まで贈与できるため、富裕層を中心としたの税金対策として検討されることも少なくありません。
しかし、使い切れない場合や、教育以外の目的で使ってしまったときなどは贈与税がかかることになるため注意が必要です。
この制度を利用するときは、思わぬ贈与税や相続税がかかるといったデメリットもあります。その点を含め、税理士等の専門家に相談されるとよいでしょう。
宮路 幸人
多賀谷会計事務所
税理士/CFP
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