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名古屋のお屋敷で、何不自由なく暮らす70歳父の遺言状…母と同居の長男が「8,000万円の実家」をもらうも、次男・長女は「現金950万円ぽっち」。不平等でも聞き入れられたワケ【FPが解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年8月18日 11時45分

名古屋のお屋敷で、何不自由なく暮らす70歳父の遺言状…母と同居の長男が「8,000万円の実家」をもらうも、次男・長女は「現金950万円ぽっち」。不平等でも聞き入れられたワケ【FPが解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

相続財産のなかに不動産が含まれている場合は、ややこしくなりがちです。これは、不動産をお金に換算した価値をピザやホールケーキのように等分できないためです。そしてさらに、相続をややこしくさせるシチュエーションがあって……。本記事では大原さん(仮名)の事例とともに、相続財産に資産価値の高い自宅が含まれる場合の注意点を、FP事務所MoneySmith代表の吉野裕一氏が解説します。

70歳父「そろそろ終活を…」

大原さんは、名古屋市に先祖代々住んでいる一家です。子どもは3人。すでに全員独立をしていて、次男と長女は家を出て自分たちの家庭を築いていました。長男家族は、子ども2人と両親の大原さんと同居し、今後も住み続ける予定です。

年金生活の大原さんは、年齢も70歳を過ぎたことや、孫たちも大きくなったことから、終活について考えるようになりました。大原さんの自宅は昔ながらの家で家屋は古いものの、広い庭もある土地。これまでも固定資産税を多く支払っているという自覚がありました。そこで、相続があった場合の相続税や財産分割について、税理士に相談に行くことに。

大原さんの資産の評価は、不動産や現金など合わせて1億円。内訳は、下記のとおりです。

土地・建物:約8,000万円

現金・生命保険:約2,000万円

税理士からは、遺産相続の概要についても説明を受け、法定相続割合で分割する場合は、妻に遺産総額の半分を、残り半分を子どもが3分の1ずつわけるという説明を受けていました。その際、生命保険は、受取人固有の財産になるので、相続税の計算時には合算されますが、遺産分割の財産には含まれないという説明も受けました。この際、生命保険の受取人は妻で、保険金は1,000万円でした。

大原さんは遺産のことで子どもたちが揉めることはなく、円滑に相続ができると思っていました。しかし、実際には大きな問題があることがわかったのです。子どもたちに負担をかけたくないという思いから、これを機に大きな不安を抱くようになります。

不動産の価値が高いと相続で揉める原因に

現在の相続財産総額が1億円であっても、現金や生命保険は2,000万円で大半が不動産となっていることを税理士に指摘されたことから、大原さんは改めて筆者のもとへ相談に来られました。

長男は現在も実家に住んでおり、今後も住み続けるということなので、妻と長男のどちらかが不動産を相続する予定にしていたのですが、このときに、問題になるのが次男と長女へ財産分与する方法です。

現金と生命保険は2,000万円ありましたが、生命保険の受取人は妻です。妻の相続予定額は、生命保険を含めて5,500万円。子どもたちには、残り4,500万円を3等分すればいいのですが、残りの資産である現金が1,000万円しかありません。不動産を切ってわけるというわけにもいかず、どうしたものかと頭を抱えます。

長男が不動産を相続するということは、8,000万円を1人で相続するということです。そうすると、長男は自分の財産から相続分を妻(長男にとっては母)ときょうだいに支払うことになってしまいます。長男が相続をした場合には、6,500万円を支払わなくてはいけなくなり、そんな財産は持っていません。

この相続の方法を代償分割といいます。現物財産を相続する代わりに、ほかの相続人の相続分を現金で支払うという方法です。妻が不動産を相続した場合は、最大で生命保険を除いて4,500万円の遺産分割ができますが、やはり代償分割は必要です。受取人となっている生命保険を含めても、代償分割分を支払うことができないという事態になります。

生命保険の活用と代償分割の提案

筆者が今回の相談で提案をしたのは、残りの現金を長男が受け取る生命保険にすることでした。前述しましたが、生命保険にすることで、受取人固有の財産になるため、長男へ確実に渡せることになります。さらに相続財産からは除かれため、大原さんの遺産分割をする相続財産は8,000万円ということになります。そうすると、妻に4,000万円、残りの4,000万円をきょうだい3人でわけることになり、1人1,667万円ということになります。

また生命保険は、相続時に相続人の数1人に500万円の非課税枠があります。今回のケースでは相続人が4人であるため、ちょうど2,000万円の生命保険は非課税で受け取ることができるようになります。残りの現金を生命保険にしたとしても、8,000万円の相続財産の場合、子どもたちは相続税を払う必要があり、

基礎控除3,000万円+相続人の数×600万円

5,400万円を引いた2,600万円のそれぞれの法定相続分に対して、課税されることになります。

配偶者の場合は、1億6,000万円か法定相続分までは課税されませんので、今回のケースでは非課税で相続することができます。残りのきょうだいには、法定相続分にあたる1,300万円の3分の1の約433万円に対して課税されることになります。このとき、相続税の1,000万円以下の適用税率の10%が課税されることになり、1人43万3,000円の相続税が発生するでしょう。

家族との話し合い

しかし、今回は遺言により、不動産を取得する奥様と長男を優先し、ほかのきょうだいには遺留分を侵害しないように、現金を渡せるように代償分割で、950万円ずつを相続するように提案をしました。

代償分割は法定相続分の2分の1以下の相続を指定すると、遺留分の侵害にあたることから、子ども1人の法定相続分の1,667万円の2分の1以上が必要となります。そのため、950万円に設定することで、すべての子どもが保険金や代償分割のお金で相続税も支払うことができるように提案しました。

その後、家族での話し合いが行われました。いちから丁寧に説明したことで、不動産を妻と長男が相続し、法定相続分以下にはなるが、現金を受け取れるということで、次男と長女も納得してもらったようです。

今後、大原さんが先立たれたときには、遺言により相続が円滑に終わる可能性が高くなりましたが、大原さんの妻が不動産の2分の1を相続したことで、2次相続のことも考えておかなくてはなりません。今回の相談においてはひと段落しましたが、2次相続について、また改めて対策を考えていく必要があります。

吉野 裕一

FP事務所MoneySmith

代表

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