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「奨学金を借りてくれないか…」晩婚→47歳で「父親」になり17年。年金受給目前の64歳元会社員が、大学進学を目指す我が子に頭を下げた切実な事情【FPの助言】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年8月22日 7時45分

「奨学金を借りてくれないか…」晩婚→47歳で「父親」になり17年。年金受給目前の64歳元会社員が、大学進学を目指す我が子に頭を下げた切実な事情【FPの助言】

(※写真はイメージです/PIXTA)

子どもの成長は、親にとって何にも代えがたい喜びではあるものの、教育費の負担は家計にとって大きな支出の一つです。晩婚で子どもを授かった場合、子の大学入学と年金生活のスタートが同時期になることも考えられます。今回は45歳で結婚をし、47歳で子どもに恵まれた佐々木健司(仮名)さんを事例に、子どもの大学入学と年金生活のスタートという二大イベントが同時に到来する家計への対策について、南真理FPが解説します。

念願の結婚、待ち望んだ子どもを授かったが、17年後の今、苦境に

佐々木健司さん(仮名)は、婚活に苦労ながらも45歳の時に念願叶って10歳年下のひとみさんと結婚しました。その2年後(佐々木さん当時47歳、妻ひとみさん当時37歳)、待望の男の子を授かりました。

それから17年が経ち、佐々木さんは64歳になりました。60歳で定年退職後も会社に継続雇用されていましたが、業績不振のあおりを受け昨年退職せざるを得ず、現在は無職。求職活動をしていますが、納得して働けそうな職場は今のところ見つかっていません。65歳からは年金を月22万円(※)受給する予定です。※年間で267万円(内訳:老齢基礎年金78万円、老齢厚生年金150万円、加給年金41万円)

今、佐々木さんの頭を悩ませている問題があります。それは17歳の息子が来年大学入学を迎えることです。妻のひとみさん(54歳)は、会社員として年収300万円(税金や社会保険料が差し引かれる前の金額)の稼ぎがあるものの、妻の収入と自分の年金だけで大学費用を払っていけるのかが不安でなりません。

「年金をもらう年になるというのに、これから大学費用でたくさんお金がかかる。自分の老後資金も必要だし、これからの生活が不安でしかない…」

そこで佐々木さんはファイナンシャルプランナー(以下、FP)に教育費を含めた今後のライフプランについて相談することにしました。

FPは佐々木さんの話を聞き、まずは大学費用にどれぐらい必要なのか把握すること、そして選択肢の1つとして奨学金制度を利用する方法があることを伝えました。

子どもにかかる大学費用はどれくらい?奨学金制度を利用する選択肢も

大学にかかる教育費は、国公立か私立か、理系か文系か、自宅からの通学か下宿かなどによって大きく差が出ます。

生命保険文化センターの資料(※)によれば、国公立大学で自宅通学の場合の4年間の教育費は約480万円。下宿の場合は約810万円となります。また私立文系の場合では自宅通学は約670万円、下宿となれば約980万円も必要となります。さらには、私立の医歯系の学部となると、6年間大学に在籍し、通学で約2,500万円、下宿では約3,000万円もの教育費がかかります。

もちろん、これは平均であり実際にかかる金額はまちまちです。とはいえ、数百万円単位という高額の費用がかかることには変わりはありません。

これを聞いて佐々木さんの顔色はますます曇っていきました。

「私の息子は文系の私学への進学を希望しています。自宅から通学予定ですが、それでも600万円以上もの費用をどう払っていけばいいのか…。いや、大学費用は高いということは、ある程度わかっていたんです。それでも、目の前のことでいっぱいいっぱいで、なんとかなるだろうと現実を直視していませんでした。お恥ずかしい話ですが、貯金も300万円しかないんです」

すると、FPは1つの選択肢として奨学金制度を利用する方法があることを伝え、以下の内容を説明しました。

経済的な理由で進学を諦めることのないよう、高校生にはさまざまな奨学金制度が用意されています。一番メジャーなのが、日本学生支援機構(JASSO)の奨学金です。返済不要の「給付型」、将来返済が必要な「貸与型」の2種類あり、貸与型には無利子で借りる第一種奨学金、有利子で借りる第二種奨学金があります。

給付型、貸与型(無利子・有利子とも)に、学生の学力基準や世帯の収入基準が設けられています。貸与型の返還は、貸与終了の翌月から7ヵ月目の月からスタートします。

佐々木さんがしておくべきだったこと、これからすべきこと

佐々木さんのご家庭の場合、どのように大学の教育費と老後の備えをしておくべきだったのでしょうか。

①高齢で子を持つ場合「短期間での資産形成」が必須→対策をしていなかった

前述のとおり、佐々木さんが47歳の時に子どもが生まれました。となると、夫婦両輪という意味では佐々木さんが60歳で定年退職するまでの13年間という短期間での資産形成がマストであり、教育費と老後資金の準備を同時に進めなければなりませんでした。

それにも関わらず、佐々木さんは「結婚=マイホームを持つもの」という固定観念があったため、結婚してまもなく自宅マンションを購入。その時に頭金で貯金をかなり使いました。佐々木さんが80歳になるまで月約7万円の住宅ローン返済をしていかなければなりません。そのうえ、マイカーも所有しています。

妻の仕事復帰は長男を出産して1年後の予定でしたが、保育園がなかなか決まらず復職に3年もかかってしまいました。佐々木さんの両親は高齢であること、妻の両親も遠方に住んでいたため互いの親に頼ることもできませんでした。そのため、妻は子どもが中学生になるまでは時短勤務をせざるを得ず、収入アップもできずじまいでした。

根本的な問題として、佐々木さんは現役時代にそれなりに高収入を維持していたことで、逆に「お金に困ることはない」と過信していました。妻には必要と言われる金額を渡し、自分も使いたいだけ使っていました。夫婦でお金のことをきちんと話し合うこともなく、なんとなく生活をしてきた結果、貯蓄は300万円しかできなかったのです。

②児童手当は使わずに大学資金に充てる→いつの間にか使っていた

児童手当は、子ども一人当たり3歳未満は月1万5,000円、3歳以上から小学校修学前は月1万円(第3子以降は1万5,000円)、中学卒業までは月1万円が支給されます。さらに2024年10月以降は高校卒業まで月1万円支給されることが決まっています。 児童手当はトータルで約200万円貯めることができます。

長男の大学1年目の学費は入学金等も含めると約200万円必要であり、使わず貯めておけば、大学1年分の教育費は児童手当で賄うことができたのです。しかし、佐々木さんに確認すると児童手当はいつのまにか使ってしまったそうです。

③できるだけ長く働く→これからできる対策の1つ

佐々木さんは現在無職ですが、働いて月10万円の収入を得れば、長男が大学在学中の年間収支のマイナスを回避することができることがライフプランのシミュレーションから分かりました(下記参照)。仮に、70歳まで働いたとすると、長男大学卒業時の貯蓄額は約400万円になります。幸いにも佐々木さんは健康には自信があるとのこと。元気で働けるうちは、家計破綻しないためにも働くことを考えるべきでしょう。

■佐々木さんのライフプランのシミュレーション

【長男大学4年間の世帯収入】 世帯収入合計:2,748万円(手取り合計:2,300万円)  (内訳)  佐々木さん収入:480万円  妻収入:1,200万円  佐々木さん年金:1,068万円

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【貯蓄額】 300万円

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【長男大学4年間の世帯支出】 支出合計:2,174万円  (内訳)  生活費:768万円  教育費:650万円  住宅ローン:340万円  保険料:48万円  車輛費:88万円  その他支出:280万円

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【4年間の収支】 約400万円のプラス

長男卒業後、年間の家計収支は車の買替時期を除けば黒字となり家計破綻を回避することができます。

教育費と老後の生活費のダブルパンチ…晩婚世帯は早めの対策を

FPからのアドバイスを受け、佐々木さんは妻ひとみさん、長男と家族会議をされたそうです。その後、改めてFPと面談することになりました。そして、このように話しました。

「長男にお金のことで心配をかけることになり申し訳なさでいっぱいです。親として情けないですが、ここは包み隠さずに事情を話したほうがいいと判断しました。家族全員で相談をして、JASSOで有利子の奨学金(第二種奨学金)の申請をすることにしました。

返済が必要な奨学金ですから、子どもに社会に出る前に借金を背負わせることになります。子どもだけに負担をかけるわけにはいきませんから、可能な限り働いて稼ぎたいと思っています。私は選り好みをしている場合ではないので、こだわりを捨てて再就職先を見つけたところです。妻も収入アップを目指してくれるそうです。

奨学金を借りる責任は私たちにあります。子どもが返済するものだと考えずに、私たちが返済できる方法を模索したいです。家計も見直して、やりくりがうまくいかなければ家を売ることを考えたいと思います。後悔しても遅いですが、もっと計画的に貯蓄をするべきでした……」

先ほども解説したとおり、現状のプランでは、教育費の一部を奨学金で賄うこと、佐々木さんが働き始めることで贅沢な暮らしまではできないものの、なんとか今の生活は維持できそうです。とはいえプラン通りにいくとは限らず、余裕のない家計であることに変わりはありません。

教育費や住宅ローンの支払いがある場合、年金生活に入るまでに十分な貯蓄ができるよう事前の入念な計画と準備がより一層必要となります。なかでも「晩婚世帯」はリタイア後にいくら教育費がかかるのかがポイントです。教育費と老後の生活費が一気にのしかかるので、子どもが生まれた段階でライフプランを作成することが有効です。

なお、「子どもが勉強をしたくて大学に進学するのだから、奨学金を借りて自分で返済してもらおう」という安易な考えもおすすめできません。新社会人になって決して多くはない給与から返済をしていくのは想像以上に大変です。それが何年・何十年も続くことを考えれば、早いうちから教育資金を準備をすることは親の務めともいえるでしょう。

佐々木さんのように60歳を過ぎても仕事を続けられる体力や気力があればいいのですが、何らかの事情で仕事を続けられないケースもあります。現役時代から収入・支出の管理をしっかり行うことが重要です。子どもに迷惑をかけないために、ぜひご自身の家計の場合はどうなのか確認してみて下さい。

【参考資料】  生命保険文化センター「大学生にかかる費用はどれくらい?」

南 真理 ファイナンシャルプランナー

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