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「お姉ちゃんのために、あなたを産んだ」…障害のある50歳長女に、4,000万円と不動産を準備した元公務員の両親。父亡き後、病で死にかける母へ震えながら放たれた「次女のひと言」【FPが解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年8月19日 11時45分

「お姉ちゃんのために、あなたを産んだ」…障害のある50歳長女に、4,000万円と不動産を準備した元公務員の両親。父亡き後、病で死にかける母へ震えながら放たれた「次女のひと言」【FPが解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

障害者のきょうだいを持つケースは珍しくありません。こうした障害者は通常、親が面倒をみることになりますが、「親亡き後」はどうなるでしょうか? 本記事では、高橋恵子さん(仮名)の事例とともに、親亡き後の問題について、FP dream代表FPの藤原洋子氏が解説します。

障害のある我が子の将来に関するさまざまな問題

厚生労働省は、5年に1回「生活のしづらさなどに関する調査(全国在宅障害児・者等実施調査)」を行っています。 令和4年の調査結果から障害者の推計値は1,164万6,000人で、人口の約9.3%になります。そのうち身体障害者は423万人、知的障害者は126万8,000人、精神障害者は614万8,000人です。

親が元気なあいだは、親が障害のある子どもの生活などを支えながら暮らすことができます。しかし、親が亡くなったあとについて考えると、親にとっても不安が大きくなるようです。家族と一緒に住んでいる場合では、子どもを「いい施設」に入所させようと思っていても、気持ちの整理がつかず準備もできないまま、日々が経過する場合も少なくありません。

親が亡くなったあとに発生する問題の主なものは、以下になります。

・家族のように、本人をよく理解して生活や判断の手助けをする人がいなくなる。 ・家族に代わって身の回りの手伝いをする人がいない。 ・一人で適正な医療を受けることが難しい。 ・一人で契約/手続きすることが難しい。 ・単独での財産管理が難しい。 ・親亡き後に住む場所がなくなる。 ・毎月の収入が少なく生活が苦しい。 ・親亡き後に社会に居場所がなく、孤立・孤独の状態になる。 ・悪徳商法・財産侵害の被害に遭う。 ・災害時時に被災しやすい。 (以上出典:社会福祉法人 岡崎市社会福祉協議会 )

・親が亡くなったときの事務的な手続きや葬儀などの対応。 ・財産が国庫に帰属する可能性がある。

親の高齢化に伴って、認知症などで親自身の判断が難しくなってくることにも備えておく必要もあります。

きょうだい児が抱える悩み

「きょうだい児」とは、病気や障害のあるきょうだいがいる方々のことです。きょうだい児には、障害を持つ本人でもなく、また、その親でもないという立場だからこそ抱えている、さまざまな特有の悩みがあります。

なかでも、「親亡き後」の問題はきょうだい児にとっても切実です。ここでは、ひとつの家族の事例をみていきます。

姉の障害がわかるまで

高橋恵子さん(仮名/41歳)の姉の優子さん(仮名/50歳)は、軽度の知的障害があります。元公務員の父親(享年85歳)は5年前に亡くなっています。現在は、実家で母親(84歳・元公務員)と3人で暮らしています。

姉の優子さんは少し小さく生まれましたが、すくすくと成長していきました。母親は「ほかの子と比べると話す言葉が少ないかしら」と感じていたそうです。「おとなしい子なのね」そう思っていましたが、そのこと以外には、なんら気になることはありませんでした。

しかし、小学校に入学したころから、授業のスピードについていけないようで、学習に遅れがあることが指摘されました。担任の先生から、専門機関を受診するように勧められ、検査を受けて障害があると診断されたそうです。優子さんのことで両親ともに当初は大変なショックを受けました。しかし、優子さんの将来を前向きに考え、明るく暮らしていこうと決めました。

母の決断

母親は中学校の教員でした。母親は転職し、仕事をフルタイムからパート勤務に変更して、それからも優子さん中心の生活を続けました。その後、恵子さんが生まれます。母親は43歳になっており、高齢出産というリスクを伴っての決断でした。

姉の優子さんは、無事高校を卒業しました。恵子さんは当時まだ小学生。このころから恵子さんは、母親から「お姉ちゃんのことを助けてね」と繰り返し聞かされてきました。あるとき、母親が父親に「優子のために恵子を産んだ」と話しているのを耳にし、恵子さんはショックを受けたもののそういうものなのだ、と受け入れて生きてきました。もちろん、恵子さんも大人へと成長するまでの途中途中でさまざまな葛藤がありましたが。

高橋家の財産

姉は高校卒業後、少ししてから就職しました。

現在では、障害基礎年金と合わせて毎月17万円の収入があります。母親は遺族厚生年金と老齢基礎年金を合わせて15万円受け取っています。父親の遺した財産は、預貯金3,000万円、有価証券1,000万円、投資用マンションとそこからの家賃収入8万円/月です。両親は優子さんのために力を合わせてなるべく多くの財産を残してきたのです。

一見すると、遺産を使わなくても生活できると思われますが、優子さんはお金の管理が苦手で、衝動買いをしてしまうことがあります。大量の商品が届いたことも1度や2度ではありません。そのたびに多額の支払いをすることになるので、優子さんにはほとんど貯蓄はありませんでした。母親が返済することもあります。

母の残酷な言葉

現在、母親は入院しています。優子さん1人では、自分の収入はもとより、ほかの財産などの管理ができるとは到底思えません。母親は、日に日に重くなる自身の病状に「優子1人だったら、そのうちに生活費がなくなってしまう日が訪れたかもしれない」と、姉のことが気がかりでたまりません。「あなたを産んでよかった」母親は恵子さんの手を握りました。

たまらず恵子さんは「わたしはわたしの人生を生きたかった。どうしてお姉ちゃんに縛られなくてはならないの。お母さんの『産んでよかった』はふつうの母親が言う意味とは違う」泣きながら母親の手を振り払い、病室をあとにしました。

障害者の親亡き後に備えられる制度

優子さんの両親は、優子さんのために資産をなるべく多く残そうと考えていました。優子さんには恵子さんがいますが、将来本人が管理できない場合は、あらかじめ管理方法を検討しておく必要があります。障害者の親が亡くなったときに備える財産管理の方法を紹介します。

家族信託

親が亡くなったあとに頼ることのできる親族などがいる場合に活用できる可能性があります。親族などに財産を託しておき、その財産から障害のある子どものためにお金を使ってもらう約束をし、財産が残った場合は、お世話になった親族や施設に渡すこともできます。家族信託のほかに、信託銀行などに財産を管理してもらうことも可能です。

成年後見制度(法定後見)

判断力が不十分な方が生活をする際に「成年後見人」によって財産管理や契約行為などの法的な支援を行う制度です。家庭裁判所に後見人等の選任の申し立てを行い、家庭裁判所が決定し開始します。原則として本人が亡くなるまで継続し、報酬の支払いが発生するので、事前に確認しておくことが重要です。障害者が行った契約をあとから成年後見人が取り消すことができます。

障害のある子とそのきょうだいの「親亡き後」

障害のあるお子さんが、親の亡くなったあとどのようにしたらよいのか抱え込んでしまっても、堂々巡りになって時間ばかりが過ぎてしまうということになりかねません。親が元気なうちからさまざまな情報を得るために行動を起こしましょう。施設に入れるかどうかも慎重に検討しておきたい事柄です。親がいつまでも元気でいられることはないので、本人と地域との接点を増やしたり、「支援者とのつながり」を作ったりしておくことが必要です。

それが、母親にとっては恵子さんでした。ケアが必要なのは優子さんだけではないことを忘れてはいけません。孤独を抱え、生きづらさを感じやすいきょうだい児に対する、情報提供や支援体制の整備も非常に重要です。

参考

厚生労働省

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_40511.html

社会福祉法人 岡崎市社会福祉協議会 親亡き後

https://okazaki-shakyo.jp/afterdeath.html

厚生労働省 令和5年度障害者雇用実態調査結果報告書P13  (10)賃金の状況

https://www.mhlw.go.jp/content/11601000/001233721.pdf

一般社団法人 信託協会 特定贈与信託

https://www.shintaku-kyokai.or.jp/products/public_interest/public_interest/specific_gift.html

全国きょうだいの会

https://kyoudaikai.com/

藤原 洋子

FP dream

代表FP

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