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大逆転で優勝を逃した経験を糧に…工藤公康がたどり着いた“中間管理職”として大事な二つのこと

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年8月23日 9時21分

大逆転で優勝を逃した経験を糧に…工藤公康がたどり着いた“中間管理職”として大事な二つのこと

撮影:小山昭人

元プロ野球投手として通算244勝を挙げ、監督としては5度の日本シリーズを制覇した工藤公康(くどう・きみやす)さん。“中間管理職”としての野球監督のあり方や組織運営、試行錯誤しながら生まれたリーダーの姿などについてつづった『プロ野球の監督は中間管理職である』(日本能率協会マネジメントセンター)を上梓しました。「監督は中間管理職」という結論に至った経緯や中間管理職の悩みなど、工藤さんにお話を伺いました。

「監督は中間管理職」という結論に至ったワケ

――『プロ野球の監督は中間管理職である』を執筆されるに至った経緯をお聞かせください。

工藤公康さん(工藤):2015年に福岡ソフトバンクホークスの監督に就任して1年めのシーズンはリーグ優勝、そして日本一という最高の結果で終えることができました。1982年に西武ライオンズに入団して2011年に現役を引退するまでの29年間で培った自分なりの野球観には少しばかりの自信がありましたし、監督就任1年目のシーズンで良い結果を残せたことで「自分は間違っていなかった」との慢心から、選手やコーチ、トレーナーに対して「私のやり方でやってください」という一方通行のコミュニケーションが増えていたのです。

しかし2016年のシーズンは、独走していたホークスが最終的には北海道日本ハムファイターズに大逆転を許してしまい、シーズン2位という結果に終わりました。「私のやり方でやってください」と要求するコミュニケーションは窮地に立たされたときにとても脆いことに気づきました。「このままではいけない」と、自分のこれまでのやり方を振り返り「監督とはどうあるべきなのか」を考え直すことにしました。

本書にある組織図を見ていただけると一目瞭然なのですが、監督というのは、絶対的なリーダーでも大きな組織を率いる長でも何でもなく、会社における「中間管理職」のような立ち位置なのです。組織図を書き上げて、自分のコミュニケーションが「中間管理職」として求められているコミュニケーションとは大きくかけ離れていたことに改めて気づきました。

――監督は「中間管理職」ということですが、選手から監督の立場になって見えてきたことはどんなことですか?

工藤:たくさんありますが、原点は「みんな違う」ということです。人それぞれに「なりたい自分」があって、コーチも「こんなコーチになりたい」という理想像がそれぞれあります。先ほど述べたような「コーチはこうあるべき」のような思い込みをしてはいけない、人それぞれだから寄り添い方が違い、教え方も違い、知識も違うということです。

コミュニケーションのほかに、もう一つ大事なのが、シミュレーションです。私の場合は毎日試合がありました。次の試合をよくするためにとにかく前に進む必要があり、立ち止まっている時間はありませんでした。なぜなら、自分が立ち止まってしまうと選手が困ってしまうからです。

本当に毎日いろいろなことが起こりました。試合の前にも起こるし、「今日は無事終わったな」と試合後に思った瞬間に電話が鳴ることもありました。さまざなことが毎日起こる中で、ちゃんとシミュレーションをしておくことが大事ということを痛感しました。

――シミュレーションというのは最悪の事態も想定しておくということでしょうか?

工藤:そうです。ありとあらゆる怪我も起こるし、体調不良も起こります。選手によっては朝起きたら首が痛いということもあるので、ある程度臨機応変に対応できるようにしておく必要があります。そのためにはコーチたちと常に連携して、今状態の良い選手を把握しておく。そのためにはコミュニケーションが大事です。

結果が見えないからやらない、という選択肢はない

――監督業の傍ら、2020年には筑波大学大学院で体育学修士を取得されたということですが、常に勉強や新しい知識をいれることを意識されてきたのでしょうか?

工藤:私自身が新しいことに挑戦するのが好きなんです。新しいトレーニングを試すのも好きです。もちろんやってみてもうまくいかないこともあるかもしれませんが、結果が見えないからと言ってやらないという選択肢はなかったです。

例え他の人がやってダメでも自分がやったらよくなるかもしれないというクエスチョンを常に持ちながら野球をやってきた経緯があるので、試せるものは全て試します。その中で何がうまくいって何がうまくいかないかを自分なりに分析して、自分に足りない知識は勉強して蓄える。選手にも広い視野で物事を見てほしいという思いは常に持っていました。

必ずしも大学院に行かなければいけないというわけではありません。筋肉のことが知りたいのであれば、解剖学の本や生理学の本を読んでみたり、自分では理解できなくてもその知識を知っている人や詳しい人に聞いてみたりする。そういう時間をつくることが大切だと思います。

「とにかくルーティン化する」時間の捻出の仕方

――つい時間がない、忙しいと言ってしまうのですが、工藤さんは忙しい毎日の中でどんなふうに時間を捻出していたのですか?

工藤:私の場合は夢に出てきます。だから、夢で復習する。夢の中で自分の体を動かしていたこともあります。全部が全部夢に出てくるわけではないのですが、自分が本当に大切だと思っているものは夢に出てくるんですよね。

時間の使い方で言えば、監督をやっていたときは帰宅してから二軍の試合を見て、一軍の試合も見直して次の日のシミュレーションをしていました。もちろん時間がかかるのですが、その方法論がある程度自分の中でルーティン化すると短い時間でできるように自分の中で切り替わっていくのです。

――ルーティン化、習慣化するのが大事ということでしょうか?

工藤:何か起こったことに対して反省して分析して次のステップに進むというのも習慣化します。その回路ができるまで時間はかかりますが、回路ができあがると常にそういう考え方になります。

子供の頃に楽しかったことをやってみる

――読者の中には定年退職を迎えたり、現役を退いたりして自分の時間ができたけれど、いざ何かをしようと思うと何をしてよいのかわからないという人も多いです。

工藤:私が思うにそういう人は真面目な人が多い気がします。会社のために自分ができることを一生懸命やってきたのでしょうね。答えになっているかどうかはわからないのですが私の場合は結果的に言うと、子供の頃にやっていたことや楽しかったことをもう一度経験してみるのがいいんじゃないかなと思っています。例えば、子供の頃に川に行って遊んで楽しかったら、もう一度やってみる。私の場合はちょっとした親の手伝いでやった農業を今やったりしています。

THE GOLD60編集部

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