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親が亡くなったら真っ先に銀行へ電話!「口座凍結」されても、金融機関に「死」を早く知らせるメリット【弁護士が解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年8月30日 18時55分

親が亡くなったら真っ先に銀行へ電話!「口座凍結」されても、金融機関に「死」を早く知らせるメリット【弁護士が解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

故人の銀行口座にある預貯金は、たとえ相続人であっても自由に引き出すことができません。金融機関に口座名義人の死を知らせると口座が凍結することは周知の事実でしょう。本記事では、被相続人の預貯金を相続人でわける方法について、Authense法律事務所の堅田勇気弁護士が詳しく解説します。

預貯金の遺産分割

はじめに、預貯金と遺産分割の基本を解説します。

「預貯金も遺産分割の対象」の意味

大前提として、故人(「被相続人」といいます)の預貯金は、遺産分割の対象となります。これだけを目にすると、「そんなことは当たり前ではないか」と感じるかもしれません。

しかし、民法では「各共同相続人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継する」と規定されており、可分債権は遺産分割をするまでもなく自動的に相続分で分割されることと解されています。

可分債権とは、その性質上分割が可能な債権を指します。代表例は貸付金です。たとえば、被相続人の相続人が配偶者と長男、二男の3名であった場合、被相続人がA氏に400万円を貸していた場合、遺産分割をするまでもなくA氏に対する貸付金のうち200万円は配偶者が、100万円は長男が、残りの100万円は二男がそれぞれ承継することが原則となります。

同様に、預貯金も可分債権であると考えられることから、以前は預貯金も遺産分割の対象外であり、相続分によって自動的に承継されるものと解されてきました。

そのため、被相続人がB銀行に400万円を預金しており、配偶者と長男、二男が相続人である場合、遺産分割協議を経るまでもなく配偶者は200万円、長男と二男はそれぞれ100万円を単独で引き出せるという建て付けになっていました。

とはいえ、たとえ可分債権であっても、相続人全員が合意することで遺産分割の対象とすることは可能です。

実際に遺産分割の対象とされることが多かったことから、金融機関に一部の相続人が単独で払い戻しを求めたとしても、実務上は払い戻しに応じてもらえないことがほとんどでした。

また、預貯金が遺産分割の対象にならないとなると、預貯金が遺産分割の調整弁としての役割を果たせず不都合が生じます。このように、法律の建て付けと実務がズレていた状況がありました。

そのようななか、最高裁判所が2016年(平成28年)12月19日に「預金債権は、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく、遺産分割の対象となるものと解する」とする判決を下し、従来の判例が大きく変更されました(最高裁判所平成28年12月19日大法廷決定)。

これにより、判例においても預貯金が遺産分割の対象となることが明示され、実務と判例の考え方が一致するに至っています。

預貯金を引き出せるのは、原則として遺産分割協議の成立後

先ほど解説したように、2024年(令和6年)現在では、預貯金が遺産分割の対象となることについて明確となっています。そのため、被相続人の死亡後に預貯金を引き出すためには、原則として遺産分割協議(遺産分けの話し合い)を成立させなければなりません。

たとえ法定相続分に相当する部分だけであったとしても、遺産分割協議を経ることなく引き出すことは原則としてできないことには注意してください。

遺産分割協議成立前に預貯金を引き出すことはできる?

遺産分割協議の成立前に、被相続人の預貯金を引き出すことはできるのでしょうか? 整理して解説します。

金融機関に死亡連絡をしないと口座は動いたまま

誤解も少なくありませんが、2024年(令和6年)2月現在、人が亡くなった時点で銀行口座が自動的に凍結される運用はされていません。そのため、被相続人の口座は、その者が亡くなったことを遺族などが金融機関に連絡をしない限り、動いたままとなっていることが原則です。

一方で、遺族などが金融機関に死亡の連絡を入れるなどして金融機関が口座名義人の死亡を知った時点で口座は凍結され、入出金ができなくなります。

キャッシュカードを使っての引き出しは禁止されている

金融機関に連絡を入れるまでの間は口座が動いたままであるということは、キャッシュカードが手元にあり暗証番号もわかるのであれば、これを使った引き出しは事実上可能であるということです。しかし、キャッシュカードは金融機関の約款により、本人以外の使用を禁じられていることが原則です。

また、相続人の一部が故人のキャッシュカードを使って無断で預金を引き出したとなれば使い込みなどを疑われ、ほかの相続人とのあいだで大きなトラブルに発展するおそれがあります。

そのため、たとえ暗証番号を知っていたとしても、故人のキャッシュカードを使った預金の引き出しは避けたほうがよいでしょう。

親のお金で生活をしていたのに、親が亡くなってしまったら…

相続が発生してから遺産分割協議が成立するまでのあいだ、被相続人の預貯金を一切引き出すことができないとなると、被相続人の収入で生活をしていた家族が困ってしまったり、葬儀代の支払いに苦慮してしまったりする事態となりかねません。

そこで、遺産分割協議が成立する前であっても金融機関で所定の手続きをとることで、次のいずれか低い金額までであれば、各相続人がほかの相続人の同意を得ることなく預金の仮払いを受けることが可能とされています。

1.相続開始時点におけるその金融機関の預貯金残高×その相続人の法定相続分×3分の1 2.150万円

遺産分割協議の成立前に被相続人の預貯金を引き出す必要がある場合は、キャッシュカードを不正に使用して引き出すのではなく、預貯金の仮払い制度を使った正式な方法で引き出すようにしましょう。

相続開始から遺産である預貯金を引き出すまでの基本的な流れ

被相続人が亡くなってから遺産である預貯金を引き出すまでは、どのような流れとなるのでしょうか? ここでは、一般的な流れを解説します。

金融機関に死亡の連絡を入れる

被相続人が亡くなったら、できるだけ早期に金融機関に死亡の連絡をしてください。預金が凍結しないあいだは、ほかの相続人が被相続人のキャッシュカードを使って預金を引き出してしまう可能性があるためです。

そのようなトラブルを避けるため、被相続人の口座は早期に凍結してもらうことをおすすめします。

必要に応じて残高証明書を取得する

次に、必要に応じて金融機関から残高証明を取り寄せます。通帳を紛失している場合は残高がわからないため、残高証明の取得が必要です。

また、定期預金がある場合においては通帳や証書を見ただけでは解約によって受け取れる金額がわからないことが多いため、残高証明を取得することが多いでしょう。残高証明書は、相続人の一部のみから請求することが可能です。

相続人を確定する

残高証明書の取り寄せと並行して、相続人の確定を進めます。遺産分割協議は相続人全員で行う必要があり、相続人が1人でも漏れた遺産分割協議は無効となってしまうためです。

相続人の確定は、戸籍謄本や除籍謄本などを取り寄せることによって行います。たとえば、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本や除籍謄本、原戸籍謄本を確認することで、死亡時点での配偶者の有無のみならず、被相続人に子どもがいたかどうかや、子どもが何人いたかなどがわかります。

自分で相続人の確定をするのが難しい場合は、弁護士などの専門家へご相談ください。

遺産を洗い出す

相続人の確定と並行して、遺産の洗い出しを行います。遺産にどのようなものがあったのかがわからなければ、遺産分割協議を行うことが難しいためです。遺産を洗い出したら、一覧表にまとめておくと遺産分割協議の参考としやすいでしょう。

被相続人が一人暮らしであった場合や、被相続人と同居していた者の協力が得られない場合など、遺産の洗い出しが難しい場合は弁護士などの専門家へご相談ください。

遺産分割協議をする

相続人と遺産の確定ができたら、遺産分割協議を行います。遺産分割協議は相続人全員が一堂に会して行っても構いませんし、電話などで1人ひとりから同意を取り付ける形で行っても構いません。

遺産分割協議では、どの遺産を誰が相続するのかなどについて、明確に取り決めを行います。遺産分割は「配偶者が2分の1、長男4分の1、二男4分の1」などの法定相続分で行うほかにも、相続人全員が合意できるのであれば、たとえば「配偶者が全財産を相続する」など偏った内容で分割することも可能です。

ただし、遺産分割協議を成立させるには、相続人全員による合意が必要です。協議内容に合意しない相続人が1人でもいる場合は、協議を成立させることができません。

そこで、遺産分割調停を申し立てるなどして解決を図ることとなります。遺産分割調停とは、家庭裁判所の調停委員が意見を調整する形で進行する話し合いです。当事者間で遺産分割協議がまとまらない場合は、弁護士へご相談ください。

遺産分割協議書を作成する

遺産分割協議がまとまったら、合意した内容を記載した遺産分割協議書を作成します。遺産分割協議書には、各遺産を誰が相続することになったのかが明確にわかるように記載してください。

自分で作成することが難しい場合は、弁護士などの専門家に作成してもらうことも可能です。作成した遺産分割協議書には、相続人全員が署名と実印での押印を行います。

金融機関から手続書類を入手する

被相続人の預貯金を解約するには、遺産分割協議書のほか、その金融機関独自の書類が必要となることが一般的です。そのため、遺産分割協議書の作成と同時進行で、手続き先の金融機関から手続き書類を入手しておきましょう。

払い戻しの手続きをする

遺産分割協議書など必要書類がそろったら、金融機関で払い戻しや解約の手続きを行います。

解約の手続きは金融機関の窓口に出向いて行うことが多いものの、郵送で手続きができる金融機関も近年増えています。具体的な手続き方法は金融機関によって異なるため、あらかじめ手続き先の金融機関に確認しておくとよいでしょう。

遺産分割協議後に預貯金を払い戻す際に必要となる主な書類

遺産分割協議の成立後、被相続人の預貯金を解約し払い戻しを受けるには、さまざまな書類が必要となります。最後に、被相続人の預貯金解約で必要となることが多い書類を紹介します。

金融機関によってはこれら以外の書類が必要となることもあるため、実際に手続きをする際はあらかじめ手続き先の金融機関に確認してください。

書類はいったん原本を提出する必要があるものの、金融機関独自の手続き書類やキャッシュカード以外は、コピーを取ったうえで原本を返してもらえることが一般的です。

遺産分割協議書

1つ目は、遺産分割協議書です。遺産分割協議書には、誰がその金融機関の預貯金を相続するのかがわかるよう、明確に記載してください。

相続人全員の印鑑証明書

2つ目は、相続人全員の印鑑証明書です。遺産分割協議書には相続人全員が実印を押す必要があり、これが実印であることを確認するために印鑑証明書が必要となります。

被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本等

3つ目は、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本、除籍謄本、原戸籍謄本です。これらは、被相続人の相続人を確定するために必要となります。

また、相続人が被相続人の兄弟姉妹や甥姪である場合はこれらに加え、被相続人の両親それぞれの出生から死亡までの連続した戸籍謄本、除籍謄本、原戸籍謄本も必要です。

相続人全員の戸籍謄本

4つ目は、相続人全員の戸籍謄本です。

たとえば、被相続人の子どもは原則として相続人であるものの、子どもが被相続人より先に亡くなっている場合はその亡くなった子どもの子ども(被相続人の孫)が代襲して相続人となります。そのため、相続人が存命であるかどうか、戸籍謄本によって確認します。

金融機関独自の手続き書類

5つ目は、金融機関独自の手続き書類です。様式は金融機関によって異なるため、手続先の金融機関から入手しましょう。手続き書類では、相続人全員の署名・押印が必要な場合もあるため、あらかじめ金融機関に確認しておくとよいでしょう。

通帳・キャッシュカード

6つ目は、被相続人の通帳とキャッシュカードです。原則として、通帳は手続き後に返却され、キャッシュカードは回収されます。

なお、被相続人の通帳やキャッシュカードを紛失しているからといって解約などの手続きができないわけではなく、「紛失届」など金融機関所定の書類を追加で記載することなどで手続きができることが一般的です。

トラブルの原因となりやすい被相続人の預貯金

被相続人の預貯金は遺産分割の対象となり、相続発生後に被相続人の預貯金を解約するには、遺産分割協議をまとめなければなりません。

相続発生後に被相続人のキャッシュカードを使って預貯金を引き出すことはトラブルの原因となり得るため、避けたほうがよいでしょう。葬儀費用や当面の生活費などで預金を引き出す必要がある場合は、仮払い制度の活用をご検討ください。しかし、仮払い制度で引き出すことができるのは預貯金の一部のみであり、所定の額を超えた預金を引き出すことはできません。

そのため、特に被相続人の資産や収入をもとに生活していた相続人にとっては、遺産分割協議が長期化して預金が引き出せない期間が続くことは死活問題ともなりかねないでしょう。相続人間での遺産分割協議がまとまらずお困りの際は、早期に弁護士へご相談ください。

堅田 勇気

Authense法律事務所

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