年金の繰下げ中に「68歳・喫茶店経営の夫」が逝去、67歳妻が店を継ぐも上手くいかず閉店…絶望しかない遺族年金額に「どう、生きていけばいいのか」
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年8月22日 10時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
長年連れ添ったパートナーを亡くした時、残された家族が生活に困らないようにと支給される遺族年金。それだけで生活ができるほどの金額ではないものの、あれば嬉しいサポートです。ただし自営業の人が亡くなった場合は、「えっ、たったそれだけ……」という金額の場合もあるようです。
街の中心商店街で喫茶店を40年…経営が厳しく
全国商工会連合会が行っている『小規模企業景気動向調査』の最新調査によると、2024年6月期景況は、売上額・業況・採算・資金繰りのDIはいずれも低下。特に売上額DIは、プラス値を維持しつつも、直近1年間で最も低いDIを記録しています。多くの業種でコロナ禍からの回復の効果を享受しつつも、それ以上に、コスト高や消費者の節約志向の影響が小規模企業経営を苦しめているといいます。
*DiffusionIndex(ディフュージョン・インデックス)の略で、企業の業況感や設備、雇用人員の過不足などの各種判断を指数化したもの
ちょうど1年前の調査結果を振り返ると、コロナ禍からの経済の正常化に伴う効果で、5期連続で売り上げDIがプラスで推移しつつも、コロナ融資の返済開始が資金繰りの悪化を招き、厳しい状況にあるとしています。いずれにしても、多くの小企業、個人企業は、厳しい経営環境にさらされているといえるでしょう。
開業40年を超える喫茶店をひっそりと閉店した内藤裕子さん(仮名・67歳)。ここ10年くらいはずっと経営が厳しかったといいます。
――夫も亡くなって……なんとか、お店を続けたかったのですが、経営が厳しくて
20代の頃、夫、隆さん(仮名)は脱サラし、街の中心商店街に喫茶店をオープン。子育ても忙しかった裕子さんは、たまにお店にたって手伝っていたといいます。「当時は肩が触れるほどの人でにぎわった商店街だった」と振り返るとおり、お店は繁盛したといいます。しかし、今や商店街全体が閑古鳥。
中小企業庁が行った『令和3年度商店街実態調査』によると、商店街の最近の景況「繁栄している(繁栄の兆しがある含む)」はわずか4.3%、 「衰退している(衰退の恐れがある含む)」は67.2%。また商店街への来街者数は、3年前と比較して「減った」と回答した商店街が68.8%に及んでいます。
商店街の衰退とともに経営が厳しくなっていった内藤さんの喫茶店。それでも常連さんの応援もあり、頑張ってきたといいます。
喫茶店経営40年、会社員時代のわずかな夫が死去…遺族が受け取れる遺族年金額は?
子育てがひと段落してからは、裕子さんも毎日お店にたち、二人三脚で頑張ってきた喫茶店経営ですが、1年前に隆さんが亡くなります。68歳でした。
喫茶店は1ヵ月ほどで営業を再開。隆さんの思いをつないでいくつもりでしたが、1年ほどで断念。やはり経営は厳しく、苦汁の決断だったといいます。ここから裕子さんのセカンドライフがスタートします。
老後の生活のベースになるのは公的年金ですが、内藤さん夫婦は66~75歳で受給開始時期を決められる「繰下げ受給」を選択していました。65歳で受け取り開始をしていたら、隆さん、厚生年金が月1.8万円、併給の国民年金と合わせても月8万円程度。裕子さんは国民年金だけで月6万円程度。少しでも月々にもらえる年金額が増えればと、受給開始のタイミングを遅らせていたのです。年金の繰下げ受給では、受取り開始を1ヵ月遅らせるごとに0.7%増額。最高84%増額となります。ただし、遺族年金の受給権が発生した時点で増額はストップします。つまり、隆さんが亡くなった時点で裕子さんの年金の増額は停止したことになります。
喫茶店を閉めて落ち着いたところで、年金の申請のために年金事務所にやってきたという裕子さん。そこで、ある程度予想はしていましたが、少ない年金額に思わず声をなくしてしまったといいます。
そもそも隆さんは繰下げ受給中に亡くなったので、「未支給年金」分が遺族に支給されます。また裕子さんの年金は、繰下げ受給の増額が66歳8ヵ月の時点で停止。増額率は14.0%で、月7.7万円ほどになるとか。さらに隆さんは老齢厚生年金の受給権者だったため、裕子さんは遺族厚生年金を受け取ることもできますが、遺族年金は増額される前の金額を基準として計算。老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3の額となり、裕子さんの場合は月1.3万円ほど。自営業の人が亡くなった場合、遺族年金はゼロということも珍しくありません。裕子さんのように、亡くなった人に会社員時代があってもその期間が短いと、遺族厚生年金は「たったこれだけ……」と肩を落とすような額にしかならないことも。
遺族年金と、わずかに増額された自身の老齢年金、あわせて月9万円。貯蓄はほとんど残っておらず、「どう生きていけばいいのか……」と、思わず絶望してしまう金額です。幸い、閉店した喫茶店は自宅の1階。「ここを売れば、少しは安心かな」と裕子さん。ただ「こんな寂れた商店街の店(家)、売れるかね……」とポツリ。裕子さんの老後、まだまだ不透明な状況です。
[参照]
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