1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

プライベートな空間ですよ!…顧問税理士の制止も聞かず、税務調査官が「寝室」に臨場。露わとなった「夫亡き50代主婦の秘密」【税理士が解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年9月3日 10時45分

プライベートな空間ですよ!…顧問税理士の制止も聞かず、税務調査官が「寝室」に臨場。露わとなった「夫亡き50代主婦の秘密」【税理士が解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

相続税の税務調査が行われた場合、9割近い確率で追徴課税が発生するといわれています。実際の税務調査では、どのようなことを尋ねられ、どのようなことを調べられることで、申告漏れや過少申告などが発覚しているのでしょうか? Aさんのもとへやってきた税務調査の事例をもとに、税理士法人OGUの小串嘉次信税理士が解説します。

夫を亡くし、相続税を申告した専業主婦

50代のAさんは関東在住の主婦で、近郊の屋敷で一人暮らしをしている。子どもは2人いるが、いまはそれぞれ独立して生活をしている。

一昨年はじめのことであったが、ご主人を癌で亡くしてしまった。相続税の申告はB税理士に依頼して一昨年10月にすでに完了させている。申告した財産は、自宅宅地が路線価価額で5,000万円、自宅建物が2,000万円、それに金融資産が8,000万円で財産合計は1億5,000万円が総額となった。

これら財産はすべてAさんが取得して分割した。自宅宅地は小規模宅地特例を適用し、8割の4,000万円の減額が可能となった。その結果、1億1,000万円が総財産として課税価格となり、配偶者税額軽減の適用により相続税額0円となる申告を行ったのである。

申告が完了して一年。AさんのもとにB税理士から連絡があり、C税務署の税務調査が実施されるという。C税務署の資産税上席から相続税の実地による税務調査の事前通知を受けたというのである。  

税務署の税務調査実施の判断

いまを先立つ2ヵ月程前、Aさんから提出された相続税申告書の確認作業を担当していた上席調査官は亡くなったご主人の過去の確定申告状況をチェックしていた。そうすると、亡くなる5年前にご主人が所有していた無担保の収益物件の不動産を3億円で売却していたことが判明した。

3億円で売却して税金や売却時の諸経費を差し引いても2億円以上は現金が残ったはずである。それにも関わらず相続税申告上の金融資産が8,000万円で評価されている。5年前の不動産売却とはいえ、金融資産の目減りが顕著すぎると検討した結果、税務調査の実施を判断したのである。  

税務調査の現場

税務調査当日。午前10時にAさんの屋敷にC税務署の上席調査官を始め3名が来訪した。B税理士も立ち会ってくれている。

上席調査官はAさんに、ご主人が癌で亡くなったときの状況や取引を行っていた金融機関などの質問を行い、Aさんはそれに対して適切に回答した。

そのうえで上席調査官ら3人は現状確認を行うためにAさんに了解を得て、リビングの引き出しや仏壇周り等を入念に現況調査した。しかし、特に不審な点はなかった。

上席調査官は言った「奥さん、2階も確認させていただいてよろしいでしょうか」。

Aさんは「2階は私の寝室です。そんなところまで上がられるのですか?」と戸惑いを隠せない。

すかさずB税理士も調査官を遮る「寝室はプライベート空間ですよ! そこへの立ち入りは、調査とはいえやり過ぎだと思います」。

しかし、上席調査官は「いえ、プライベート空間であっても確認させてください。相続税の調査なのですから。ご協力をお願いします」と押し切った。

上席調査官ら3人は、2階のAさんの寝室に臨場した。ひととおり現況を確認して最後に「ベッドの下も確認させてください」と言う。覗き込んだ。そしてそこに大きな紙袋があることを発見した。

「奥さん、この紙袋開けてもらっていいですか」上席調査官が言った。

Aさんはしばらくの沈黙のあと、しぶしぶと口を開く「……これは、主人が私のために置いていってくれたものです……」。

上席調査官は「なにを残してくれたんですか。僕らが開けるわけにはいかないですから、奥さんが開けてくれないと終わりませんよ」と言った。

Aさんが観念したように、ゆっくりと紙袋を開けると、その中には、帯封に包まれた現金5,000万円が入っていた。

税務調査の結果

Aさんの説明によると、ご主人は癌の宣告を5年前に受けた後自分の通帳からわけて出金を繰り返して現金をベッドの下に保管するようになったとのことであった。その結果、5,000万円もの大金になったのである。

上席調査官は静かに尋ねた「この現金は相続税の申告書に上げてもらわないといけません。この5,000万円は奥さんの取得ということで間違いはないですね?」

ボソボソと答えるAさん「ええ、これは主人が私に残してくれたものだから私が取得したということになります。でも相続税は配偶者である私にはかからないのじゃないかしら」。

小さな抵抗も虚しく、上席調査官の返答によりAさんは諦めることに。

「配偶者の税額軽減は、通常の相続の場合に適用があります。ですが、今回のように財産の隠蔽があった場合には適用されません。我々は奥さんがこの現金の存在を認識しながらも相続税申告をしなかったものと考えています。つまり、相続税の実地調査によって申告上の仮装隠蔽の事実が発覚したことになりますので、その発覚した現金は配偶者の税額軽減の適用は受けられません。少なからず奥さんに相続税が発生します。詳しくはB税理士さんに聞いてみてください」。

もし最初から正しく申告していたら

後日、B税理士が今回の税務調査の修正申告書を作成しAさんに説明を行った。申告漏れとなった現金5,000万円は配偶者軽減の対象から外れ、結果、相続税が900万円以上発生することになった。

これに加えて後日、この相続税に対して重加算税35%並びに延滞税の通知書がC税務署から送られてくることになる。

思えば当初申告の総財産は1億1,000万円だったので、現金5,000万円を申告時に財産計上していても総額1億6,000万円。つまり最初からすべて申告していたら全額が配偶者の税額軽減の対象になるはずであり、相続税額は0円で済んだのだ。

Aさんは修正申告を行うことでスッキリした気持ちになったものの、悔しい追徴税額を支払うことになったのである。  

小串 嘉次信

税理士法人OGU

税理士

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください