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「後生だから…」結婚前の将来の義母がわざわざ家までやってきて…会社員男性へ涙ながらに訴えた“驚愕のお願いごと”に「とても逆らえない」【中央大学教授が解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年9月1日 9時15分

「後生だから…」結婚前の将来の義母がわざわざ家までやってきて…会社員男性へ涙ながらに訴えた“驚愕のお願いごと”に「とても逆らえない」【中央大学教授が解説】

成人後も親が子へ過干渉になる・子が親へ依存してしまうなどの「いびつな親子関係」が、近年の結婚観にも影響を与えているようです。本記事では、社会学者で中央大学文学部教授の山田昌弘氏の著書『パラサイト難婚社会』(朝日新聞出版)から、現代日本の親子関係と、結婚を巡る問題点について解説します。

「個人化」で錯綜する家族のカタチ

「愛情の分散」は、選択肢が増えた現代だからこそ可能です。「個人化の時代」では、個々人が多様な選択肢を持つことで自由を手に入れた反面、悩みやリスクもあらゆる局面で遭遇するようになりました。

「結婚」や「離婚」の主役は、夫婦二人の当事者ばかりではありません。それぞれの両親も、それぞれの価値観に応じた「選択肢」を提示し始めています。

晩婚化が進んだ現代、パラサイト・シングルとして実家に長く住む若者も増えました。

いざ結婚して別世帯を持ったとしても、それまで子の生活に密接に関与してきた親が一気に口を出さなくなるとは考えにくく、かつ子の方でも親に依存度を高めた結果、結婚後も親の意見を真っ先に聞くような人が増えています。

核家族化、共働き世帯や高齢出産の増加で、子育てや教育の手間暇の負担も、夫婦に重くのしかかっています。

長時間労働の夫は頼りにならず、祖父母に助けを請わないと日常がままならない実情もあります。多くの家庭で三世代同居が解消された結果、祖父母が子の家庭に呼び出され、子守や習い事の送迎に駆り出されている光景も見られます。

自分の母親の近くに住みたがる妻

その結果、近年増えているのが、「妻が自分の母親の近くに住みたがる」現象です。

かつてのイエ制度が根強かった昭和時代までは、「両親と同居」と言えば、それは「夫の両親との同居」を意味しました。

結婚して夫の名字になった以上は、妻は「嫁」という立場で夫の両親のイエに入り、自らの子育てに義理の両親が協力してくれる代わりに、日々の家事や老後の介護は嫁が担うという暗黙の了解があったのです。

ところが「自由」の意識が育まれた平成・令和の若者は、夫の両親との同居を望まない代わりに、気心の知れた妻の実母との同居ないし手助けを求めるケースが増えました。

離婚した女性のおよそ半数は、実家に戻ることも調査で明らかになっています。精神的に頼りにならない(会話ができない)夫よりも、長年一緒にいた母親の方が頼みになるということです。

そうなると、どのような変化が生じるか。別世帯となったはずの夫婦もしくは家族の在り方に、妻の親の欲望ないし意思が影響を及ぼすようになります。つまり、娘の家庭の在り方に親の価値観や意見が反映されるようになり、それがさらに夫との諍いにつながるケースも。

あるいはこんな声も堂々と聞かれるようになりました。「私(親)の面倒は、実の娘に見てほしい」「私(子)の面倒は、実の母に見てほしい」

こうした意見が新聞の相談欄に寄せられるのを見るにつけ、まさしく「個人化の時代」を実感します。同時にこれは、「パラサイト・シングル」時代の当然の帰結でもある、と。

パラサイト社会の同根問題

こんな話も聞きました。

ある女性の結婚が決まり、結婚後の家計費のルールを二人で話し合った際、男性が「給与は自分が管理し、必要な家計費を手渡す」と告げたところ、女性の母が後日自宅に現れ、涙ながらに「後生だから給与は全て娘に手渡し、小遣い制にしてほしい」と男性に訴えたといいます。

彼は、将来の義理の母親に逆らえず、小遣い生活になったと嘆いていました。

彼女の母親世代にとってはそれが結婚のカタチであり、「男女分業型結婚としての愛情表現」そのものだったからです。

給与をすべて妻に手渡さないのは愛情がない証拠、要するに妻としての立つ瀬がない、世間体において「娘が可哀想」という考え方のようです。

「妻が家計を管理する」という日本ならではの慣習

ちなみに「夫の給与をすべて妻が管理し、そこから夫に小遣いを渡す」方式も、欧米の人からは驚愕される仕組みです。これも、「パラサイト」意識の強い日本人ならではの慣習だと私は思っています。

未婚で実家にいる間は親が自分の面倒を見るのが当然で、結婚したら夫が同じことを行うのが当然、しかし結婚したからにはその采配は一家の主婦が行うもの。

それが伝統的日本の家政の在り方で、夫婦それぞれの「個人」が独立して存在するのではなく、「世帯」単位で物事を測る日本ではおなじみの発想法です。

先に示したように、実際に私が行ったアンケートでも、この方式(「妻が家計を管理して夫に小遣いを渡す」)を実践している夫婦は45%にも上りました。反対に「夫が妻に生活費を渡す」タイプは25%であり、「共通の財布で管理する」は10%と少数派でした。

ただ、15年前に行ったアンケートでは、妻が管理している夫婦の割合は約60%でしたので、共働き世帯が増えるに従い、次第に減ってきています。

親子が「パラサイト(依存)」してしまう現代日本

この話を聞いてまず思うのは、「世間体(正解)に捉われる日本人」の姿、そして何歳になっても「子のため」「子への愛情」を優先し、子(とその配偶者)の人生に介入してくる「母親の愛情」についてです。

常識で考えれば、還暦に近づく親が子の家庭の家計管理にまで口を出してくるというのはかなり異様な光景なのですが、「世間体」「娘が可哀想」と言われると、多くの人は反対できなくなってしまいます。

「母子同居」の概念は、日本的な「性別役割分業型家族の愛情観」と「パラサイト・シングル社会」が行き着いた先の変型バージョンです。自身の結婚生活を通じて夫婦での愛情・対話を重ねてこなかった夫婦は、定年退職後も改めて夫婦の時間を持つより、子への干渉を維持しようとします。

一方で、幼少期から大学卒業後まで一貫して過大な投資と関心を得てきた子の世代も、結婚後、本来なら「個人」として自立すべき時期に至っても、精神的に親に寄生(パラサイト)し続ける。

互いの人生に必要以上に深入りする親子愛は、結局「未婚」も「離婚」も根本は同じ問題を抱え、「自立しない個人」「依存し続ける親子」という構図を生み出しています。

ここでは「母と娘」を例に挙げましたが、夫すなわち男性側も同様です。要するに「個人化の時代」とは、当事者夫婦以外にも、「親の選択」が新世帯に大きな影響を与え続けるということです。

夫婦の意思決定に、妻・夫・それぞれの両親という複数人の意思と選択肢が錯綜し、「正解」を悩み続けるのが「個人化の時代」の特徴なのです。

日本全体で「結婚」の正解とロールモデルが消滅した結果、求めるべきは新しい結婚のカタチ、すなわち社会に根差した家族の在り方です。

それにもかかわらず、旧世代の価値観が子に影響を及ぼし続けてきたこと、個人の自立や子育ての労力(経済的負担)の多くを「社会」ではなく、それぞれの「家族」に負わせてきたことの弊害が、「離婚」数の増加、「家庭内離婚」「家庭内別居」の増加につながっているという側面は、決して無視できないと思っています。

山田 昌弘

中央大学文学部教授

社会学者

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