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税務調査官「それ、贈与じゃないですね」で多額の追徴課税…否認されないための5つのポイント【税理士が解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年9月8日 11時15分

税務調査官「それ、贈与じゃないですね」で多額の追徴課税…否認されないための5つのポイント【税理士が解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

財産を受け取ったときにかかる贈与税は、年間110万円までが基本控除で非課税になるため、相続税対策として生前贈与を検討する人も少なくありません。しかし、なかには贈与として認められず、多額の追徴税を課されてしまうケースがあるといいます。そこで今回、生前贈与の注意点と否認されないためのポイントについて、事例を交えてみていきましょう。多賀谷会計事務所の宮路幸人税理士がくわしく解説します。

「贈与税」と「相続税」の違いとは?

まず、「贈与税」は財産の贈与を受けたときに、「相続税」は遺産相続が発生したときにかかります。どちらも、所有している財産を渡す側ではなく受け取る側に課税されることが共通点です。

贈与税と相続税はどちらも、財産が多くなるほど税率が上がる累進課税税率となっており、いずれの税金にも各種控除や非課税制度などがあります。贈与税は年間110万円まで、相続税は相続人が1人の場合、3,000万円+600万円×1人=3,600万円までであれば非課税です。

また、同じ金額の財産を受けた場合、相続税よりも贈与税のほうが税金は高くなります。

1億円の財産を①相続で受け取った時と②贈与で受け取った時、それぞれの税額を比較してみましょう。

①相続税(法定相続人が子1人の場合)

(1億円-基礎控除3,600万円)×30%-700万円=1,220万円

②贈与税

(1億円-基礎控除110万円)×55%-640万円=4,799万5,000円

このように、同じ金額でも贈与税のほうがはるかに高くなることがわかると思います。また、相続税は相続人が多かった場合などはさらに減るため、贈与税との差がより大きくなります。

「年110万円の非課税枠」を活用した税金対策

“年間110万円までは贈与税が非課税”だということを聞いたことある人は多いでしょう。

この「年間110万円の非課税枠」をうまく活用し、子供や孫などに財産を与えておくことで、将来相続が起こったときにかかる税金を減額できます。また、申告等も不要なことから、簡単にできる相続税対策として広く知られているのです。

しかし、なかには「年110万円以内」であっても課税対象となるケースがあります。

「年110万円以内」の贈与でも課税されるケ-ス

まず勘違いされやすいのが、非課税の110万円というのは贈与“する側”ではなく、“される側”の金額です。たとえば、子どもが1年以内に父親と母親からそれぞれ110万円ずつ贈与を受けた場合、合計220万円となり、子どもは申告が必要となります。

また、毎年110万円以内の贈与であればすべて必ず認められる、というわけではありません。相続税の税務調査などがあった場合、生前贈与について事細かに調べられた結果、贈与と認められずに課税されることも少なくないのです。

そもそも「贈与」と認められないケース

代表的な例としては、たとえば「祖父母が孫の名義で預金口座を開設し、毎年110万円ずつ入金していた。加えて、通帳も印鑑も祖父母が管理しており、孫は贈与を受けている認識すらない。その結果、祖父母の相続時に発覚……」といったケースが実務上よくあります。

贈与とは「当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾することによって、その効力を生ずる」(民法549条)と定義されています。

しかしこの場合、孫(=贈与を受けている側)はその事実を知りません。こうなると、贈与契約は成立していないとみなされ、税務調査官の「これ、贈与じゃないですね」という言葉とともに、多額の追徴税を課されてしまうかもしれないのです。

税務署が「課税する贈与」と「見逃す贈与」の差

ではどのように贈与すれば税務署から否認されずに済むのでしょうか? 生前贈与をおこなう場合は、次の点に注意してください。

1.贈与契約書を作成すること

幼い孫が受贈者となる場合、受贈の意思の判断が困難です。そのため、親権者である親との連名で契約書を作成するとよいでしょう。

2.贈与者に贈与の意思表示があり、受贈者も贈与を受けた認識があること

前述のケ-スのように、孫に贈与を受けているという認識がない場合、贈与として認められません。

3.通帳・印鑑の保有管理を受贈者がおこなうこと

贈与者が通帳・印鑑の管理をおこなっている場合、受贈者はそのお金を自由に動かすことができないため、贈与として認められないこととなります。

4.預金振込でおこなうこと

現金を手渡しするなどして贈与すると証拠が残らないため、あとで追及された場合不利になります。よって、お金の流れがひと目で分かるよう、銀行振り込みとするのがよいでしょう。

5.「定期贈与契約」と間違われないこと

たとえば、親と子のあいだで“1,000万円を年間100万円ずつ、10年に分けて贈与する”という約束をした場合、定期贈与として1,000万円に対して贈与税が課されることとなります。

※定期贈与:毎年一定の金額を贈与することが決まっている贈与

定期贈与と判断されないためにも、毎年同じ日に贈与するのではなく、少し変えてみるのがよいでしょう。

相続税対策としての贈与

いかがだったでしょうか? 相続税対策として生前贈与が有効とはよく聞くところではありますが、普及したからこそ“誤った認識”で贈与をおこなってしまった結果、税務調査で否認されてしまうケースが後を絶ちません。

相続税の調査がおこなわれた場合、生前贈与や名義預金は重点調査項目です。子のため、孫のためを思っておこなった贈与であっても、実態として贈与ではない場合は認められません。贈与をする際はあとで否認されないよう、客観的に贈与として認められるための証拠を残しておきましょう。  

宮路 幸人

多賀谷会計事務所

税理士/CFP

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