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触れるものすべてがゴミクズに…60日足らずで「10万ドル」溶かした、我が愚かな義弟。投資初心者の失敗原因【ウォール街・伝説のブローカーの助言】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年10月10日 9時15分

触れるものすべてがゴミクズに…60日足らずで「10万ドル」溶かした、我が愚かな義弟。投資初心者の失敗原因【ウォール街・伝説のブローカーの助言】

(※写真はイメージです/PIXTA)

映画『ウルフ・オブ・ウォールストリート』でレオナルド・ディカプリオ演じる主人公のモデルとなったジョーダン・ベルフォート氏が語る投資術。ある日、義弟のフェルナンドから「相談に乗ってほしい」と言われたベルフォート氏。なんとフェルナンドは、60日足らずで10万ドル近い投資額を失ってしまったのだ。60日のあいだに一体なにが起こったのか? 本記事は、ベルフォート氏の著書『ウォールストリート伝説のブローカーが弟に教えた 負けない投資術』(久保田敦子訳・KADOKAWA)より一部を抜粋・再編集したものです。

市場が比較的穏やかで安定していた時期に大損した義弟

噓だろ!と私は思った。私の妻の妹の夫フェルナンドが、魔法の手を持っていたとは。それも、触れるものすべてを黄金ではなくゴミクズに変えてしまう魔法の手を。株もオプションも暗号資産もNFTも何もかも、彼が触った途端に腐臭を放つ。

午後九時過ぎ、私はブエノスアイレスにあるフェルナンドの洒落たマンションの居間で、義弟の投資報告書をパラパラとめくり、悲しい現実が次々と迫ってくるのを感じていた。

端的に言って、義弟のポートフォリオは最悪だった。愚かな取引やタイミングのずれまくった投資を繰り返した結果、フェルナンドは過去2ヵ月間で、投資額の97パーセントを失い、残高はたったの3000ドル。その他の9万7000ドル余りはまるで屁のように風に乗って消えてしまった。

さらに悪いことに、これらの損失は、義弟が主に投資をしていた株式や暗号資産の市場が比較的穏やかで安定していた時期に生じていた。つまり、義弟は誰のことも責められない、ということだ。もしフェルナンドが投資した市場が大暴落したとか、そこまでいかなくとも投資した直後に大幅に値下がりしたなら話は別だ。それなら、義弟が被った損失の少なくとも一部は理解できる。

実際、まさにそのような状況についてウォール街でよく聞く格言がある。「上げ潮はすべての船を持ち上げる」つまり、株式市場が上昇しているなら、その市場にあるすべての株の価格は市場とともに上昇する傾向にあり、株式市場が下落しているなら、その市場にあるすべての株の価格は市場とともに下落する傾向にある。もちろん、債券やコモディティ、暗号資産、不動産、美術品、保険など、あらゆる市場で言えることだ。

結局、その市場が非常に好調ならば、当てずっぽうで投資しても儲かるとほぼ期待できる。天賦の才や、ひらめき、特殊な訓練などはいらない。市場があなたに代わって99パーセントの仕事をしてくれる。とてもシンプルだろう?

ツイッター民「ひたすら難平買いを続け、上げ潮で救済されるのを待つしかない」

ただひとつの問題は、普段ならシンプル極まりないこの原則が、長期にわたる好景気の最中には、なんとも複雑になってしまうことだ。過度な好景気のとき――市場が沸き、チャットルームやツイッター[訳注:現X]などのアカウントや評論家たちが、この上り調子に終わりは見えないと異口同音にはしゃいでいるとき――。

人間というのは、それが永遠に続くと思ってしまう。突如、株式市場と野菜市場の区別もつかない素人投資家が自分を専門家だと思い込み、猛烈な速度で売買を繰り返し始める。投資の世界で初めて手にした儲けを自身の天賦の才のおかげだと固く信じ、その信念に勇気づけられ、彼らの自信は日を追うごとに強固なものになる。

このような素人投資家の投資戦略は必ずと言っていいほど短期に限られる。賭けが当たれば、すぐに利益を確定して脳内をドーパミンで満たして気持ち良くなる(株価がその後も上がり続けたとしても、気にしない。「利益は利益じゃないか。利益を得ている限り、破産することはあり得ない」と言って)。

そして賭けが外れれば、ひたすら難平買い[ナンピンがい。高い価格で買って保有している株をさらに買い増すことで、平均購入単価を下げ、株価が再び上がったときの利益を増大させようとすること。「押し目買い」とも言う]を続け、上げ潮ですべてが救済されるのを待つ。

彼らにはそれしか道がない。だって、ツイッター界ではみんなそうするよう勧めるから。それに、今までずっとそれでうまくいってきたし。市場ってものは必ず戻ってくるって言うじゃないか。

いやいやいや、必ずしもそうとは限らない。実際、市場は上がったり下がったりを繰り返す。そして市場が下がるとき、つまり、1999年のドットコム・バブル崩壊や2008年の住宅バブル崩壊みたいに本当に暴落するときは、上がるときとは比べ物にならないくらい急激に、そして大幅に下落する。幾年かの経験を有するプロの投資家は誰でも、これに同意するはずだ。

このことはひとまず置いておいて、フェルナンドの話に戻ろう。義弟の無惨なポートフォリオは市場のせいじゃない。少なくとも表面上は。細かく見ていこう。

義弟の投資失敗原因を分析…たった60日間でなにが起きたのか?

損失が発生した60日間、つまり2022年2月8日から2022年4月8日までのあいだ、義弟が投資していた2つの市場はほぼ平坦で、大きな動きはなかった。

具体的には、米国の株式市場の指標であるS&P500は、2022年2月8日時点で4521.54、2022年4月8日時点で4488.28と、たった0.7パーセントの緩やかな下落であり、暗号資産市場の指標であるビットコインの価格は、2022年2月8日時点で4万4340ドル、2022年4月8日時点で4万2715ドルと、たった3.7パーセントのこれもまた小幅な下落であった。義弟の97パーセントの損失と比較すると、ほんのわずかである。

ただ、義弟の名誉のために言うと、単に投資初日と60日目だけを比較するのは誤解を招く。義弟が、一旦買ったものを保持する長期投資戦略をとり、すべての投資を少なくとも60日目まで売らずに保持していたならば、投資初日と60日目の数字には大きな意味がある。

しかし、義弟のケースは明らかにそうではない。長期保有戦略をとるならば、ある程度の期間持ち続け、厳選した投資の潜在成長能力を活かそうとする。しかし、ざっと目を通しただけでも、義弟の取引明細書は何十もの売り注文で埋め尽くされていた。

実際のところ事態をもっと詳しく知るには、投資初日と60日目に注目するだけではなく、その間に何が起こっていたのかにも目を向けなければならない。

米国株式市場も、特に先行きの見えないときやブラックスワン的な事象[株式市場や経済に壊滅的な衝撃を与える、予測不能な非常に稀な出来事]に直面したときなど、それなりに大きな動きを見せることはあるが、暗号資産市場は米国株式市場よりもずっと変動が大きい。義弟の投資行動がどれほどアグレッシブだったかによっては、彼の損失は、日々の激しい変動とタイミングの悪さの合わせワザによるものだった可能性がある。

つまり、「安いときに買い、高いときに売る」という昔ながらの投資の鉄則に従うかわりに我が愚かな義弟は、高いときに買い、安いときに売るのを、有り金をほとんど失うまで、何度も何度も繰り返したということだ。

これらのことを心に留め、ここで先ほどの2つの指標を、日々の変動を考慮してもう一度見てみよう。おそらく今度は、先ほどは安定しているように見えた期間に生じた義弟の巨額の損失の理由がわかるだろう。

次の図表は、2022年2月8日から2022年4月8日までの各指標の日々の変動を視覚化したものである。この表によれば、ビットコインは3月16日に3万7023ドルの最安値を、3月30日に4万7078ドルの最高値を計上し、60日間の変動幅は21パーセントである。

一方、一般的に変動性がずっと少ないS&P500は、3月8日に4170ドルの最安値を、3月30日に4631ドルの最高値を計上し、その変動幅はたった9パーセントである。

この新たなデータをもとに、9万7000ドルの損失の謎に迫ろう。日々の変動を考慮すると、投資初日と60日目だけを抜き取れば安定的に見えた裏の隠されていた実態が明らかになるだろうか? つまり、義弟は、あまりにも急激な下げ潮の罪のない犠牲者のひとりに過ぎないということか? 

面白い仮説だが、私は直感的に違うと思った。もしそれが正しいなら、義弟は冬将軍が訪れようとするロシアに侵攻したナポレオン顔負けのタイミングの悪さで、毎回有り金を突っ込んでいないと計算が合わない。

手掛かりを探して取引明細書を精査した。殺人現場を嗅ぎ回る刑事になった気分で。唯一の違いは、血の海のかわりに、赤インクの絶望の海をかき分けていることくらいだ。

事実、最初の7日間の一握りの勝ち――ビットコインを4万1000ドルで買い、4日後に4万5000ドルで売り、そして暗号資産イーサリアムを2900ドルで買い、1週間後に3350ドルで売った。そしてテスラの株とオプションを買ってどちらも数日後に売り、合わせて2万ドル超の利益を得た――を除き、彼が触れるものはすべてがたちまちゴミクズと化した。

地獄が垣間見えた3週目の頭

さらに悪いことに、彼は日を追うごとに投資頻度を増し、三週目の末には、デイトレーダー[日々の価格変動を利用して利益を得ようと多額の取引を行う者のこと。通常、夜間に市場の暴落やブラックスワン事象が生じることを恐れて、すべての未決済のポジションを1日の終わりに決済する]気取りになっていたようだ。

初期の成功に自信を得た義弟は、どんどん大胆になり、より頻繁により多額の賭けをするようになった。その後の血の海は当然の結末である。2週目の半ばまでには、勝ちは見当たらなくなった。あるのは負けに次ぐ負けだけで、損失が積み重なっていった。3週目の頭には、彼の魔法の手は黒魔術を働くようになり、地獄が垣間見えてきた。

残高が5万ドルを下回った頃、投機的なクズ株や無価値なクズコインに多額の賭けをしていた形跡に、義弟の必死さが伝わってきた。6週目の末までに、勝負は決まっていた。丸々1ヵ月以上、勝ちがひとつもなく、残高は1万ドルを切り、3000ドルに向かっていた。

どうやったらここまで一貫してヘタを打ち続けることができるのだろうか? ほかの面で義弟がどんな人物かを知っている身としては、本当に不思議だった。

ジョーダン・ベルフォート

投資コンサルタント

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