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日本ではほとんど普及していないが…4人に1人が悩む「不眠症」に効く、睡眠薬以外の「スゴイ治療法」【医学博士が監修】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年9月13日 14時15分

日本ではほとんど普及していないが…4人に1人が悩む「不眠症」に効く、睡眠薬以外の「スゴイ治療法」【医学博士が監修】

(※写真はイメージです/PIXTA)

睡眠不足は心身のあらゆる部分に悪影響を与え、原因も様々です。「睡眠障害」の症状は多岐にわたり、60種類以上あります。日常生活に支障をきたすことも多いのです。その中でも多いケースである「不眠症」と「睡眠時無呼吸症候群」について、睡眠研究の第一人者・柳沢正史氏の書籍『今さら聞けない 睡眠の超基本』(朝日新聞出版)より一部を抜粋・再編集し解説していきます。

「たかが睡眠」ではない…睡眠不足によるさまざまな弊害

メンタル・メタボ・認知症・免疫力に影響

睡眠不足が身体に及ぼす影響は深刻です。ジョンズ・ホプキンズ大学は、慢性的な不眠はうつ病を発症するリスクが3倍になると報告しています。また、認知症にかかるリスクは4倍になるという研究もあります。睡眠不足が続くと脂肪が蓄積して肥満や高血圧、糖尿病、脂質代謝異常などを引き起こし、生活習慣病にかかる確率もアップ。免疫力も低下するため、風邪などの感染症にかかりやすくなるだけでなく、体内のがん細胞を排除しきれなくなります。

つまり、睡眠不足は脳の生産性を低下させてしまうとともに、身体の機能も低下させ、その結果、さまざまな疾患を招いてしまうのです。

睡眠不足は一時的に我慢すればいいものではありません。若いときは無理がきくかもしれませんが、将来的に心身の健康に悪影響が出る恐れがあります。

メンタル不調 感情がコントロールしづらくなり、負の感情に対して敏感に。うつ病のリスクは3倍に増加。 認知症 睡眠不足だと認知症の原因物質が脳内にたまりやすくなり、認知症の一因に。 免疫力低下 免疫機能が低下すると、感染症にかかりやすくなり、がん細胞も排除しきれなくなる。 メタボ 睡眠不足により食欲が増加。脂肪がたまり、メタボリックシンドロームを引き起こす。

60種類以上の睡眠障害

睡眠障害は、不眠症、睡眠時無呼吸症候群、過眠症など睡眠に関連した60以上の症状の総称で、7タイプに分けられます。生活の質を低下させ、日常生活に支障をきたすことが多くあります。

睡眠障害の7タイプ 1.睡眠関連呼吸障害群 睡眠中に一時的に呼吸が停止する症状で、睡眠時無呼吸症候群が最も一般的。睡眠の質が低下し、日中に眠気や疲労感が生じることがあります。 2.睡眠時随伴症 睡眠中の正常な筋肉の制御が乱れることで、睡眠中にもかかわらず、行動を起こしてしまう疾患です。夜驚(やきょう)症、夢遊病(睡眠時遊行症)などがあります。 3.不眠症 不眠症は、眠ろうとしても眠れないために、入眠困難、中途覚醒、早朝覚醒など何らかの問題が伴う状態。十分な睡眠がとれず、日中の機能や注意力に影響が出ます。 4.睡眠関連運動障害群 睡眠中に意図せず筋肉の動きが起こる疾患です。むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)(P.84)や周期性四肢運動障害などがあります。 5.中枢性過眠症群 睡眠サイクルや脳内の神経伝達物質の異常により、昼間に過度の眠気が生じます。ナルコレプシーや特発性過眠症などがあります。 6.概日リズム睡眠・覚醒障害群 体内時計の周期が24時間周期と異なるためにリズム障害(P.40)が起きます。睡眠相後退(前進)症候群、不規則睡眠覚醒リズム障害なども含まれます。 7.その他の睡眠障害 睡眠中にてんかん発作が起こる睡眠関連てんかん発作、睡眠中に頭痛が生じる睡眠時頭痛などのほか、環境要因が問題になるものもあります。

眠りたいのに眠れない「不眠症」

4人に1人が眠れず心身の不調に悩んでいる

不眠に悩む成人はおよそ4人に1人。入眠困難や、睡眠維持障害(中途覚醒、早期覚醒など)が心だけでなく身体にも影響を及ぼしています。イライラする、眠いのにぐっすり眠れない、熟眠感がないなどの症状が日中の生活に支障をきたします。

不眠を訴える人の中には、実際は眠れているのにそれを誤認している人もいます。治療は薬物療法だけではなく、認知行動療法も効果的です。認知行動療法とは、症状の要因となっている考え方や行動を改善し、習慣を変えていく心理療法のこと。効果を得るまでにはある程度の期間が必要ですが、治療終了後も効果が長く続きやすいと言われています。

不眠症の種類

不眠症は、睡眠障害の中でも特に広く見られる問題の1つ。どの部分で睡眠が妨げられているのか、理由によって大きく分けることができます。

現在の治療法

不眠症の治療では、薬物療法と認知行動療法が用いられます。認知行動療法の効果は実証されているものの、現在の日本ではほとんど普及しておらず、いわゆる睡眠薬を用いた薬物療法が主になっています。

不眠症チェックシート

「アテネ不眠尺度」は、世界保健機関(WHO)による「睡眠と健康に関する世界プロジェクト」によって作成された、不眠症の診断や症状の程度を評価するために使用される世界標準の不眠症の判定方法です。不眠症の程度や種類を把握することで、治療計画の立案や治療効果の評価に役立てることができます。

自覚しにくい「睡眠時無呼吸症候群」

たかがいびきと侮るなかれ…睡眠時無呼吸症候群に注意

睡眠の質を下げる要因の1つに「いびき」があります。「いびきがうるさい」と笑い話にしがちですが、侮ってはいけません。大きないびきは睡眠時無呼吸の可能性が高いのです。

睡眠時無呼吸症候群は中等症以上の潜在患者数が900万人と言われています。睡眠中の血中酸素濃度の低下が繰り返されることで、脳卒中や心臓発作などの重篤な疾患のリスクが大幅に上がります。また、脳が非常事態を感知し、覚醒反応を起こすため、睡眠の質が大きく下がります。吸気時に気道が閉塞するため、胸腔内圧が下がって心房から利尿物質が放出されることで、夜間頻尿も引き起こされます。

睡眠中に呼吸が止まるしくみ

仰向けに寝ると睡眠時に舌根が下がり、空気の通り道が細くなっていびきをかきます。ひどくなると気道が塞がれ、呼吸ができない状態に。ほかにも、重力で口やのどの周りの筋肉が下がったり、下あごが後方に傾いたりすることなども原因になります。

睡眠時無呼吸症候群になりやすい人

睡眠時無呼吸症候群は、昼間の眠気やいびき、睡眠の質の悪さの自覚にかかわらず、潜在患者数が非常に多い病気です。あごの骨格が小さい、下あごが後ろに下がっている、肥満、喫煙や飲酒の習慣がある、鼻がつまっている人などに起こりやすいとされています。更年期までは男性の患者が圧倒的に多いものの、以降は女性の患者も増えるため、高齢者では患者の男女比がほぼ同数です。

気道を確保するのが一番の対策

睡眠時無呼吸になると、夜間に何度も目が覚めたり、睡眠が浅くなったりするなど、睡眠の質が極端に低下します。この状態が長く続くと将来的に高血圧、脳卒中、心筋梗塞、大動脈解離といった重篤な病気にかかるリスクが大幅に上がるため、早めの対策が求められます。

柳沢 正史 筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構(WPI-IIIS)機構長・教授 株式会社S’UIMIN代表取締役 医学博士

筑波大学医学専門学群・大学院医学研究科博士課程修了後、31歳で渡米し、テキサス大学サウスウェスタン医学センター及びハワードヒューズ医学研究所にて24年間にわたり研究室を主宰。2010年に内閣府最先端研究開発支援プログラム(FIRST)に採択され、筑波大学に研究室を開設。2012年より、文部科学省世界トップレベル研究拠点プログラム国際統合睡眠医科学研究機構を創設。2017年、筑波大学発のスタートアップベンチャー企業「S'UIMIN」を起業。2021年よりムーンショット型研究開発事業のプロジェクトマネージャーを務める。

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