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素人投資家「大暴落株は持ち続けて損失確定を回避する」←この投資戦略の致命的な欠陥【ウォール街・伝説のブローカーの助言】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年10月13日 9時15分

素人投資家「大暴落株は持ち続けて損失確定を回避する」←この投資戦略の致命的な欠陥【ウォール街・伝説のブローカーの助言】

(※写真はイメージです/PIXTA)

映画『ウルフ・オブ・ウォールストリート』でレオナルド・ディカプリオ演じる主人公のモデルとなったジョーダン・ベルフォート氏が語る投資術。ある日、義弟のフェルナンドから「相談に乗ってほしい」と言われたベルフォート氏。なんとフェルナンドは、60日足らずで10万ドル近い投資額を失ってしまったのだ。60日のあいだに一体なにが起こったのか? ベルフォート氏が、彼に伝えたこれからの投資戦略とは? 本記事は、ベルフォート氏の著書『ウォールストリート伝説のブローカーが弟に教えた 負けない投資術』(久保田敦子訳・KADOKAWA)より一部を抜粋・再編集したものです。

投資のコツだけを教えても何の意味もなさない

私…筆者

クリスティーナ…筆者の妻

フェルナンド…妻(クリスティーナ)の妹の夫。筆者の義弟

ゴルディータ…フェルナンドの妻であり、クリスティーナの妹

夜が更けると、フェルナンドは私にとても深い質問――そのときは彼自身その深さに気づいていなかったが――を投げかけた。「売るべきか、売らざるべきか」この先どうすればいいかばっかり気にして、過去の過ちを一切振り返ろうとしない義弟はその夜ずっと即効性のあるヒントばかりを求めてきたが、この質問もその一環だった。

義弟のこの態度は私には馴染みがある。痛みを避け快楽だけを求めるという人間の本質だ。こんなやり方を続けるのは、義弟のためにならないと私は確信していた。

投資についてアドバイスをするのはこれが初めてじゃない。過去三十年間、投資のコツを求めて大勢が私のもとにやってきた。そこで私が骨身に染みて理解したのは、「なぜそうなのか」を説明せずにコツだけを教えても、何の役にも立たないということだ。本当に変えるためには――つまり、継続的な変化を求めるなら―深い理解が欠かせないのだ。

すなわち、なぜこの投資は良くて、あの投資がダメなのか、その理由を学ぶ必要がある。そうでなければ、同じ破滅パターン――アグレッシブな短期売買や、損失を取り戻すためにさらに金をつぎ込むこと、ペテン師のアドバイスを鵜吞みにすることなど――にすぐに舞い戻ってしまう。そしてフェルナンドのように、ゴミクズで構成されたひどい投資ポートフォリオを手に、年度末の請求書の山に頭を抱える羽目になる。

義弟のこの質問が重要なのは、まさにそのような結果を招くからだけではない。「資産をいつ売るか判断する際に、購入時に払った価格を判断基準とする」という素人投資家がやりがちなミスの核心に触れるからでもある。

例えば、義弟のケースでは、10万ドルの投資の大部分が煙のように消えてしまったが、まだわずかにポジションが残っていた。細かく言うと、総額3000ドルに満たない、3件のクズ株、4件のクズコイン[何の価値もないクズのような暗号資産]、そして2件のほぼ無価値のNFT[非代替性トークンの略語で、特定の希少な品の所有権を表象するデジタル資産。現在のところ多くはデジタル化された芸術作品の所有権として用いられているが、収集価値の高い物品や不動産にも活用できる]から構成されていた。

特にNFTは、義弟がこれらを買うとき、一時的に正気を失っていたのではないかと問わずにいられないほどひどい芸術作品だった。猿がコンピューターとコラボしてデジタル化されたゲロを撒き散らしたとしか私には思えなかった。いくらNFTでも、ここまでひどいのにはなかなかお目にかかれない。

フェルナンドのように、賢く教養もあり、機知に富む人物が、なぜこんなあからさまなガラクタを買おうと思ったのか。その答えは端的に言うと、こうだ。買うときはいつも――最初にテスラの株を買ったときから、生かじりの知識で暗号資産の海に乗り出すまで一貫して――友達やオンラインからの情報、はたまた直感を信じたからかは問わず、実際に何かを買ったときはいつでも、その価値は上がると彼は考えていた。

いずれにせよ、義弟のポートフォリオには合計9件のポジションが残っていて、その市場価値の合計は3000ドルに満たなかった。それら9件のお宝のために支払った金額は? およそ4万9000ドルだ。それら9件のうち一番の失敗は? 一株18ドルで1000株買い、現在の取引価格が一株35セントの株だ。

一番マシなのは? 1トークン当たり1ドルで1万トークン買い、現在の取引価格が1トークン当たり40セントのクズコインだ。残りの7件は、その間にあり、現在の取引価格が購入価格に近いものはひとつもない。

フェルナンド「すべてがすごく下がったから何も売りたくない」

ここで、フェルナンドとゴルディータはひとつの決断を迫られた。「売るべきか、売らざるべきか。それが問題だ」唯一の問題は、この2人の意見が一致しないことだった。

「それじゃあ」と我が通訳者は仲裁人の口ぶりで言った。「二人はどうすればいいの? フェルナンドはすべてがすごく下がったから何も売りたくない、今はそのまま持ち続けて、価格が戻るのを待つべきだと考えている。フェルナンドが言うには、単なる……」

「単なる紙の上のこと」と義弟が助け舟を出すと、クリスティーナが応じた。「それそれ。紙の上のこと。今のところ損失は紙の上だけだけど、一旦売却すれば、それでおしまい。お金は戻ってこない」妻は彼女自身、最後の言葉に半信半疑な様子で肩をすくめた。そして今度はもっと勢い良く付け足した。

「でもゴルディータはこう考えているの」そのときゴルディータは私の方を向いて、目を細めて視線を投げかけた。まるで「自分が可愛いなら、あたしの味方をするべきよ」とでも言いたげに。「全部売り払って、一からやり直すべきだって。えっと、英語でなんて言えばいいの?『丸ごと清算する』かな。あなた、どう思う?」

私はしばらく考えた。面白い、と私は思った。価格に関係なくすべてを売り払って悪夢を過去のものにし、最初からやり直したい、というゴルディータの欲求は、私にも充分すぎるほど覚えがある。つらい経験に区切りをつけて過去のものとしたい、それにまつわるあらゆるネガティブな暗い感情と縁を切りたい、という身を切るような欲求。それこそ、何年も前に私自身が体験した欲求だった。

私が逮捕されてから数年間の暗黒時代のことだ。スローモーションで死に向かうような、息苦しい感覚だった。富の象徴がひとつ、またひとつと我が身からゆっくりと引き剝がされるような苦しみ。なまくらの剣で緩慢に殺されるようなものだった。いっそのこと、すべてを一気に失い、牢屋に入り、服役するほうがどれだけマシかと思ったことを覚えている。

つらい経験の痕跡――私の場合は車、家、船、服、お金、妻、時計、宝石。義弟夫婦の場合はクズ株、クズコイン、ゲロNFT――がすべてなくなるまで、嫌な記憶に埋もれて、新しい一歩を踏み出すための深呼吸ができなかった。だから、ゴルディータの言うことも一理あった。

一方で、フェルナンドの考えもよくわかる。終わりにしたいという一時の感情に負けるよりも、理性的で論理的なアプローチのほうが最終的には得だ。結局のところ、みんな余りにも値下がりしてしまったのだから、売ったとしてもたかが知れている。3000ドルを取り戻したところで、焼け石に水だ。たったそれっぽっちなら、売っても売らなくても大して変わらないじゃないか。紙の上の損失を現実の損失にして、お金を取り戻すチャンスを失うことに何の意味があるのか。

素人投資家が陥りやすい誤り

ここで、一見シンプルだがなかなか深い質問が登場する。いつ売るべきか。そして何に基づいてその決定を下すべきか。値上がり額? 値下がり額? それとも買うときに払った金額? 

先述のとおり、この一見なんてことない質問は、素人投資家が最も陥りやすい、破滅的な誤りの核心に迫るものである。

例を挙げよう。一株当たり40ドルで1000株買うとする。数ヵ月後に株価が10ドルに下がったら、いくら損したことになるか。当然、3万ドルである。計算してみよう。初めに1000株買い、その後、それぞれの株の価値が購入時より30ドル下がった。だから、いくら損をしたかを計算するためには、買った株数に、一株当たりの損した額である30ドルを掛けるだけで、合計3万ドルと算定できる。

この計算は明らかだろう? 確かにそうかもしれないが、この数値は本当に意味があるのだろうか。本当に、損したのは3万ドルなのだろうか。証券口座の時価残高は確かに3万ドルとなる。しかし義弟の考えたとおり、まだ持ち株を売却していないのだから、実際はまだ損をしていないのではないか? つまり「紙の上で」損をしているだけではないか。

義弟のしたように、しばらく考えてみてほしい。株を本当に売るまで、価格が戻り、少なくとも幾らかのお金が戻ってくる可能性は常にある、だろう? 実際、本当に辛抱強くなれるなら、購入時の株価まで回復するのを待ってから売ることも可能だ。その場合、結果はトントンで、損失はまったくないことになる。なかなか説得力のある説だ。

それではさらに一歩話を進めよう。二年間この戦略をとり続けた株式ポートフォリオを保有していると想像してみてほしい。言い換えると、株価が下がった場合、売らないでおく。そしてフェルナンドのやり方に従って、忍耐強く保有し続け、株価が戻るのを待つ。反対に、株価が上がった場合、売ってしまう。そして再びフェルナンドのやり方に従って(投資を始めてから二週間、義弟が負けなしだった頃のように)売却して利益を確定し、別の取引を始める。もちろん、これらの利益について税金を払わなければならないが、それに文句はないだろう? 

ベンジャミン・フランクリンが言ったとおり「世の中には確実なものが二つだけある。死と税金だ」。「利益を得ている限り破産することはない」という株式ブローカー御用達の言葉もあわせると、この戦略は成功が約束された、長期的に見て勝者のレシピだと思われるかもしれない。

そうなのか? もうちょっとよく考えてみよう。値上がりした株は売って利益を確定し、値下がりした株は保有し続けて損失が確定するのを回避するという投資戦略で本当にうまくいくのか? それを解明するために、先ほどの、二年間この戦略をとり続けた株式ポートフォリオがどうなったのか見てみよう。どんな株が残っているだろう? その答えは「負け犬揃い」だ。義弟のポートフォリオと同じく、全部が全部、負け犬だ。確実にそうなる。

値下がりした株を手放さない投資戦略の欠陥

この戦略には2つの大きな欠陥がある。

1.勝手に抱いた幻想に基づいている。 2.売るべきか否かを判断する際に何よりも重要な要素である「あなたが上げ潮に乗っているのか下げ潮に乗っているのか」を考慮していない。

この戦略が基づいている幻想とは何か? ズバリ言わせてもらうと、現実を直視し状況に対処することから逃げ回る限り危険はないと思っている、頭を砂に突っ込んでいるダチョウだ。株式市場の言い回しでは「株が下落しても、売らない限りは本当に損したことにならない」という幻想だ。

わかりきったことかもしれないが、絶対に忘れないように言っておこう。「お前は、完全に、負けている」株を手放していないからといって、損していないということにはならない。実際、損したのだ。もう絶対に戻ってこない。アンコールもなしだ。

疑わしいと思うなら、投資信託会社について少し考えてみれば、納得できるはずだ。ウォール街が個人投資家に売り出す何千もの金融商品のなかで、投資信託は特に会計面で最も厳格に規制されていて、「マーク・トゥ・マーケット」と呼ばれる画一化された会計処理がすべての投資信託に法的に義務付けられている。

投資信託は「マーク・トゥ・マーケット」に基づき、取引日の締めごとに、それを構成するすべての株式のそれぞれについて、現在の株価を現在保有する株式数で掛け合わせ、その日の市場に基づく現在価値でそのポートフォリオ上の各株式が計上される。投資信託のポートフォリオすべてについてこの作業が完了すると、それらの現在価値をすべて足し合わせ、さらに手持ちの現金があればそれを加えて、当該投資信託の流動資産の総額が算定される。

投資信託の一口当たりの価値を知るには、総資産から総負債(マージン・ローン、手数料、管理費、人件費、営業費等)を差し引き、その数値を投資信託の総口数で割ると、投資信託の「基準価格(NAV)」が算定できる。これが、特定の取引日の終了時における投資信託の一口当たりの価値を表す。

投資信託の流動資産の総額=現金+Σ(株価×保有株式数)基準価格(NAV)=(投資信託の総資産-投資信託の総負債)/総口数

何が言いたいのかというと、つまり、あの無能な米国証券取引委員会(SEC)でさえ、投資信託がNAVを計算する際に、株式を買うときに支払った価格を用いることを認めていないのだ。なぜか。明らかに的外れだからだ。その上、人の目を欺くからだ。

おわかりいただけただろうか。投資信託がポートフォリオを構成するすべての株を時価で計上しないと、まだ売却されていないだけの負け犬のみで構成された投資信託を投資家は見分けることができない。これは、あなた自身のポートフォリオでも同じだ。

値下がりした株をまだ売却していないからといって、まだ損をしていない、ということにはならない。もう損をしたのだ。そのカネはなくなった。ただし、そのカネが永遠に返ってこないか、といえば、それはまったく別の話で、保有する株を日々、時価で把握しないことのもうひとつの欠点と深く関わる。それは、売るべきか否かを決定する際に最も重要な要素――すなわち「なぜ」――を見落とすことだ。

ジョーダン・ベルフォート

投資コンサルタント

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