40ドルで買った株が70ドルに値上がり…売るべきか、持ち続けるべきか。“ウォール街・伝説のブローカー”が教える「明確な判断基準」
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年10月14日 9時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
映画『ウルフ・オブ・ウォールストリート』でレオナルド・ディカプリオ演じる主人公のモデルとなったジョーダン・ベルフォート氏が語る投資術。仮に40ドルで買った株が70ドルに上がった、ないしは10ドルに下がった、とする。あなたならそれぞれどうするか? 売るべきか、売らざるべきか……。ジョーダン・ベルフォート氏の著書『ウォールストリート伝説のブローカーが弟に教えた 負けない投資術』(久保田敦子訳・KADOKAWA)より一部を抜粋・再編集し、その明確な判断理由を解説していく。
40ドルで買った株が70ドルに…売るべき?売らざるべき?
値下がりした株をまだ売却していないからといって、まだ損をしていない、ということにはならない。もう損をしたのだ。そのカネはなくなった。
ただし、そのカネが永遠に返ってこないか、といえば、それはまったく別の話で、保有する株を日々、時価で把握しないことのもうひとつの欠点と深く関わる。それは、売るべきか否かを決定する際に最も重要な要素――すなわち「なぜ」――を見落とすことだ。つまり、なぜ株価が下がったのか、ということだ。その背景となる理由は何か。そして逆に、なぜ株価が上がったのか、その背景となる理由もだ。
例えば、あなたが40ドルで買った株が現在、市場で70ドルになっているとして、売ることが理に適っているか知りたいとする。ここでひとつ目の質問が登場する。なぜそもそもその株を40ドルで買ったのか。お金に興味がない場合は別として、その株が値上がりすると考えたからだろう? それ以外の理由などあるだろうか? 値下がりすると思って買う奴はいない。
そう。当たり前のことに思われるかもしれないが、これが最初の重要なポイントだ。株でも他のどんな資産でも、それを投資家が買う理由は、それが値上がりすると考えるからだ。
そこで、次の質問だ。なぜ、その株が値上がりすると思ったのか? 意外に思われるかもしれないが、株価は魔法や呪術のような不思議な力によって上がったり下がったりするわけではない。いくつかの明確な理由があるはずだ。ここで、それらの理由を見ていこう。
まずは、最もわかり易い理由、それは需要と供給の法則である。例えば、ある株の需要が供給を上回る――つまり、買い手のほうが売り手よりも多い――と、一般的に株価は上がる。反対に、株の供給が需要を上回る――つまり、売り手のほうが買い手よりも多い――と、一般的に株価は下がる。大丈夫かな?
実際、この説明はこれまでも聞いたことがあるかもしれない。問題は、あまりにも簡単すぎて、重要には思えないことだ。なぜか。結局のところ、需要と供給は何かの結果であり、それら自身が理由ではないからだ。
「需要が上がったから株価が上がった」と言われたところで、実際に何が起こったのかについて何の情報も得られない。そうした情報を得るためには、一歩下がって、そもそも何が需要を増大させたのかを考えなければならない。それがわかれば、賢い投資判断を行えるようになる。
例えば、40ドルで買った株が70ドルで売買されていて、どうするべきか知りたいとする。その株を売却して利益を得るべきか、保有し続けて、さらに値上がりするのを待つべきか。再び、ハムレットの台詞みたいな疑問に舞い戻った。「売るべきか、売らざるべきか。それが問題だ!」
立ち返るべきは「なぜその株を買ったのか?」
売るべきか否かについてアドバイスするにはまず、あなたがそもそもなぜその株を買ったのかを知らなければならない。そのとき、目標価格としていくらを思い描いていたのか? そして何よりもまず、どうして株価が上がったのか? 言い換えると、需要が増大した理由は何か?
なぜその株を買ったのか:株の需要が増大しうる理由
株の需要が増大する理由は4つある。
需要が増大する理由その1:その企業は過小評価されていると投資家が考えたから。
需要が増大する理由その2:良いニュースがもうすぐ出ると投資家が考えるから。
需要が増大する理由その3:投資家が大馬鹿理論に従うから。
需要が増大する理由その4:投資家のセンチメントが上昇傾向にあるから。
需要が増大する理由その1:その企業は過小評価されていると投資家が考えたから。
→ある企業の株が過小評価されていると思われると、投資家は市場で、彼らが特売価格と思う価格で買おうとする。ウォール街用語で、このような投資家たちを「バリュー投資家」と呼ぶ。彼らのうち最も有名なのは、オマハの賢人として知られるウォーレン・バフェットである。
需要が増大する理由その2:良いニュースがもうすぐ出ると投資家が考えるから。
→投資家たちが宗教的とも言える熱心さで追いかける経済ニュースの種類はたくさんある。その一部として、初めての配当や増配の発表、買収の噂、買収の発表、新薬の治験の成功、重要な訴訟の決着、ウォーレン・バフェットやイーロン・マスクといった有名投資家の急な関与、形勢をがらりと変える契約の締結、新たな特許の承認、サブスク会員の急増などが挙げられる。
他にも、様々な種類のマクロ経済的ニュース――インフレ率や失業率、金利、GDP、貿易赤字、住宅着工件数などの変動――が挙げられる。
需要が増大する理由その3:投資家が大馬鹿理論に従うから。
→「大馬鹿理論」によれば、企業の株式の価値は、市場における最大の愚か者がその対価として支払おうとする金額である。言い換えると、ある株を買うべきか判断する際に、自分が支払ったよりも高い価格を支払おうとする他者が市場にいる限り、企業の本質的価値を考慮する必要はない、ということである。
株価が急激に上がっているとき、この理論はしばしば、最大の需要喚起装置として働き、新たな買い手-―馬鹿の記録を更新する馬鹿と称される――の波を次から次へと引き込む。結果として自分が最大の愚か者にならない限り、実際に愚かではないことになる。最後の愚か者が飛び込んできて自らの運命を決する前に、参入して退出するのだから、タイミングを見る目のある機敏なモメンタム・トレーダーだということになる。
需要が増大する理由その4:投資家のセンチメントが上昇傾向にあるから。
→投資家のセンチメントとは、株式市場の将来の行方についての投資家の総合的な感情や態度である。つまり、投資家は市場が上がると考えているか、下がると考えているか、ということだ。
経済状況、石油価格、誰と誰が戦争しているのか、数週間後に迫る決算報告、原料費の高騰、夜のニュースで聞いたことなど、他にも様々なことが背景として組み合わさり、投資家のセンチメントと呼ばれる集合意識を形作る。投資家のセンチメントが上昇傾向にある場合、「ショットガン効果」のようなものが生じ、それにより放たれた需要の大波が、文字通り数千種の株式の価格をその価値があるか否かに関係なく押し上げる。
株を買った理由は今でも有効か?
以上のことを念頭に置いて、購入後40ドルから10ドルに下落した株式の問題に戻ろう。これからどうするべきか。それには3つの選択肢がある。
1.株を売って損失を計上する。 2.株を保有し株価が戻るのを待つ。 3.さらに買い増し、難平買いをする。
答えは、場合による。賢い判断をするためには、あなたがその株を最初に40ドルで買った時点に立ち返り、なぜそうしたのか自問することが必要となる。
換言すれば、その株は現在負け犬かもしれないが、買った当初はこうなるとは思っていなかったはずだ。その購入はバリュー投資に基づくものだったのか? 当該企業の一株当たりの本質的価値が40ドルよりずっと高いと思って、安売りに飛びついたのだろうか。または、良いニュースが出ると思って買ったのか?
当該企業が予想以上の利益を報告したり、画期的な契約を締結したり、他の企業から買収の提案を受けたりということが行われると予想したのだろうか。それとも、市場の気運があなたにとって逆風となり、自分自身が一番の大馬鹿の座にいるのではないかと徐々に気付き始めたところかもしれない。
この投資家版ハムレットの台詞「売るべきか、売らざるべきか」に答えるためには、「なぜそもそもその株を買ったのか」に立ち返り、次の簡単な質問を自分に問いかけよう。「その理由は今でもまだ有効か?」
もしまだ有効なら、当初の購入理由をかき消すような他の問題が当該企業や市場全般にない限り、保有し続けたいと思うだろう。当初の理由がもう有効でないなら、同じくらい重みのある代わりの理由があるだろうか?
例えば、バリュー投資戦略に基づき一株当たり40ドルの株を購入したが、30ドル値下がりしたとする。まずすべきことは、企業のファンダメンタルズに立ち返り、本質的価値の算定が間違っていなかったか確認する。言い換えると、本質的価値を一株当たり75ドルと考えていたのに、株価が現在一株当たり10ドルまで下落していたとすると、企業のファンダメンタルズを再検討した結果、まだ本質的価値が75ドルであると確信しているか、ということだ。
もしそう確信しているなら、さらにバーゲン価格になっているということだから、一株当たり10ドルでさらに買い増しすることを強くお勧めする。反対に、再検討の結果、企業のファンダメンタルズが最初に計算したよりもずっと低いことが判明した場合や、悪いニュースが出たせいで本質的価値が現在の株価まで下落した場合は、その株式を売却し損失を計上して、これを教訓に今後はもっと慎重に投資することを強くお勧めする。
また、その株を買った理由が、良いニュースが出ると考えたからだったら、「そのニュースが報じられたとき、何が起こったか?」と自問してほしい。プラスの影響がすでに株価に織り込み済みだったか? または、あなたが勘違いしていただけで、そのニュースは思っていたよりも実際には悪く、その結果株価が下落したのではないか?
いずれにせよ、買った当初の理由はもう有効ではないので、その株を引き続き保有すべき他の理由がないか検討するべきだ。
例えば、株価があまりにも大きく下落した結果、バリュー投資戦略に基づきその株を保有し続けるほうが良いと判断できることもある。しかし、バリューを検討した結果、過小評価されているわけではなく、新しい良いニュースもない場合は、そんな株を保有すべき理由など、この世のどこを探してもない。その株を売り、教訓を得て、もっと良い投資先を探すべきだ。
最後に、あなたがもし大馬鹿理論に基づいて株を買い、現在一株当たり10ドルまで値下がりしているとしたら、あなた自身が最大の愚か者である可能性が高まっているということだ。すぐに株を売り、出直すべきだ。
どっちにしても、「ほんの六か月前にずっと高い価格で買ったのだから、損失を確定したくない」と思うことだけはやめよう。この考え方こそが、一文無しへの一番の近道だからだ。代わりに、「新しい情報に基づいて方向転換する」というシンプルなやり方でいこう。これは人類共通の生存戦略であるだけでなく、この世界を渡り歩いていくための重要なカギである。
新しいことに挑戦すれば、最初はつまずくこともある。そんなときは新たな情報に基づいてアプローチを変え、再びチャレンジすればいい。この手順を何度も繰り返せば、きっといつかは成功するはずだ。
このプロセスは、自分が今何をしようとしているのか、そこでは物事がどのように動いているのか、なぜそうなのか、どのようにそうなったのか、それらを理解することから始まる。
ジョーダン・ベルフォート
投資コンサルタント
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