15年前から変わらない…日本人が「社内プロジェクト」で失敗するときの「原因」【勤続46年・元ソニー社員が解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年9月16日 16時15分
写真はイメージです/PIXTA
プロジェクト・マネージャーとして、社内プロジェクトを成功に導くのにはどうすればよいのでしょうか。本連載では、小山透氏による著書『常勝! プロジェクトを成功に導くマネジメントの定石 立ちはだかる壁を乗り越えるプロジェクト成功の鍵とは』(ごきげんビジネス出版 ブランディング)から一部抜粋・編集し、プロジェクト遂行前にプロジェクト・マネージャーが学ぶべきことを解説していきます。
プロジェクトの失敗原因
専門誌『日経コンピュータ』(日経BP)の報告によると、日本の情報システム開発・導入プロジェクトの成功率は上がっています。15年前の2003年から調査をはじめ、2008年と2018年にも実施しています。3回の調査により、15年間でプロジェクトの成功率がどう推移したのか、失敗の理由は何か、といったことが明らかになりました。
プロジェクトの成功率は、2003年で26.7%、2008年で31.1%、2018年で52.8%と上がっていますが、約半数は失敗しているともいえます。
アジャイル開発の導入やPMO(Project Management Office)組織を設置するなど、プロジェクトの成功確率を高める施策を実施してきたことにより、成功する企業が増えている一方、プロジェクトの進め方について何も改善できず失敗する企業があることも事実です。この調査結果では、失敗する理由は15年前も現在も同じであると分析しています。
プロジェクトの成果物に満足を得られなかったいちばんの理由は「要件定義が不十分」、コストを順守できなかったいちばんの理由は「追加の開発作業が発生」、スケジュールを順守できなかったいちばんの理由は「システムの仕様変更が相次いだ」でした。
プロジェクトが失敗した場合の影響はきわめて大きく、とくに大規模なプロジェクトになると、関係する人や会社は経済的・社会的に大きな損失を被ることになります。失敗する要因はさまざまですが、いずれもやるべきことができていない、プロジェクトに対するマネジメントが不適切だからです。マネジメントの重要性を理解し、ツールや技法を実践で活用できるようにしなければなりません。
さらに、プロジェクトは人間の集合体による活動です。人間の集合体である以上、対人関係が円滑にいかなければ失敗します。
プロジェクトは仕事の進め方のひとつの形態
プロジェクトとは、なんでしょうか。
プロジェクトをひとことで言いあらわすと、「人類の夢」です。「音楽を外にもち出したい」「大人でもテレビゲームを楽しみたい」「大画面のテレビで映画鑑賞をしたい」「ペットのような愛犬玩具が欲しい」ソニーのエンジニアは、そのような夢を商品として開発し「WALKMAN(ウォークマン)」「PlayStation(プレイステーション)」「BRAVIA(ブラビア)」「AIBO(アイボ)」を生み出してきました。
プロジェクトとは「世の中にないものを期限内に創造する活動」です。言い換えれば、今までにやったことのないことを計画・実行し、期限までに目標を達成することです。つまり、唯一無二のものを創り出す夢のある活動であるといえます。
プロジェクトは、日本語で「計画」と訳される場合があります。「アポロ計画」は50年以上前に人類初の有人月面着陸を成功させました。アメリカ航空宇宙局(NASA)による人類初の月への有人宇宙飛行計画です。1961年から1972年にかけて実施され、有人月面着陸に全6回成功しました。アポロ計画のうちとくに月面着陸は、人類が初めて有人宇宙船により地球以外の天体に到達した事業です。宇宙開発史において画期的な出来事であっただけではなく、人類史における科学技術の偉大な業績として今もしばしば引用されます。
アポロ計画から50年、現在は「アルテミス計画」が進行中です。最初の女性月面着陸をミッションとしたプロジェクトです。「アルテミス」は「アポロ」の双子の妹で、月の女神とされています。アルテミス計画には日本も参加しており、「OMOTENASHI」は今回の打ち上げで唯一、月面着陸を目指す探査機です。
日本においては「超電導リニア中央新幹線計画」があります。最高速度500キロメートルで、東京―名古屋間を40分で結ぶ、夢の超特急の実現に向けたプロジェクトです。
一方で、MRJ(Mitsubishi Regional Jet)プロジェクトのように失敗プロジェクトもあります。「YSー11」のプロペラ機から約50年、噴射式のターボファンエンジン搭載の機体として完全な日本国産の旅客機プロジェクトがスタートしました。しかし、2019年6月13日、三菱航空機は開発中のリージョナルジェット機をMitsubishi Space Jet(三菱スペースジェット)と改称することを発表したのです。2020年5月22日、開発費の半減や量産機の生産中止など、開発計画が大幅に見直されることが報道されました。一部報道では、人員削減や量産機の製造中断、米国の開発拠点閉鎖、将来的な開発中止も視野に含めた大幅な見直しであるとされています。同年6月15日、スペースジェットの開発体制を大幅に縮小することを明らかにしました。そして、6度の納入延期を経て、2023年2月7日に開発が中止。
このようにプロジェクトという名のもとに、人類の夢をさまざまなかたちで実現してきました。規模の大小にかかわらず、今後もプロジェクトという形態の業務は増える傾向にあります。プロジェクトに関しては、アメリカのPMI(Project Management Institute:プロジェクトマネジメント協会)が発行する書籍、PMBOKⓇ ガイド『A Guide to the Project Management Body of Knowledge』(プロジェクトマネジメント知識体系ガイド)で明確に定義されています。
プロジェクトとは、「独自のプロダクト、サービス、所産を創造するために実施される有期性のある業務」です。つまり、独自性と有期性があり、やってみないとわからないことが多いため、段階的に詳細化して進めるといった特徴があります。
独自性とは、なんらかの識別できる点で、プロダクト、サービス、所産としてユニークな成果物を創造することです。有期性とは、どのプロジェクトにも明確なはじまりと終わりがあることです。段階的詳細化とは、プロジェクトは、はじめからすべてがわかっているわけではありません。プロジェクトが進むにつれて、徐々にわかってくることがあります。その段階で詳細に計画をして進めます。
プロジェクトは仕事の進め方のひとつの形態です。対応する形態としては、定常業務があり、ルーチンワークともいいます。なんらかの製品を開発する業務がプロジェクトであり、それを量産化して販売するのは定常業務となります。
小山 透 プロジェクトマネジメント・エバンジェリスト
※本記事は『常勝! プロジェクトを成功に導くマネジメントの定石 立ちはだかる壁を乗り越えるプロジェクト成功の鍵とは』(ごきげんビジネス出版)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。
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