30代・優秀なエンジニア、重大プロジェクトのマネージャーに意気揚々就任も…「デスマーチ」に陥りうつ状態に。全然うまく行かない根本原因【勤続46年・元ソニー社員が解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年10月4日 9時15分
写真はイメージです/PIXTA
エンジニアとして優秀だとしてもマネージャーとしてうまくプロジェクトを運営できるとは限りません。「経験と勘と度胸」を頼りにした、自己流でのマネジメントには限界があります。では、「できるプロジェクトマネージャー」になるためには、何が必要なのでしょうか。小山透氏の著書『常勝! プロジェクトを成功に導くマネジメントの定石 立ちはだかる壁を乗り越えるプロジェクト成功の鍵とは』(ごきげんビジネス出版 ブランディング)より解説していきます。
限界を感じる自己流の進め方
なぜ今までの「経験と感と度胸」だけでは、プロジェクトを思うように進められないのでしょうか。
企業においては、プロジェクトが発足すると、事業部長や部長などのプロジェクト・スポンサーがプロジェクト・マネジャーを任命します。プロジェクト・マネジャーは、エンジニアの経験が豊富で、そろそろマネジャーができそうと上司に認められた人が任命されます。
たとえばエンジニアとして入社したAさんは、30代後半になると経験も豊富で職場でも活躍し、上司から呼び出され「来年は、会社の将来を左右する重要なプロジェクトが発足する。プロジェクト・マネジャーをやってくれないか。優秀なきみにお願いしたい。よろしく頼むよ」と、こんな感じでしょうか。
Aさんはエンジニアとして優秀で成果も残してきましたが、マネジメントとなると基本的な教育は受けたことがありません。今までメンバーとして参画し、プロジェクトの進め方を見てきただけで、独自で学んだ方法で進めるしかありません。
これが失敗の原因となります。これまでは、メンバーとして自分の考える進め方や方法で思うような成果が出ていたとしても、プロジェクト・マネジャーの立場で運営しようとすると、プロジェクトは計画どおりに進まないものです。ひとつの問題を解決しても次から次へと問題が発生し、「もぐら叩き状態」となります。その後プロジェクトは「デスマーチ(死の行進)」に陥るのです。
プロジェクトは炎上し、メンバーからは不信感が募り、自分には何が足りないのか悩みはじめます。心身ともに疲弊し、うつ病という最悪の状態に陥るケースもあり得ます。自己流の進め方や方法では限界があることに気づかされるのです。マネジメントスキルは別と考えたほうがよいでしょう。
「できるプロジェクトマネージャー」になるために
「自己流のプロジェクト・マネジャー」は、自分の強みを中心に、伸ばせる範囲に手を伸ばしていく傾向にあります。とくにエンジニアからマネジャーに任命された場合は、エンジニアリングに関心が偏り、マネジメントが疎かになる傾向にあるでしょう。それに対して「できるプロジェクト・マネジャー」は、プロジェクトマネジメントの全体像を理解したうえで、自分がやるべき仕事を把握するとともに、自分ひとりでは手に負えない仕事をチーム・メンバーとともに解決します。さらに、自分の強みを生かし、弱みとなる部分は得意な人を巻き込んでパフォーマンスを最大化するのです。
できるプロジェクト・マネジャーになろうとすると、プロジェクトマネジメントについてインターネットで調べたり、書籍を読んだりして勉強します。すると、世界標準のPMBOKⓇ ガイドという書籍やPMPⓇ (Project Management Professional)の資格があることを知るのです。PMBOKⓇ ガイドを中心にプロジェクトマネジメントを勉強し、1年後にはPMPⓇ の資格を取得します。
たとえばソニーのプロジェクトマネジメント研修の受講者からは、次のような感想が寄せられています。
●プロジェクトマネジメントを体系的に学べた ●自分のこれまでの仕事の進め方で不足している部分を見つけられた ●他人の考え方や意見を聞くことができた ●今までの経験や我流でしていたが、まず基礎から体系的に学べた ●プロジェクトマネジメントに関して言葉は聞いたことがあったが、体系的に理解できた。プロジェクト活動以外にも、業務に有効活用できる。日本にも古くからプロジェクトマネジメントの考え方があります。それは「段取り」です。段取りとは、事が期待どおりになるように、前もって計画的に準備することです。語源は「段取り八分仕事二分」からきています。いい仕事をするためには、段取りが非常に重要です。
似た言葉として「転ばぬ先の杖」「備えあれば憂いなし」がありますが、いずれもリスクに対応する言葉として使用されます。このように、プロジェクトは不確実性の塊に対する挑戦のようなものです。しっかりと事前に準備しておくことが重要になります。
できるプロジェクト・マネジャーは、自身の現在のプロジェクトマネジメントスキルを理解し、体系的に学び、全体像を理解したうえで実践しています。
小山 透 プロジェクトマネジメント・エバンジェリスト
※本記事は『常勝! プロジェクトを成功に導くマネジメントの定石 立ちはだかる壁を乗り越えるプロジェクト成功の鍵とは』(ごきげんビジネス出版)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。
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