月収32万円・65歳のサラリーマン「給与+年金が50万円」を超える想定外、年金機構からの「年金停止」の通知に恐怖するも一転、歓喜したワケ
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年8月31日 8時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
定年後は年金で悠々な生活を、というのはひと昔前の話。いまや定年後も働くのがスタンダードで、65歳からは年金をもらいながら働くという人も。厚生労働省によると、その数、390万人。ただし、働きながら受け取れる年金には限度額があり、それを超えると一部支給停止、または全額停止、という悲劇も。年金を減らさないように、細心の注意を払わないといけない……これが、働く高齢者の現実です。
増える高齢者就業者…時代にそぐわないと批判「在職老齢年金」
働く高齢者が増えています。総務省『労働職調査』によると、2022年、65歳以上の就業者は912万人と過去最多を記録。就業者全体に占める割合も13.6%と過去最高を記録しました。
各年齢の就業率をみていくと、65歳以上の就業率は25.2%。「60~64歳」では73.0%、「65~69歳」で50.8%、「70~74歳」が33.5%、75歳以上が11.0%。
・65歳以上の4人に1人が働いています
・60歳定年以降も働いている人は10人に7人です
・65歳で年金受取がスタートしても、2人に1人は働いています
・70代を迎えても3人に1人は働いています
・後期高齢者になっても10人に1人は働いています
これが日本の高齢者の実態です。
働く高齢者が増えたことで注目されるのが「在職老齢年金」。元々、年金は現役を引退したら(=厚生年金保険に加入していない)もらえるものでした。65歳からの在職老齢年金制度が導入されたのは1965年のこと。当時は、基本年金額の2割は支給停止になるものでした。1969年には、65歳までの在職老齢年金制度を導入。標準報酬月額等級に応じ、2割~8割支給停止、または全額支給停止というものでした。
これが旧法(昭和61年3月以前の国民年金法・厚生年金保険法)によるもの。以降を新法といわれますが、ここで65歳からの在職老齢年金制度は廃止されます。そして1995年には、65歳までの在職老齢年金について、年金額の一律2割を支給停止、残りを標準報酬月額と年金額に応じて調整する形に変更。2002年には、65歳以上70歳未満の老齢厚生年金にも在職老齢厚生年金制度が導入されます。
その後もさまざまな改正が加えられ、いまの在職厚生年金の仕組みがあります。そもそも年金の受給対象者となっても、会社などで働いて給与を得ながら年金を受け取ることができる制度である「在職老齢年金」。給与と年金で生活が安定させられるというものですが、高齢者でも働くのが当たり前になりつつあるいま、基準値を超えると年金の一部、または全部が支給停止となるルールが、「時代にそぐわない」と批判を浴びることもしばしば。
65歳・再雇用で働くサラリーマン…在職老齢年金の勘違い
「在職老齢年金 限度額」と検索すると「賃金と年金額の合計が50万円」と出てくるでしょう。この限度額(基準額)はたびたび変わり、2019年には46万円→47万円、2023年には47万円→48万円、2024年には48万円→50万円に拡大しました。それだけ給与を得られるようになりましたが、それでも年金停止を意識しなければいけないのは変わらないようです。
厚生労働省『令和5年賃金構造金統計調査』によると、「60~64歳」男性大卒正社員の平均月収は44.9万円、「65~69歳」で44.1万円、「70歳以上」が44.1万円。一方、非正社員だと「60~64歳」32.0万円、「65~69歳」30.6万円、「70歳以上」で28.3万円。定年後、再雇用制度で雇用形態が変わり、非正社員になったのであれば限度額を超えなさそうですが、正社員のままだと……限度額を軽く超えてしまいそうです。
佐々木修さん(仮名・65歳)も在職老齢年金の限度額を意識しながら働くひとり。
――年金が減らされるなんて、絶対イヤだ
年金は月18万円。単純計算、給与は月32万円であればいい……と考え、細心の注意を払っていたといたといいます。ところが「高齢従業員のモチベーションを挙げるために給与形態の改定」という粋な計らい。結果、佐々木さんの月収は5万円ほどアップ。佐々木さんは「えっ、50万円超えるじゃん」と顔面蒼白に。
――良かった!
共に再雇用制度を利用し働く同年代の同僚に対し、
――良くないよ、年金停止になるんだぞ!
いずれ届くだろう、年金機構からの「年金停止」の通知。それを思うと「何を能天気に喜んでいるんだ」と怒りをあらわにせずにはいられなかったといいます。しかし同僚には「えっ、お前、そんなに稼いでいるの?」とキョトンとされたといいます。
そこで明らかになったのは、佐々木さんの勘違い。よく「賃金と年金額の合計が50万円」と表現される在職老齢年金ですが、ここでいう年金額というのは厚生年金部分。佐々木さんの場合、「18万円-6.8万円」で、11万円ほどが対象。5万円の昇給でも限度額は超えないのです。
いずれにせよ、人手不足解消のためにも高齢者の活用が叫ばれているなか、それとは逆をいく在職老齢年金の限度額。議論がされている最中で、今後も改定や見直しがある可能性が高いといえます。注視していく必要があるといえるでしょう。
[参考資料]
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