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〈非課税〉のはずの宗教法人で「脱税」が相次いでいた…住職たちの知られざる〈収益事業〉の実態【税理士が解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年9月4日 11時15分

〈非課税〉のはずの宗教法人で「脱税」が相次いでいた…住職たちの知られざる〈収益事業〉の実態【税理士が解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

「宗教法人」であり、宗教活動は非課税となるはずの「お寺」で、昨今、脱税が横行しているといいます。なぜ、お寺で脱税が行われてしまうのでしょうか? お寺の事業のうち、税金を納めなければならない「収益事業」と、そうでないもののボーダーラインについて、税理士法人松本が解説します。

お寺の脱税事件

お寺で脱税が発覚したという事件は、過去にいくつかあり、特に金額が大きい事例がニュースとなっています。

・日蓮宗総本山が約3億3,000万円の所得隠し

・住職2人お布施を1億5,000万円も私的に流用

■日蓮宗総本山が約3億3,000万円の所得隠し

例えば日蓮宗の総本山である身延山久遠寺(山梨県身延町)にて、約3億3,000万円の所得隠しがありました。所得税の脱税額は約1億2,000万円となり、僧侶は甲府地検に告発されました。

お寺へのお布施は非課税ではあるものの、私的に流用していたため住職の所得とみなされました。これらのお金は、家族や自分名義の個人の銀行口座に送金するなどしていたそうです。

参照

国税局「マルサ」が宗教法人に強制調査…住職の“1億2,000万円脱税”が発覚した大事件の裏側【元マルサの僧侶が暴露】

■お布施を「1億5,000万円」も私的に流用した住職

2つの宗教法人が、1億5,000万円を私的に流用して所得税の申告漏れが発覚したというニュースです。寺からの給与はあったものの、お布施などを貯蓄にあてていたそうです。

お寺の住職であっても給与はありますので、お金の流れはクリーンに管理しておかなければいけません。

参照

朝日新聞デジタル|2宗教法人に計1.5億円の所得隠し指摘国税「お布施を私的流用」

■お寺の僧侶は脱税常習犯!?

お寺の僧侶は仏様に仕える立場の人であり、「脱税なんて絶対にしなそう」というのが世間のイメージです。しかし実際にはお寺の脱税は多く発覚しており、5年で追加課税が45億円を超えたというニュースがあります。

ニュースになるのは高額脱税の事件ですが、金額が大きくないお寺の脱税も複数あるようです。例えばお寺ではお布施を受け取りますが、領収書はほとんど発行しません。お金のやりとりの証拠が残りにくいので、脱税しやすい、誘惑が多い状況といえるでしょう。

参照

読売新聞オンライン|さい銭を生活費にした宮司も…宗教法人の源泉徴収漏れ相次ぐ、5年で追徴税額45億円超

■お寺で脱税が相次ぐ理由

お寺は脱税しやすい環境である他にも、お寺で脱税が相次ぐ理由があります。なぜお寺で脱税が多いのか、他の職業とは以下のような点が異なるからだと考えられます。

・宗教活動に税金はかからない

・納税の意識が乏しい

・住職の多くが経営者になっている

宗教活動に税金はかからない

宗教活動をしている宗教法人には、税金がかかりません。税金とは、法人の所得である利益に対して課税されるものだからです。

宗教活動は一般の法人とは違い、営利目的で行われているものではありません。そのため税法上、宗教法人の宗教活動には課税されないとされています。

しかしお寺は宗教活動だけでなく、宗教活動以外の収益事業を行っています。例えばお賽銭は寄付となりますが、結婚式などの収益活動で得た利益には税金がかかります。このような課税分と非課税分が混在しているため、きっちりと収益を管理していないと所得隠しと疑われてしまいます。

納税の意識が乏しい

お寺の事業の中には、宗教活動以外のものがあり、これらは税金がかかります。しかし一方でお布施や寄付、賽銭やお守りの販売は非収益事業とされ、非課税となります。

宗教法人で行う事業全てが非課税ではないので、適切な処理をしなくてはいけませんが、線引きが曖昧になってしまう部分があるのかもしれません。

お寺で脱税をしてしまう理由として、このような意識の低さが指摘されます。

住職の多くが経営者になっている

住職は、お寺の宗教法人から給料が支払われている場合があります。この場合は給料は源泉徴収をしなくてはならず、税金を納めているものです。

税務上は住職であっても、サラリーマンと変わらない給与形態であるとわかります。お寺から住職に支払われる給与は課税対象となりますので、申告せずに私的流用すると脱税となります。

しかし実際のところ住職は雇われているという感覚は低く、経営者のような状態となっています。お寺が得た収益は、住職の意のままというのが現実的なところといえるでしょう。

お寺が納税すべき34の収益業務

お寺には非課税になる宗教活動と、課税の必要がある収益業務があるとお伝えしました。具体的に収益業務となるものは、以下の34種類となります。

  1. 物品販売業
  2. 不動産販売業
  3. 金銭貸付業
  4. 物品貸付業
  5. 不動産貸付業
  6. 製造業
  7. 通信業、放送業
  8. 運送業、運送取扱業
  9. 倉庫業
  10. 請負業
  11. 印刷業
  12. 出版業
  13. 写真業
  14. 席貸業
  15. 旅館業
  16. 料理店業や飲食店業
  17. 周旋業
  18. 代理業
  19. 仲立業
  20. 問屋業
  21. 鉱業
  22. 土石採取業
  23. 浴場業
  24. 理容業
  25. 美容業
  26. 興行業
  27. 遊技所業
  28. 遊覧所業
  29. 医療保健業
  30. 技芸教授業
  31. 駐車場業
  32. 信用保証業
  33. 無体財産権の提供業
  34. 労働者派遣業

これらの34種類の事業が収益事業となり、関連して行われるいわゆる付随行為も収益事業に含まれます。

参照

国税庁|令和4年度版宗教法人の税務

収益業務に該当するかの判断

上記のように収益事業が決められているものの、判断が難しい場合もあるでしょう。具体的な判断について、さらに詳しく確認していきましょう。

  • お守り・おみくじ等の販売
  • 墳墓地等の不動産の貸付け
  • 宿泊施設の経営
  • 茶道や生花等の教授
  • 駐車場の経営
  • 結婚式場の経営

お守り・おみくじ等の販売

お寺ではお守りやお札、おみくじ等の販売をしていますが、これらは喜捨金と認められ収益事業には該当しません。

喜捨金(きしゃきん)とは、利益が少なくいわゆる寄付のようなものを指します。

しかしお寺の物販は、お守りやおみくじだけではありません。絵葉書やキーホルダー、ペナントというように、一般のの物品販売業者でも取り扱いがある商品は収益業務に該当します。

お寺での物販全てが喜捨金と認められるわけではありませんので、注意しましょう。

墳墓地等の不動産の貸付け

お寺では墳墓地等の不動産の貸付け、境内地の席貸しが行われる場合があります。

墳墓地の貸付けは収益事業に該当しないとされており、永代使用料として、または使用期間に応じて継続的に地代を徴収したものは非課税となります。

しかしお寺の本堂や境内、講堂といった施設を会議や研修等で貸付けする場合は、収益事業に該当します。

このように施設の貸付けにおいても、収益事業に該当するか否かが異なります。

宿泊施設の経営

お寺が所有する宿泊施設に信者や参詣人を宿泊させ、宿泊料を受け取る場合は収益事業に該当します。

ただし宗教活動に関連して利用される簡易な共同宿泊施設で、その宿泊料の額が全ての利用者につき一定金額以下になるものは収益事業に該当しません。1泊1,000円以下、食事を提供する場合は1泊2食付き1,500円が、収益業務に該当しない宿泊料となります。

茶道や生花等の教授

お寺で茶道や生花といった技芸を教授する事業は、技芸教授業として収益事業に該当します。

着物の着付けや料理や舞踊、書道や絵画なども含まれます。通信教育で技芸教授業を行っていたとしても収益事業となり、免許や段、資格や称号を付与するものも含まれます。

駐車場の経営

お寺の境内には駐車場がある場合があり、駐車場経営をしていると収益事業に該当します。時間決めで不特定多数の人に駐車場を提供する場合、月極で継続して同一人物に駐車場を提供する場合も収益事業です。宗教活動のために駐車場を利用した場合においても、非課税とはなりません。

「若干のお供えを頂戴しているので収益事業にはならない」という認識の方がいますが、駐車場経営は収益事業となりますので注意しましょう。

結婚式場の経営

お寺で仏前式の結婚式を挙げたいと希望する方もいらっしゃいますので、結婚式が行われる場合もあるでしょう。

挙式は本来の宗教活動の一部と認められますが、挙式後の披露宴は収益活動となります。披露宴の席貸しや飲食物の提供、衣装の貸付けや記念写真の撮影といった行為は、全て収益活動に該当します。

挙式と披露宴で扱いが異なるのでややこしいですが、混合しないよう適切に処理しましょう。

お寺の税務調査とは

お寺や神社といった宗教法人も、一般企業と同様に税務調査の対象になります。税務調査では、以下のようなポイントがチェックされています。

  • 源泉徴収に不審な点がないか
  • 収益事業と宗教活動の見極め
  • 収入の申告漏れ

源泉徴収に不審な点がないか

宗教法人としての収入は非課税ですが、住職や僧侶、宮司といった職員への給料は源泉徴収が必要になります。税理士に支払った報酬等に対しても、同様の義務があります。

難しいのが、給料以外の支払いに対する処理です。例えば職員の飲食費や生活費を宗教法人として負担した場合、弟子の学費を負担した場合などは、源泉徴収の対象となります。

お寺側は源泉徴収の対象ではないと認識していても、調査官に対象であると指摘されるかもしれませんので注意しましょう。

収益事業と宗教活動の見極め

何度もお伝えしている通り、収益事業と宗教活動は線引きが困難な場合があります。これらが適切に処理されているかが、税務調査でも確認事項となるのは間違いありません。

「知らなかった」「非課税だと思っていた」では済まされず、意図的でないとしても不納付加算税や延滞税といったペナルティが課されてしまいます。

収入の申告漏れ

お寺はレジ打ちをしませんし、キャッシュレス決済もまだまだ少ないでしょう。お金のやりとりの記録が残りにくく、収入の申告漏れが疑われやすい業種であるといえます。

そもそも宗教活動は非課税なので、記録が残っていなくても問題ないと思うかもしれません。しかし住職や僧侶の懐に入っていれば、給与として申告すべきものとなりますので、申告漏れと扱われてしまいます。

そのため宗教活動による収入が正しく処理されているかを、税務調査では詳しく調べられます。収入漏れがあると、そのお金がどこに行ったのかを調査していきます。

お寺の税申告は一般企業よりも複雑

宗教法人の宗教活動に関しては非課税ですが、収益事業を行った部分には税金がかかります。非課税の事業が存在しているため、一般企業よりも税申告は複雑になります。そのため、お寺こそ税理士が必要ともいえます。

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴税額ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。

税理士法人松本

税務調査特化税理士法人として全国6ヵ所(渋谷、錦糸町、新宿、横浜、柏、大阪)にオフィスを構え、“成功報酬型”税務調査サポートを提供する税理士事務所では国内No.1の規模を誇る。国税局に勤めていた、いわゆる「国税OB」が複数名所属。税務調査相談実績は累計1000件以上。一般業種より税務調査が厳しいと言われる風俗業界の税務に10年以上特化し、追加徴税額ゼロ円の実績も多数。

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