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ストレス耐性、柔軟性、問題解決力…子どもの“社会適応スキル”を育むために親がやるべき「部屋を片付けて」と叱るよりもっと大切なこと  

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年10月7日 18時0分

ストレス耐性、柔軟性、問題解決力…子どもの“社会適応スキル”を育むために親がやるべき「部屋を片付けて」と叱るよりもっと大切なこと  

(※画像はイメージです/PIXTA)

子どもを頭ごなしに叱っていては、本人は社会に適応する力が身についていきません。目の前の問題を解決しながら、子どもの成長につながる声かけのコツをみていきましょう。英国の心理療法士、フィリッパ・ペリー氏による著書『子どもとの関係が変わる 自分の親に読んでほしかった本』(日経BP 日本経済新聞出版・刊、高山真由美氏・訳)より、詳しく解説します。

親はどこまで厳しくするべきか

子どもの行動の舵取りをするときに、主要なアプローチは3つあります。(1)厳しくする、(2)甘くする、(3)協力する、というものです。

(1)の「厳しくする」というのはおそらく、子どものしつけを考えるときの最も一般的な方法で、大人の意思を子どもに押しつけるやり方です。たとえば、部屋を片づけなさいと言いつけて、片づけなければ罰を与えるような方法です。

誰かの意思を押しつけられるのが大好きという人はまずいませんし、子どもも例外ではありません。なかには従順な子もいますが、そうでない子も当然います。このやり方をしていると、行き詰まったり、勝ち負けのゲームになったり、屈辱や怒りを生んだりします。

危険なのは、「自分は常に正しい」という態度や、柔軟性のなさや、ストレスを受けつけない姿勢の見本を示していることです。

自分の主張を子どもに押しつけることで、常に「正しく」あれ、強硬であれ、不寛容であれと、知らず知らずのうちに教えてしまっているのです。

これではお互いに硬直した状態にはまり込むことになります。行き詰まりや怒鳴り合いに終わるか、子どもがあなたとのコミュニケーションを避けるようになります。

これは長い目で見たときに、おおらかで良好な親子関係を築くうえでマイナスになります。「おもちゃを片づけて、いますぐ!」と言うのが絶対にいけないわけではありません。ただ、これは例外的なスタイルにする必要があります。

権威主義的な態度を取ることに頼っていると、権威に対する子どもの態度にも悪影響を与えます。責任ある立場の人に協力することや、自分がリーダーになることができなくなるかもしれませんし、あるいは、独裁者に育ってしまうかもしれません。自分の意思を常に子どもに押しつけるのは、倫理観や協調的な態度を育む最良の方法ではありませんし、子どもと良好な親子関係を築くうえでも良い方法ではないのです。

(2)の「甘くする」というのは、自分なりの基準や期待を子どもにいっさい伝えないことです。親が子どものためにまったく境界を設けないのは、リスクを嫌う子育てへの反動か、自分自身が子どもとして経験してきた権威主義的な子育てへの反発のせいです。

自分で基準や目標を設定できる子もいますが、誰もができるわけではありません。自分が何を期待されているのかわからない子どもは途方に暮れ、不安を感じます。

ときどき、権威主義的だった自分の親と同じことは絶対にするまいと固く決意し、反対方向に大きく振れるあまり、子どもに対してなんの境界も設けない人がいます。よく考えれば、それは自分の親に反発しているだけであって、いま目の前にある現実ときちんと向きあっているわけではないのだとわかります。

しかし手綱がゆるいのは悪いことばかりではありません。最善の解決になることもあります。子どもにまだ準備ができていない場合、親が子どもへの期待値を下げるのは理にかなっています。部屋の片づけを例に取っても、1番上の子にとっては簡単でも、2番めの子には難しいかもしれません。だから良好な関係を蝕むだけのバトルをくりひろげるよりも、あなたが望むとおりのことがまだできないなら、当面は期待値を下げるといいのです。

「おもちゃを片づけて」とは絶対に言うな、という意味ではありません。子どもに準備ができるまで、境界を設けることを意図して延期するのは、あきらめるのとは違います。甘くする、手綱をゆるめるというのは、協力のうえで解決する準備ができるまでは短期的な解決策として有益です。

(3)の「協力する」というのは、親と子どもが額を寄せあって問題解決を考える方法で、あなたは独裁者ではなく、カウンセラーになります。これは私のお気に入りのアプローチです。問題の解決を親子で一緒に探ろうとするものだからです。

では、協力する方法(コラボティブ・メソッド)とはどんなもので、どんな効果があるのでしょうか?

コラボラティブ・メソッド(協力する方法)に必要な5つのステップ

(1)自分の考えを明示することによって、問題を明確にする→「部屋をきちんとしてほしい。私はあなたに部屋を片づけてほしい」

(2)行動の背後にある感情を突きとめる。子どもには助けが必要かもしれない→「友達が散らかしたのに、自分1人で部屋を片づけなきゃならないのはフェアじゃないと思ってる?」「片づけようと思っても手も足も出ない感じ? 整理することなんか永久にできそうにないと思ってる?」

(3)その感情を受けいれる→「不満に思う気持ちはわかるよ」「大仕事の最初は圧倒されるよね」

(4)意見を出しあって解決方法を考える→「それでもやっぱり片づけてほしい。一番簡単な方法は何かな?」

(5)決まったことを最後までやりとおす。必要があれば、いくつかのステップをくり返す

そして、親が判定を下さないこと。

(2)が最も厄介かもしれません。同意したくないことをあえて口にするのは難しいと思う人もいるでしょう。しかし自分にとって不都合な感情だからといってはねつけると、子どものほうも頑として譲らなくなります。

子どもは感じていることをすべて正確に言い表せるわけではないので、問題の背後にある感情を探るには、先述の例のように、複数の選択肢を示すといいでしょう。

重要なのは歩み寄りの経験

子どもがどう感じているかを突きとめたら、問題を見直します。

「部屋が散らかっているから片づけなさい。片づけないなら、おもちゃを全部捨てるよ」などと言ってはいけません。これでは子どもを侮辱し、脅しているのと同じで、憤りが鬱積するだけです。そうではなく、共感を示しましょう。

練習が必要ですし、直感に反するかもしれませんが、子どもは自分の感情を考慮してもらった経験から他者の感情を思いやることを学ぶのです。意見を出しあって一緒に解決策を探すときは、子どもに主導権を与え、何を提案してきても即座にはねつけたりしないこと。もしかしたらこんなふうに言ってくるかもしれません。

「子ども部屋はあのままにしておいてもいいんじゃない?」。

あなたは少し考えてからこう答えます。

「そうだね、それも1つの考えだね。それで解決ならあなたはうれしいかもしれない。だけど、私はそれでは困る。居心地が悪いだけじゃなくて、掃除をするのも大変だし、洗濯が済んだ服を片づけるのも一苦労だから。どうしたらいいと思う?」

「わかんない」

「急がないから、ゆっくり考えて」

あなたがなんでも解決してしまわないことが肝心です。子どもの力を奪ってしまうからです。

「いま、おもちゃをしまうことならできるけど、それが終わったら一休みして、そのあと服を片づけるときは手伝ってくれない? たたむのが難しいから」

「オーケイ、それならいいよ。服をたたむときになったら呼んで。一緒にやってみよう」

などと声をかけましょう。もしあなた自身が権威主義的なやり方で育てられ、それが理想的だと思っているなら、この「協力する方法」はずいぶんまわりくどく思えるかもしれません。しかしここで重要なのは、部屋が片づくと同時に、親子が思っていることをオープンに話しあうことによって、2人の関係に気を配り、歩み寄りつつ問題を解決する方法を学んでいる点です。

子育ての本当の仕事は部屋を片づけることではなく、子どものそばで成長の手助けをすることです。協力する方法は、社会に適応するために不可欠なスキル―ストレスに耐える力、柔軟性、問題解決能力、共感力(エンパシー)―を育む助けになるのです。

フィリッパ・ペリー

心理療法士

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