社長の特権!? …経営者が「賃貸」を好むワケ【税理士の助言】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年11月30日 12時0分
(※写真はイメージです/PIXTA)
“持ち家と賃貸、どちらが得か”という、いまだ決着のつかないこの議論。もっとも、経営者に限っては「賃貸のほうが圧倒的に得」といえそうです。しかも、すでに家を買っていていたとしても、その“得”を享受できるのだとか。いったいどういうことなのか、税理士法人グランサーズの共同代表で税理士・公認会計士の黒瀧泰介氏が、うらやましすぎる“社長の特権”について解説します。
家を持っていても“役員社宅”は活用できる
――役員社宅を活用すると節税になると聞いたのですが、本当ですか?
黒瀧氏(以下、黒)「ええ。役員社宅を導入すれば、会社負担分は損金になりますし、役員の手取りも増やせます。1人社長の場合でも、積極的に活用したい制度ですね」
――そうなんですね。私は自宅を購入してしまったのですが、やはりもう使えないのでしょうか。もっと早く知っていればよかったです。
黒「実は、そんなことないんですよ。すでにご自宅がある社長さんでも、役員社宅を活用する方法はあります」
――そうなんですか? それは気になります。
経営者が社宅に住むメリット
――ではまず、経営者が役員社宅に住むメリットについて、もう少し詳しく教えてください。
黒「会社が賃貸物件を借りて、社宅として経営者に貸す場合、家賃は会社が直接大家に支払い、経営者から家賃の一部を徴収することになります」
黒「このとき、会社が支払う家賃と、経営者から徴収した家賃相当額の差額を、会社の損金にすることができるんです」
――家賃の支払いは毎月ありますから、年間で見ると結構な額を損金にできそうですね。
黒「ええ。しかも、経営者個人の税金や社会保険料を抑えることもできるんです」
――どういうことですか?
黒「イメージをお伝えするために、かなり単純化して説明します。
たとえば、もともと月100万円の役員報酬を受け取っていたとします。まだ役員社宅は導入しておらず、家賃月30万円を自分で支払っていました。
この場合、所得税や住民税、社会保険料は月100万円の役員報酬を元に算出されることになりますよね?」
――そうですね。
黒「個人として自由に使えるお金は、100万円から家賃30万円、さらに報酬に係る所得税・住民税・社会保険料を引いた残りの額になります。そこで、役員社宅制度を導入し、家賃の会社負担分を役員報酬から差し引きます。
経営者から徴収する金額が15万円の場合、その差額の15万円を差し引くと、役員報酬は85万円です。すると、税金や社会保険料の計算も85万円で行うことになります。
役員報酬を減額したことにより、役員個人にかかってくる税金の負担も減ります。結果として、自由に使えるお金は増えることになる、というわけです。
しかも、社会保険料は会社と折半しているため、会社側の社会保険料支払いも減ります。このように、役員社宅の導入は会社と経営者個人の両方にとって得といえるでしょう」
――なるほど。これは積極的に導入を検討したい制度ですね。
すでに家を買ってしまっている経営者の社宅活用法
――役員社宅を活用するメリットは分かったんですが、もうすでに家を買ってしまっている経営者は社宅を借りる意味がないですよね。最初に言っていた「方法がある」というのは、どういうことなんですか?
黒「もうすでに家を所有している人の場合、社宅制度は使えないと思ってしまいがちですが、実は発想を変えるだけでかなり得ができるんです。
その発想というのが、自分の会社に自宅を売却してしまう方法と、自宅を賃貸として第三者に貸して、自分は社宅に住む方法です」
――なるほど。その手がありますね!
自宅を会社に売却して、会社から借りる形にするか、自宅は誰かに貸しちゃって、新たに社宅を借りるようにすれば、私も役員社宅を使えるんですね。
でも黒瀧さん……売却するのと外に貸すの、どちらがいいのでしょうか」
黒「そうですね、自宅を会社に売却する方法ならわざわざ引っ越しする必要がなく、今まで通り自宅に住めるというメリットがあります」
――確かに引っ越しって面倒ですよね。
黒「一方、外に貸すメリットは、家賃収入が得られることです」
――それも魅力的ですね……
黒「ただその場合、当然引っ越ししなければいけません。どちらも一長一短ですが、おすすめは外部に貸すほうです」
――そうなんですね! どうしてですか?
黒「それでは、役員社宅の注意点を確認しながら、売却する場合のデメリットについても見ていきましょうか」
経営者や役員が社宅に住む際の注意点
――それでは、役員社宅制度を活用する注意点についてお願いします。
黒「社宅制度を活用する際の注意点は結構あるので、順番に解説していきたいと思います」
――よろしくお願いします。
社内規程を整備する必要がある
黒「まず、社宅制度を導入する際には、社内規程を整備する必要があります。特に注意が必要なのが、従業員の社宅制度に関する規程がすでに整備されていても、役員の社宅制度については別途規程を整備する必要があるということです」
――同じ社宅制度として一緒にすることはできないんですか?
黒「ええ。従業員と役員では税務上の取り扱いが異なるので、別々に規程を作る必要があります。規程がない状態で社宅制度を導入してしまうと、税務調査の際に不利になってしまうので注意しましょう」
社宅の規模に注意する
黒「また、役員社宅を導入する際には、社宅の規模にも注意しましょう」
――なぜ社宅の規模に注意しなければならないんですか?
黒「先ほどもお話ししたように、社宅を借りる際には役員が『家賃の一部』を負担しないと、賃料に相当する金額が給与として扱われ、課税対象になってしまいます。
その『家賃の一部』の金額が、社宅の規模によって変わってくるんです。
黒「特に注意が必要なのが、社宅が『豪華社宅』に該当してしまう場合です。『豪華社宅』に該当すると、役員社宅制度の適用外になってしまい社宅制度の恩恵を受けられません」
――『豪華社宅』にはどういった物件が該当するんですか?
黒「『豪華社宅』に該当するのは、床面積が240㎡を超えていて賃料が高額だったり、内外装が豪華だったりするものです。
また、床面積が240㎡を超えていなくても、プールなどの一般的な家には無いような設備が付いている場合は『豪華社宅』と判定される場合があります。明確な基準はないので、気になる場合は購入前に管轄の税務署に相談したほうが良いでしょう」
――せっかく社宅制度を導入したのに制度の適用外になってしまっては意味がないですからね。特に自宅を会社に売却して社宅制度を活用しようとしている場合は注意したいですね。
黒瀧 泰介
税理士法人グランサーズ共同代表/公認会計士・税理士
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