「我が社は黒字決算です」←実は赤字…ほとんどの社長が知らない「黒字倒産」の本当の意味【税理士が解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年9月21日 15時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
黒字決算の会社が倒産する。会計を知らない一般の人からするとなんだか不思議な話に聞こえるかもしれません。しかし、現行の会計制度ではこの奇妙な現象が起こりうるのです。一体なぜでしょうか? 本記事では、税理士である稲垣保氏の書籍『可視化会計 本当の利益を掴む術』(総合法令出版)より一部を抜粋・再編集し、黒字倒産について解説します。
「黒字倒産」の本当の意味
現行の会計制度では、損益計算書が黒字でも資金繰りが付かずに倒産することを「黒字倒産」と言っています。
しかし、一般的に考えると「利益のお金」(黒字)以上に現金を使うためには、「借金のお金」(赤字)で帳尻を合わせるしかありません。つまり、利益のお金で資金繰りが付かないということは、財政状態は赤字であるということです。
経営成績が黒字であるにもかかわらず倒産してしまうのは、現行会計制度のルールが「利益と現金は一致しない」と考えられているためです。
しかし、時点利益資金会計では「本当の利益と利益のお金はイコールで繋がるもの」と考えているため、黒字倒産という言葉はなんとも奇妙なものに感じるのです。
本当に黒字ならば、資金繰りに詰まることはあり得ません。現行の会計制度が期間損益だけを重要視したため、財務の原則である「本当の利益と利益のお金はイコール」だということに気付いていないのです。損益計算と資金計算が別物であると考えている限り、黒字倒産の悲劇はなくならないでしょう。
「我が社は黒字決算です」「我が社の自己資本比率は50%を越えています」とおっしゃる会社の財務を時点利益資金会計の倒産防止管理表を用いて資金分析すると、ほとんどの社長さんが驚かれます。
なぜなら、今まで黒字だと思っていた会社が、実は赤字であることが一発で分かってしまうからです。
「黒字決算」や「自己資本比率」などという言葉は、現行の制度会計上の期間損益計算の結果を基に作成された財務諸表の数値による判断です。会計を知らない一般の人から見たら、「なぜ、黒字決算の会社が倒産してしまうのだろう?」と不思議に思うのではないでしょうか? その原因は、現行会計の考え方と一般の人の考え方に差異が生じているためです。
現行会計制度のルールは「期間損益計算」を前提にしている
現行会計制度は、一定期間の期間損益計算を前提にした計算ルールであり、税理士はこれを原則的な会計ルールだと認識しています。
これに対して一般の個人は、今この時点で儲けのお金が残っているのか?残っていないのか?を見て財務の強弱を判断しているのです。つまり、期間計算はしていないということです。
昔は月給300万円稼いでいたが、今は月給30万円で預金残高は100万円だという人の財務の強弱の判断は、今現在の月給30万円と預金残高の100万円を元に判断します。
いくら給料を多く稼いでも、その儲けのお金を使えば利益のお金は減少し、今残っている儲けのお金がその人個人の財政基盤だということです。これが財務判断の原則的な考え方といえるのではないでしょうか。この考え方は、法人の財務判断でも原則は同じだといえます。
このように考えると、現行会計制度の会計ルールは、実は原則的なルールではなく、上場会社の株主等のための期間損益計算を前提とした例外的なルールだったのだと考えると理論の筋道が通ると思うのですが、いかがでしょう。
稲垣 保
有限会社マーフシステム代表取締役
財務経営コンサルタント、税理士
1974年東京経済大学卒業。新卒入社した会社を2年で退職し税理士試験に専念。合格後1977年より会計事務所で働き始める。1985年に相続対策コンサルティング会社に転職し、1989年12月に独立して有限会社マーフシステムの設立と稲垣税務会計事務所を開設する。1996年9月に佐藤幸利先生が主催するCMA研究会に参加し、利益資金会計研究所を併設して資金管理指導を実践。現在まで「お金の研究」を継続している。著書に『経営者のための利益のお金が見える会計』(WIP)。
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