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自己所有より支出が高い〈賃貸〉か、銀行に“420回”決まった金額を払う〈持ち家〉か…損得勘定で考えるより「大切にすべきこと」

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年9月7日 11時15分

自己所有より支出が高い〈賃貸〉か、銀行に“420回”決まった金額を払う〈持ち家〉か…損得勘定で考えるより「大切にすべきこと」

(※写真はイメージです/PIXTA)

人生のなかでも大きな買い物となるマイホーム。大切な自分の住まいを正しく選択するために欠かせない知識を身に着けたうえで、取引をすることが重要です。千日太郎氏の著書『マンガでわかる 不動産屋が絶対に教えてくれない「最高の家」の買い方』(扶桑社)より、詳しく見ていきましょう。

不動産会社の営業マンはあくまでも「取引相手」

マイホーム購入は“人生最大の取引”と言っても過言ではありません。何軒もの不動産投資をしている人以外は、物件購入をする機会は人生に一度きりの人がほとんどでしょう。

誰もが物件を買った経験がない状態で、私たちが物件を買う相手は、不動産会社の営業マンという百戦錬磨のプロ。私たちは初心者ですから、さまざまな物件情報を持ち、何軒もの購入事例を見てきた営業マンを頼るのは当然のことです。

しかし、ここでいま一度認識しておきたいのは「不動産会社の営業マンは私たちの味方ではない」ということ。とはいえ、敵でもなく、「取引相手」だということを、しっかりと心に留めておきましょう。

私たちが購入したい家は、自分と家族の人生を豊かに送っていくための大切なものですが、営業マンは家を売るまでが仕事です。家を購入したい私たちと、家を売りたい営業マンの需要と供給が一致しなければ、取引はすべきではないのです。当然のことだと思われるかもしれませんが、いざ自分が物件を買う当事者になると、このことを忘れてしまいがちです。

話が進んでいても、少しでも「何かおかしいな」「良くない方向に進んでいるな」と引っかかりを感じたら、一度立ち止まりましょう。そして、いくら「これだけ時間をかけたのに…」と思っても、今後の取引を中断する勇気を持つことも大切なことです。

不動産に掘り出し物はない

マイホームの購入はよく「人生最大の買い物」と表現されますが、「買い物」という表現は、私たちの感覚をおかしくしてしまいます。物置やキャンプ用品を買うのとは次元が違うわけですから、家の購入に従来の買い物の基準を当てはめてはいけません。マイホーム購入は「人生のプロジェクト」と考えましょう

ただ、不動産会社からすれば、家は「売り物」です。お金さえ払えば買えるものですし、買う人が「お客」になります。営業マンは「売りたい家」をプレゼンし、「お買い得」「掘り出し物」という耳ざわりの良い言葉を使って、さまざまな物件情報を提示してくるでしょう

そうするうちに、私たちは少しでもお得で、少しでも条件が良い物件が欲しくなり、損得勘定に支配されてしまいます。営業マンに「早い者勝ちのお買い得物件が出ましたよ」と言われたら、飛びついてしまう。迷っている間に売れてしまうと、「先を越された!」と焦る。営業マンの言う通りにしなかったから、お買い得物件を逃してしまった…と悔しくなります。

だからこそ、ほどなくして「また掘り出し物が出ましたよ」と言われたら、その物件の良し悪しを冷静に見極められず、急いで契約してしまうことも多々あるのです。

不動産に「掘り出し物」などありません。すべて価格に反映されています。損得勘定に左右されることなく、冷静になることが重要なのです

「賃貸か持ち家か」論に決着をつけます

物件に関して、「賃貸が得か? 持ち家が得か?」という話題は尽きません。さまざまな有識者がさまざまな観点から、どちらのほうがいいと言っている雑誌やウェブの記事を見かけますが、私の本音としては、実は「損か得かなんて、どちらでもいい」と思っています。大切なところにフォーカスすれば、「賃貸か、持ち家か」は、それほど重要なことではありません。

賃貸住宅に住むことは「他人が所有する家に自分と家族が住むこと」であり、持ち家に住むことは「自分が所有する家に自分と家族が住むこと」です。どちらが得か問題は「貸借対照表」(図表1)で考えると明白になります。「貸借対照表」はバランスシートとも呼ばれ、企業の財務状態を明らかにするために、資産・負債・純資産の状況を表した決算書のひとつのことです。

左側の「資産」は財産のことで、所有している現金、預金、不動産がこれに当たります。右上の「負債」は借金のことで、住宅ローンなどがこれに当たります。右下の「純資産」は「資産」から「負債」を引いた差額になります。

「純資産」が厚いと安心ですが、逆にマイナスになった場合は「債務超過」と言われる状態になり、企業であれば倒産をしてしまいます。個人になると、融資を受けることができなくなったり、債務整理をして、最悪の場合は自己破産が必要になる可能性も出てきます。

賃貸物件に住むメリット・デメリット

賃貸物件に住むということは、「他人の貸借対照表の資産に対して使用料を払う」ということになります。

そもそも、不動産賃貸業の仕組みについて、簡単にご説明しましょう。

不動産賃貸業は銀行から融資を受けて不動産を購入した人(いわゆる大家さん)が、それを他人に貸して、その家賃で銀行から借りたローンを返済していくというビジネスモデルです。大家さんは銀行への返済と同時に、大家さん自身への取り分をプラスした家賃を部屋を借りる人(借主)に請求します。家の修繕も借主からの家賃で賄われています。

目には見えませんが、大家さんが購入した不動産を維持するために必要な費用プラスαを借主から家賃として得ていることになります。自分で家を所有するよりも高い支出を負担することになることが、賃貸物件のデメリットと言えるでしょう。また、病気やケガなどで家賃が払えない事態になった際は、退去しなければなりません。

一方、賃貸物件のメリットとしては、借主は自分好みの立地や築年数や間取り、納得できる月々の家賃を自分で選べるということです。家賃を払い続けることさえできれば、住み続けることができます。もちろん、嫌になればいつでも出ていき、違う賃貸物件を借りればいいだけのことです。所有することの責任から自由だということがメリットに当たるでしょう

持ち家に住むメリット・デメリット

持ち家に住むということは、自分の貸借対照表を持つということです。「負債(=住宅ローン)」を自分で銀行に返済していきます。

それは、自分が大家さんになることではありません。大家さんは銀行への返済プラスαを借主から家賃として請求していますが、住宅ローンの支払いは、家賃ではなく自分の収入から支払うものです。

たとえ、この貸借対照表が債務超過になったとしても、毎月の住宅ローンを払える収入さえあれば、そのまま住み続けることができます。企業のように倒産することはありませんので、ご安心ください

貸借対照表の意味が出てくるのは、住むことを前提にしていない状況になったときです。今住んでいる家を売って、新しい家に住み替えをするときや、住宅ローンの返済ができなくなったため、家を手放すときになります。

メリットとしては、賃貸物件に住むより安い支出で済むことです。賃貸物件は銀行への返済プラスαを大家さんに支払わねばなりませんが、持ち家なら純粋に銀行への返済だけでいいからです。

デメリットとしては、住宅ローンの債務を負い、不動産所有にともなう責任を負うことです。何らかの理由で購入した家が嫌になったとしても、簡単にその家から離れることはできません。

結局どちらが得?という考えはナンセンス

住宅ローンで家を購入することの定義を聞かれたとき、私は「35年ローンならば、420回、銀行に決まった金額を払うこと」と答えるようにしています。もちろん、これが正確ではないことは十分承知のうえですが、誰にでも当てはまる本質と言えます。

毎月決まった日までに、トータル420回もお金を振り込むと考えると、気の遠くなるような話です。要は、住宅ローンで家を購入するということは、自分と家族の人生と生活を守るための「貯金」という資産と、その源泉になる「収入」に対して、妥協のない意思決定が求められるということです。

仕事をして収入が得られる現役世代だけでなく、リタイア後も生きていく限りはどこかに住まないといけません。住宅ローンという420回のミッションをしっかりと達成し、老後も生活し続けられるよう、妥協のない資金計画を練らねばなりません。建物の老化に伴う修繕やリフォームなどが必要になる可能性も高いですから。

もちろん賃貸物件に住む際にも、家賃を払い続けなければなりません。持ち家であろうが賃貸物件であろうが、将来にわたり、お金は必要だということです。つまり、「賃貸が得? 持ち家が得?」という損得勘定で考えることはナンセンスなのです。本当に大切なことにフォーカスすれば、どちらが得かという問いは、それほど重要ではないのです。

千日 太郎

オフィス千日(同)代表社員

公認会計士

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