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私、年収400万円なんですけど…“税務調査”が、30代・庶民のもとへやってきた理由。下された追徴課税に「血も涙もない」【税理士が解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年9月10日 10時45分

私、年収400万円なんですけど…“税務調査”が、30代・庶民のもとへやってきた理由。下された追徴課税に「血も涙もない」【税理士が解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

富裕層のもとへやってくるイメージの強い「税務調査」。しかし意外にも、収入が高くない人のもとへ税務調査が入るケースも少なくなく……。本記事では、Aさんの事例とともに税理士の鄭英哲氏が税務調査の実態について解説します。

経営規模が小さくても税務調査は入る

筆者はもともと消費者金融に勤めていました。現在は公認会計士・税理士・証券アナリスト・宅建士・ファイナンシャルプランナーとして活動しています。ここでは、税理士をしていたら避けては通れない税務調査についてお話します。これまでに法人・個人併せて、20回ほど担当した税務調査の経験のなかで、特に記憶に残っている実例を紹介しようと思います。

スタートアップから5年のアパレル仕入販売業者

筆者の顧客のなかでも税務調査が入るのは法人が多いところ、今回は個人事業主であるアパレル仕入販売業者であるAさん(30代・女性)に入りました。

事業内容は、プロ向けの洋服の仕入サイトから売れそうな洋服を仕入れて、きれいに撮影したあとメルカリなどで販売するというもの。儲けはあるのかなと思いましたが、それなりに利益は出ているとのこと。

個人事業主は言葉のとおり事業主が「個人」であり、経営規模も相対的に小さいことが多いため、税務調査が入る可能性は法人と比べると相対的に低いです。

とはいえ、税金を払う主体である以上、税務調査が入らないという確証はありません。1人で事業を行っている事業主さんはご参考になさってください。

帳簿を付けていないと…

「私、年収でいうとせいぜい400万円ほどしか稼いでいないんですけど……」Aさんははじめ、そのように筆者のもとへ相談に来ました。詳しく話を聞いていくと、帳簿が準備されていないとのこと。

当然ながら、非常にまずいですね。

青色控除適用の条件

個人が「開業」する場合、どこにどんな書類を提出するのでしょうか。

法人の場合は司法書士に「会社設立の登記」を依頼し、登記完了後、税務署に「法人設立届出書」とついでに「青色申告承認申請書」を提出するのが一般的です。一方、個人事業主の開業は、開業の「登記」というものがありません。

そのため、個人事業主の場合は「個人事業の開業届出」と「青色申告承認申請書」を税務署に郵送などで提出すれば終わりです。ちなみに、個人の場合、「青色申告承認申請書」を税務署に提出すれば、確定申告時に「65万円」が経費のように控除できるという特典(青色控除)があります。

一方で「法人」の場合は、このような控除はありません。ただ、この「青色控除」はただ単に「青色申告承認申請書」を提出すれば適用されるわけではありません。適用の条件は、

青色申告者は、原則として正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)により記帳を行うこととされています。(国税庁HPより)」とされています。続けて、「複式簿記による記帳に当たっては、市販の会計ソフトを利用することで、簡単にかつ負担なく記帳をすることができます。

と国税庁のHPに記載があります。

市販の会計ソフトがマストではありませんが、市販の会計ソフトに記帳しておけば「青色控除」の条件は満たすという意味です。ただ、Aさんのように1人で動いている個人事業主さんの場合、会計入力もしていないことも多く、あるのは大量の領収書のみというケースも多いです。

もちろん会計ソフトの入力は税理士がやれば早いのですが、最近はコストカットのために事業主さんが入力します!というパターンも多いのです。

とはいえ、確定申告の申告期限である3月15日ギリギリに「そろそろやばい!」と思って税理士に依頼してくる事業主さんも多いのです。筆者も仕事上、帳簿は後付けで準備してもらうようにして、とりあえずの確定申告の代行をします。

確定申告を何年かやったのちに税務調査が入る段階でわかったことは、帳簿が準備されていなかったということ。もちろん、税務調査対象期間である「3年分」の青色控除は全部否認。

結果として、65万円×3年=195万円×所得税率・住民税率が追徴課税になりました。Aさんは、「私みたいな収入の人からではなく、もっとたくさん稼いでいる人のところへ行けばいいのに。税務署は血も涙もない」とひどく落胆した様子でした。

自宅兼仕事場は家賃を経費にできるか?

Aさんのように、税務調査が入ると、いとも簡単に青色控除が否認されることになります。

ほかにも、個人事業主の場合、仕事場を兼ねた自宅の家賃を経費にできるか、といった疑問をよく相談されるので、ここで触れて起きます。

家賃は毎月かかるものですし、それなりに金額も高いので、できるものなら経費計上したいですよね。自宅を仕事場にしているため、個人が支払った家賃の一部は経費にしてもいいという言い分も一理あると思います。自宅のリビングでも作業をすることもあるでしょうし、自分の部屋など至る所に資料も置いてあるし、自分専用のデスクもある。そうであれば、50%くらいは経費にできるのではないかという考え方もあるでしょう。

結論、家賃の50%を計上しても、全額否認される可能性が高いと思ってください。これは、税務調査においての話です。家全体を仕事用として借りているのなら、100%経費計上はOK。もはや自宅でないパターンです。

「自宅兼」という場合、いくら仕事場として使っていても0%にしたいところ。

一方で、そのようななかでも認められるケースも。しかし、せいぜい20%程度。これを聞く限り、自宅兼なら家賃の経費割合は0%。仕事場として利用する程度によって最大20%まで認められる、もしくは税理士として20%までなら税務署と戦えるとも考えられます。

そのため、税務調査が入った際に個別で検討されると思われますが、家賃を経費計上したとしても20%程度にとどめておくのがいいでしょう。

今回は、会計ソフトでしっかり帳簿を作成しないと「青色控除」が否認される点と、自宅の家賃の経費割合については厳格に判断される点についてお話しました。これらについて、該当される個人事業主さんはぜひご参考になさってください。

鄭英哲

株式会社アートリエールコンサルティング

税理士/公認会計士/証券アナリスト/CFP/宅地建物取引士

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