1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

誰かいい人いませんか…人手不足に悩む〈解体業・30代社長〉有望な応募者に歓喜も「不採用を決断した」納得の理由

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年9月8日 7時15分

誰かいい人いませんか…人手不足に悩む〈解体業・30代社長〉有望な応募者に歓喜も「不採用を決断した」納得の理由

多くの日本の企業が直面している「人材確保」の問題。なかでも、大・中企業が元請け会社となり現場で働くのは曾孫請けであったり、複数の派遣会社を介して作業員と契約を結んだりすることも日常茶飯事である「解体業など現場仕事」では、さまざまな弊害も生まれています。今回、人材確保に奔走する、ある解体業経営者が経験した苦労についてみていきます。※本記事で紹介している事例は、事案特定を防ぐため設定等を変えています。

何でもありは通用しない…人材確保に苦戦する「現場仕事」

人手不足が叫ばれている今、大手でなく中小、あるいは小規模事業者やいわゆる零細企業であれば、人員確保に非常に苦労していることは想像に難くありません。しかも、ブルーカラーのなかでも特に若者に敬遠されがちなのが、キツイ、汚い(汚れる)、臭い、危険な仕事である解体業など、現場仕事がその代表です。

この傾向は今に始まったことではなく、昭和の時代から、現場の日雇い仕事や下請けには、特殊事情の若者や中高年者は少なからずいて、そういった社会に居場所のない人のセーフティネット的な役割を果たしてきました。それはそれで社会的な意義がある素晴らしいことなのですが、そういった訳ありな人や荒っぽい気風が、応募者を限定してしまう一因になった点も否めません。

そんななか、急速に進む少子高齢化。それだけでも苦しいのですが、さらに時代の流れでコンプライアンスの厳格化に伴い元請け企業や社会から、従業員のバックグラウンドについても「何でもあり」は許されなくなっています。一方で、最近は解体現場には、外国人労働者が多く見られるようになりました。作業員が出稼ぎ外国人労働者というだけでなく、下請け会社自体が外国人によって経営されているということも特に関東地方では珍しくなくなりました。

意気のいい若者を雇いたい。だが、問題行動やトラブルを未然に防ぐためにも、採用者の質を担保したい。企業の採用・雇用責任、あるいは請負契約の発注・受注責任が重視される今日、人手不足や移民の問題は諸刃の剣となり、中小企業は難しい舵取りを求められています。

解体業経営者…コンプライアンス厳格化と人手不足の板挟み

記録的な猛暑のなか、タオルで汗を拭きながら現れたK氏は体も声も大きく、仲間内でまさに頼れるアニキ的存在であろうことが伝わってきます。そんなK氏が中学を卒業し解体業や建築業に従事してから20年以上経ちます。物おじしない性格で腕のいいK氏は20歳になるかならないかでリーダーシップを発揮するようになり、今では小さいながらも自分自身の解体業会社を経営しています。

ところがそんなK氏も最近は悩みが尽きません。職人の高齢化と請負仕事の低賃金化。人手不足や資材不足と納期の短さ。自分たちの時代とは上下関係や仕事についての価値観がまったく異なるZ世代。コンプライアンス厳格化と人手不足。そしてそこに追い打ちをかけるのが、昔ながらのこの業界の処世術では通用しない反社や半グレの介入です。

上場大手から仕事を請け負うときに、コンプライアンスについて念を押されることが増えました。コンプライアンスが重要であることはK氏も異論はないのですが、机上の論理と現場の状況は必ずしも一致しない、そんなことをいっていたら仕事が進まないという思いもあります。しかしながら昨今は、元請けや顧客がリスクを避けるために下請けや請負会社にキツキツのコンプライアンスを課してくることは少なくありません。一方、コストパフォーマンス重視が進み、とにかく安く早くを求められ相見積もりを取られることが基本となっています。こうなると、その矛盾や無理の皺寄せは請け負った自分たちに来てしまいます。

そんな状態では、経験と技術のある経験者を採用できるかどうかが非常に重要となります。K氏は絶えず、自社の職人や知人に「いい人がいたら紹介してほしい」と声をかけていました。

キャリアは申し分なし!一応、バックグラウンド調査をすると

人材確保に奔走するK氏。すると今冬にこんな応募が。

一緒に仕事をしたことがある人からK氏の名前を聞いたといって応募してきたF氏は30代。高校中退してから、一時期体を壊していたとのことで数年のブランクはありますが、経験も腕も十分です。腕に刺青はありますが、それはこの業界ではそんなに珍しいことではありません。面接したところ人柄もよさそうで、ちょうど複数の案件を抱えていたK氏としては、そのうちの一つのメインメンバーとして、そして末はプロジェクトリーダーとしてF氏に活躍してもらいたいと考えたのです。

以前ならそのまま採用となったのですが、たまたまその案件が官公庁も絡む高いセキュリティを要するものであったことから、K氏はF氏について採用時バックグラウンド調査を行うことにしました。その内容は、反社チェック、犯罪歴、金融ブラックチェック、そして以前の職場にF氏の仕事ぶりを確認するリファレンスチェック、SNSチェックです。

調査結果を手にしたK氏は、思わずため息をつきました。F氏は職人としての腕には定評があったものの、過去に指定暴力団に属しており、仕事を離れていた数年間は、体調不良でのブランクではなく、執行猶予がつかない重犯罪での服役期間だったのです。また、いまだに反社関係者との繋がりも切れていないことも明らかになりました。これでは今回の案件に携わらせるわけにはいきません。

F氏の採用を見送ったK氏ですが、その後も、面接に来た若者が関東でも有名な半グレのメンバーと非常に親しかったり、若手作業員1名が他の作業員と喧嘩になった際に、「俺の兄は暴力団員だ」などと契約元から派遣されている現場監督の前で口走り大問題になったりするなど、この問題に絶えず頭を悩まされています。いっそ、もう反社でも採用してしまおうかという考えがチラッとよぎることもあるそうですが、同業の現場で違法薬物が蔓延し、その出所がやはり反社絡みの作業員だったという話を聞くと、今後も会社を発展させ、ともに頑張ってきた仲間や地元に貢献したいK氏としては、みすみす毒を飲むような行為は避けたいのです。

人手不足が深刻ななか、K氏がつぶやいたように、いっそコンプライアンスを無視したい衝動に駆られる経営者や採用担当者もいるでしょう。しかしながら、万が一、情報漏洩、事故、顧客の損失、炎上などの問題が起きたらどうなるか。採用・雇用・監督責任は誰が負うのか。賠償額はどれくらいになるのか。それを考えたとき、あまりにもリスクが高く、すでにギリギリの線で頑張っている中小企業が持ち堪えるのは困難かもしれません。そのための保険として、少なくとも明らかに不安が残る人物の採用を避けることは、実は中小企業にこそ必須だと考えられます。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください