時価8,000万円の“ワケあり”一等地を相続した41歳・証券マン、格安で土地売却も「やっぱり納得いかない!」→税理士に相談した結果…相続税1,000万円が返ってきた理由【税理士の助言】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年9月22日 11時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
亡き父から土地を相続した41歳のAさん。時価8,000万円の一等地ですが、“ワケあり”のためなかなか売れず……格安で売却することに。格安でしか売れない土地に高い相続税を支払うことが納得できないAさんは、税理士に相談した結果、1,000万円の「相続税還付」を勝ち取ることができたのでした。いったいどうしてなのでしょうか。多賀谷会計事務所の宮路幸人税理士が、事例をもとに解説します。
“ワケあり一等地”を格安で売却…納得のいかないAさん
都内の証券会社で働くAさん(41歳)は、先日父親を亡くしました。母親は数年前に逝去しており、1人っ子のAさんがすべてを相続することになります。
相続した土地の時価はおよそ8,000万円です。しかしAさんは最近マイホームを購入したばかり。加えて「まとまった相続税がかかるし、固定資産税もばかにならない」と知ったAさんは、早急に手放したいと考えました。
土地は都市部へのアクセスも良好な一等地であり、早々に売れるだろうと考えていたAさんですが、大きな誤算が生じます。それは、相続した土地が道路に面していない「無道路地」となっていることでした。無道路地のため既存建物の建て替えができないことから、希望価格では一向に買い手が現れません。
売却を依頼した不動産業者には何度も「その希望額では難しい」と言われていたものの、楽観的に考えていたAさんは大きなショックを受けました。しかし、納税は待ってくれません。仕方がないので、希望額よりも安い7,500万円で売却することにしました。
しかし、Aさんはやはり納得いきません。「相続税評価額は8,000万円だったし、1億円ぐらいで売却できると思ったのに……これじゃあ損じゃないか! 俺は損が一番嫌いなんだ!」
そこで、Aさんは知り合いの税理士である筆者のもとを訪ねました。
土地を再評価したところ、相続税評価額は“4割減”に
「相続税評価額って普通相場よりも低めに見積もられますよね? 私の土地はその評価額よりも安くしか売れなかったんですよ。これって、相続税評価額がおかしいんじゃないですか? ということは、相続税も払いすぎってことで戻ってきませんかね?」Aさんは語気を荒らげます。
筆者が冷静に話を聞くと、相続税の申告は「税理士費用がもったいない」と自ら相続税の本を購入して行ったとのこと。そこで、問題となっている土地について専門家である筆者が改めて調べてみると、相続税評価額を下げられる可能性が浮上しました。
後日、再度土地の形状等を再評価したところ、相続税評価額は約4割減の5,000万円に。差額3,000万円分についての相続税1,000万円が還付される結果となりました。「おぉ……まさか1,000万円も戻ってくるなんて。諦めずに言ってみるもんですね」と、大満足のAさんです。
相続税評価額が「減額」となった2つの理由
Aさんの土地評価額が減額となった理由は、大きく分けて次の2つです。
1.「無道路地」に該当した
先述のように、Aさんが相続した土地は周辺が道路に接していない「無道路地」です。これがなかなか売却できない原因にもなっていたのですが、無道路地に該当すると、相続税評価額は最大4割減額となります。
2.「地積規模の大きな宅地の評価」に該当した
「地積規模の大きな宅地の評価」とは、平成30年以降から適用されることとなった土地評価方法です。
対象の土地が三大都市圏(首都圏・近畿圏・中部圏)にあれば500m2以上、3大都市圏以外にあれば1,000m2以上と広い土地であり、かつ周りに戸建て分譲住宅が多いなどいくつかの条件を満たせば、相続税の評価額を下げることができます。
Aさんが相続した土地は首都圏にあり、条件を満たしていることから、地積規模の大きな宅地の評価が適用されます。
この2つに該当したことから、当初の相続税評価額から約4割ほど評価額が下がり、相続税の還付を受けられることになったのです。
無知ゆえに納めすぎているかも…税務署は“不親切”?
今回のAさんのように、相続税や贈与税を“納めすぎている”ケースは意外と少なくありません。日本は「申告納税制度」を採用しており、原則自分の税金は自分で計算して納めることとなっていることから、“納めなさすぎ”や“納めすぎ”が発生するのです。
過少に申告した場合は税務署から問い合わせを受けたり、税務調査を受け厳しいペナルティが課されたりする一方で、税金を過剰に納めてしまったとしても税務署は親切に「多めに納めていますのでお返ししますよ」とは言ってくれません。
納税者側から、「更正の請求」という手続きを行い「税金を納めすぎていたので、納めすぎ返してください!」と請求する必要があります。
しかし逆にいえば、こちらでしっかりと動いて税務署が認めれば、過剰に納めた分の税金は戻ってきます。
税理士でも把握困難…土地の評価は難しい
相続したもののなかでも、土地は特に評価が難しいといわれています。今回は土地の評価減で相続税の還付を受けることができましたが、土地を評価する方法はさまざまです。
不動産は「一物五価」といわれ、市場で取引される「実勢価格」や固定資産の評価のための「固定資産税評価額」、土地鑑定委員会が公表する「公示価格」、不動産鑑定士が判定する「鑑定評価額」、国税庁が相続税と贈与税の計算のために公表する「相続税評価額」と価格を示す指標がいくつも存在します。
さらに、相続税の土地評価の方法も「路線価方式」と「倍率方式」があります。おおざっぱにいうと、「路線価方式」は主に市街地の土地評価に使われ、「倍率方式」はそれ以外の土地の評価に使われることが多いです。
また、相続税は他の法律や時価とは別に、相続税法で土地の評価方法を定めています。このため土地に関する相続税の通達や質疑応答集などは膨大な量存在します。
このため土地評価といっても、マニアックすぎて、実のところ税理士が土地の評価をすべて把握しているというわけでもありません。
不動産の評価はそれぞれの状況に応じて細かく規定されていますが、その規定は複雑多岐にわたりますので、実際の財産評価において適正に評価されていないことが起こりえます。
今回のケースのように、相続を受けた土地のなかには、土地の評価はその形状や場所によって相続税の評価額を下げられる可能性があります。
所得税の確定申告などは自分で申告する人もいるでしょうが、不動産の相続があった場合、評価を誤ると不必要に多額の納税を行ってしまう事態もありえるため、まずは専門家に相談することをおすすめします。
宮路 幸人
多賀谷会計事務所
税理士/CFP
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