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長年疎遠でも「元配偶者との子供」の相続権は消えない…「遺産を渡したくない」ときの有効な対策と遺言書に潜む“意外な落とし穴”

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年9月9日 10時45分

長年疎遠でも「元配偶者との子供」の相続権は消えない…「遺産を渡したくない」ときの有効な対策と遺言書に潜む“意外な落とし穴”

(※写真はイメージです/PIXTA)

離婚後、元配偶者は相続権が失われますが、子供は引き続き親の遺産を相続する権利を持ちます。元配偶者が再婚した場合や子供の有無により、相続の状況が複雑化するのはよくあることです。本稿では、離婚後の相続権の扱いについて、子供や元配偶者が生存・死亡している場合の変化や、元配偶者の子供に財産を相続させる・させないための方法を詳しく解説します。

離婚後の相続権について

元夫(妻)の財産は、誰が相続できるのでしょうか。

離婚後の元配偶者の相続権

離婚後の夫婦は法律上、まったくの他人となります。そのため離婚が成立した時点で、元配偶者は自動的に相続の権利を失います。

離婚した相手(元夫・元妻)が亡くなっても、元配偶者は財産を相続することができません。

離婚後の子供の相続権

一方で、夫婦の間に生まれた子供は、離婚後も両親の遺産を相続する権利が維持されます。

子供の親権や監護権がどちらにあるかは関係ありません。たとえ離婚後、長期間に渡って親子の交流がなかったとしても、子供は離婚した親の財産を相続することができます。

元配偶者が死亡した場合の相続ケース

それでは元配偶者が死亡した場合、具体的にどのように遺産相続が行われるのでしょうか。様々なケースを想定し、解説していきます。

離婚前に子供がいた場合

亡くなった元配偶者との間に子供がいた場合、子供だけが相続人となります。

元配偶者との間に産まれた子供が、すでに死亡している場合は?

元配偶者が亡くなるよりも前に、元配偶者との間に産まれた子供が亡くなっている場合は、その子供の子女(元配偶者の孫)が遺産を相続します。

本来相続人となるべき人が死亡により相続できない場合には、その人の子供が代わりに遺産を相続することができます。これを代襲相続といいます。また、本来相続人となるべき人が欠格、排除された場合にも、その人の子供が代わりに遺産を相続します。

欠格とは、遺産を不正に手に入れるための特定の行動を起こした相続人が、相続の権利を失うことを指します。排除とは、被相続人に対して虐待や重大な侮辱をしたりした場合に、被相続人の意思によって相続人の相続権を奪うことができる制度のことです。

ちなみに相続放棄の場合は、代襲相続が適用されないので、注意が必要です。

元配偶者と再婚相手との間に子供がいない場合

元配偶者が再婚しているケースでは、相続関係がもう少し複雑になります。元配偶者と自身の間に子供がおり、かつ元配偶者と再婚相手の間に子供がいない場合、元配偶者との間の子供に加えて、再婚相手も相続人になります。

自身と元配偶者との間にも子供がおらず、再婚相手との間にも子供がいない場合は、再婚相手、元配偶者の両親、または兄弟姉妹が相続人になります。

元配偶者と再婚相手との間に子供がいる場合

元配偶者と自身の間に子供がおり、かつ再婚相手との間にも子供がいる場合には、再婚相手、自身との間の子供、さらに再婚相手との間の子供が相続人になります。

再婚相手に連れ子がいる場合

元配偶者と自身の間に子供がおり、かつ元配偶者の再婚相手に連れ子がいる場合には、再婚相手、自身との間の子供が相続人になります。

再婚相手の連れ子は、原則相続人になれません。ただし、元配偶者と連れ子が養子縁組をしていれば相続人になります。

元配偶者の死亡後に、その親が死亡した場合

祖父母の存命中に、親が死亡した場合、子供は代襲相続によって祖父母の相続権を得ます。この原則は、離婚後も変わりません。

代襲相続とは、前述の通り、本来相続人となるべき人が死亡などにより相続できない場合に、その人の子供が代わりに遺産を相続すること。したがって元配偶者との間に産まれた子供は、元配偶者の死亡後に亡くなった祖父母の遺産を元配偶者と同じ割合で相続できます。

連絡がとれない相続人がいる場合

離婚後、親と離れて暮らす子供は、自身が相続人であったとしても、親が死亡した事実に気づかないことが多々あります。すべての相続人が参加しないと遺産分割協議ができないため、被相続人の再婚相手やその子供は、まずはすべての相続人に被相続人が死亡した事実を知らせる必要があります。

元配偶者との間の子供に連絡を取る方法

まずは被相続人の携帯電話や手帳、郵便物などを調べ、元配偶者との間の子供の連絡先が記されていないか確認してみましょう。

それでもわからない場合には、戸籍の附表で住所を調べることができます。戸籍の附表とは、新たな戸籍を作成したとき(本籍を定めたとき)以降の住民票の移り変わりを記録した書類のことです。

被相続人の戸籍には元配偶者との間の子供の氏名と本籍地が記載されています。もし元配偶者との間の子供が結婚などで転籍していた場合でも、転籍した旨と新たな本籍地が被相続人の戸籍に記載されるので、そこから子供の本籍地をたどって、子供の戸籍の附表を確認できます。

戸籍簿とセットで本籍地の市区町村が管理しているので、相続の手続きに必要な旨を伝え、直接または郵送で発行してもらいましょう。子供の住所がわかったら、手紙を出すなど連絡をとってみてください。

不在者財産管理人を選任する場合

上記の方法でも連絡が取れない場合には、家庭裁判所に申し出て「不在者財産管理人」を選任したうえで相続手続きをします。不在者管理人とは、行方不明の人や連絡が取れない人の財産を管理する人のことをいいます。不在者管理人が子供の代わりに遺産分割協議に加われば、遺産分割が可能になります。

また、不在者管理人を遺産分割協議に参加させる場合には、「権限外行為許可申立」という手続きをする必要があります。家庭裁判所に申請し、一定の要件を満たせば許可がなされます。

離婚後の相続対策

親同士が離婚しても、子供は相続人として両方の親の遺産を相続することができます。子供に相続させたい場合とそうでない場合に分けて、相続対策について解説します。

子供に相続させたい場合

離婚をしても子供には両親の財産を相続する権利が残ります。そのため、離婚した両親は、何もしなくても離婚前に生まれた子供に自分の財産を相続させることができます。また、その権利や法定相続分は、再婚相手との間の子供と同等です。

子供に相続させたくない場合の方法

離婚前に産まれた子供に自分の財産を相続させたくない場合、遺言書を作成して取り分を減らしたり、相続人の排除を請求するといった対策が考えられます。

遺言書を書いておく

何もしなければ、離婚前に生まれた子供は、再婚相手との子供と同じ割合で財産を相続することになります。離婚前に生まれた子供の取り分を減らしたい場合には、遺言書に、「遺産は再婚相手と再婚後に生まれた子供に多く相続させる」という旨を書いておくことによって、元配偶者に引き取られた子供の遺産を減らすことができます。

離婚前に生まれた子供に、1円も財産を残したくないという場合もあるかもしれませんが、その旨を遺言書に記載するのはおすすめできません。

相続人には遺産を受け取れる最低限の割合である「遺留分」というものがあります。遺言書に遺留分を侵害するような記載があった場合には、遺留分を侵害した相続人が、「遺留分侵害請求」によって相続財産を減らされてしまいます。

たとえ元配偶者との間の子供に財産を残したくないと思っても、遺留分に相当する遺産を与えるようにしておいた方が、のちのトラブルを避けることができるので、おすすめです。

相続廃除の選択肢

「相続人の排除請求」を使えば、特定の要件を満たす相続人の相続権をはく奪できます。相続人の排除請求とは、相続人になる予定の人が被相続人に対して虐待や過度の侮辱を行ったり、重大な犯罪・非行をしたりした場合などに、その人を相続人から外す手続きのことです。被相続人が家庭裁判所に申立て手続きをするか、遺言に記載することで行います。

ただ、家庭裁判所に排除事由があると認められなければ相続排除はできないので、注意が必要です。

遺留分侵害額請求とは?

もしも他の人が相続財産を多くもらっていて、自分の財産が少ない場合には、「遺留分侵害請求」を検討してみてください。

「遺留分侵害請求」とは、相続人の最低限度の取り分である「遺留分」を守るために行う請求です。旧民法では遺留分減殺請求とよばれていました。遺留分侵害請求は、遺留分の侵害を知った日から1年以内にしなければなりません。また、相続開始から10年を経過すると、遺留分侵害請求ができなくなります。

遺留分侵害額請求ができる人

遺留分侵害請求ができるのは、親、配偶者、子供といった法定相続人です。もちろん、元配偶者との間の子供にも認められます。

ただし、兄弟姉妹は法定相続人といえども遺留分侵害請求ができないので、注意が必要です。

遺留分の計算方法

遺留分は、「遺留分割合」を使って計算します。

民法には、法定相続人の遺留分割合が以下のように定められています。

具体的な計算式は以下の通りです。

・遺留分額=基礎財産×遺留分割合

・遺留分侵害額=遺留分額ー実際に取得した基礎財産

※基礎財産:相続財産、遺贈された財産、相続開始前10年間(相続人以外の人が受けた場合は1年間)に生前贈与された財産の総額から、相続債務を控除したもの。

遺留分侵害額請求の手続き方法

遺留分侵害請求の手続きの流れは、以下の通りです。

①遺留分侵害額の計算

上記の計算式で、遺留分侵害額を計算します。

②請求の相手方の特定

各自の遺留分を上回る基礎財産を取得した、遺留分請求侵害請求の相手方を特定します。

③遺留分侵害請求について相手方と話し合う

まずは遺留分を侵害している相手方と話し合いの場を設けましょう。相手が納得して遺留分の返還に応じる場合には、「遺留分侵害額に関する合意書」を作成します。

④内容証明で請求する

遺留分侵害請求が話し合いで解決しない場合、内容証明郵便に遺留分侵害請求の内容を記載して請求します。内容証明郵便であれば、いつ、誰から誰に、どんな文章を送ったのかを証明できるので、請求したという証拠を残すために有用です。

⑤調停による遺留分侵害額の請求

内容証明郵便を送っても相手方が応じない場合には、遺留分侵害額の請求調停を相手方の住所地を管轄する家庭裁判所へ申し立てましょう。

調停では、調停委員という裁判所のスタッフを間に挟んで話合いを行います。調停委員のアドバイスを受けることで、相手方が遺留分侵害請求に応じる可能性が高くなります。

⑥訴訟による遺留分侵害額の請求

調停でも話し合いがまとまらない場合には、請求者が原告となって被相続人の最後の住所地の地方裁判所(訴額が140万円を超える場合)、または簡易裁判所(訴額が140万円以下の場合)に遺留分侵害額請求訴訟を提起します。最終的に判決によって遺留分侵害請求が認められるか、認められるとしたらいくらなのかが決定します。

離婚した夫婦の間に“未成年の子供がいる”場合の対策

離婚した夫婦の一方が死亡した場合に備えて、遺産相続だけではなく、親権者をどうするのかも考えておくことをおすすめします。

原則として、離婚した夫婦の間に未成年の子供がいる場合には、父母のどちらか一方が親権者になります。親権者が亡くなった場合には、自動的に元の配偶者が親権者になるわけではないので、家庭裁判所へ親権者変更の申し立てが必要です。

元の配偶者に親権者になってほしくない場合には、子供を引き取った人が遺言書で「未成年後見人」を指定します。未成年後見人とは、親権者が亡くなった場合など、未成年者に対し親権を持つ人がいない場合に未成年者の代理人となり、未成年者の環監護養育、財産管理、契約等の法律行為などを行う人のことをいいます。

実際には、自分の両親(子供の祖父母)などを未成年後見人に指定することが多いといわれています。遺言書で未成年後見人を指定するときは、未成年後見人になってほしい人にあらかじめ相談しておくようにしましょう。

長年会っていない親が亡くなった場合の遺産相続対策

自身の親が離婚している場合、一方の親と長年連絡を取っていない場合も少なくないでしょう。そうした場合でも子供は相続人となるので、他の相続人と一緒に相続の手続きをしなければなりません。

一般的に他の相続人があなたの住所を調べて連絡をしてきたり、役所から連絡がきたりして、その死を知ることになります。その場合、下記のことを事前に考えておくと話し合いがスムーズに進むと思います。

財産及び負債目録の開示

親の財産を相続するか否かを検討するために、連絡してきた親族に対し、財産及び負債目録の開示を請求しましょう。そして、自分がいくら財産・負債を相続することになるのか、確認します。

相続放棄の検討

もし負債が多い場合や、長年会っていない親の財産を相続することに違和感を覚えるような場合には、「相続放棄」を検討します。

相続放棄とは、被相続人のプラスの財産・マイナスの財産を含んだすべての財産を相続する権利を放棄することです。相続放棄をする場合には、被相続人が亡くなったことを知ってから3ヵ月以内に家庭裁判所で手続きをする必要があるので、注意しましょう。

生前に遺言書を書いてトラブル回避

往々にして遺産相続にはトラブルがつきものです。特に、再婚相手やその子供が、元配偶者との間に子供がいることを知らなかった場合などには、被相続人の死後にトラブルに発展する可能性が高いです。

トラブルを避けるためには、生前に遺言書に「元配偶者との間に子供がいること」、「元配偶者との間には遺留分相当額の財産を与えること」を記載しておくことをおすすめします。遺言書とは別に、元配偶者との子供の連絡先をわかりやすいところにメモしておくことも忘れないようにしてください。

離婚後の相続は、相続関係が複雑になり、感情のもつれにも発展しやすいことから、様々な問題が発生する可能性が高いといわれています。離婚後の相続については、弁護士や税理士など、相続問題のプロに相談することをおすすめします。

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