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【米ドル円】東京海上アセットマネジメントが振り返る…9月第1週の「米国経済」の動き

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年9月8日 20時15分

【米ドル円】東京海上アセットマネジメントが振り返る…9月第1週の「米国経済」の動き

(画像はイメージです/PIXTA)

不安定ながらも円高傾向が続く値動きのなか、「円安トレンド」の転換が予感される現在、「米ドル円」に対する世の中の関心はかつてないほどに高まっています。そこで、来週の米ドル円相場の動向に影響を与えそうな、先週の米国経済の動きについて、東京海上アセットマネジメントが解説します。

個人消費に勢いも、貯蓄率は低下…消費の持続可能性に疑問符

⽶商務省が公表した2024年7⽉の個⼈⽀出(価格変動の影響を除いた実質ベース)は前⽉⽐+0.4%(6⽉︓同+0.3%)と、市場予想(同+0.3%)を上回りました(図表1)。

実質個⼈⽀出を四半期ベースでみると、2024年1~3⽉期の前期⽐+0.4%から4~6⽉期に同+0.7%へ加速し、7⽉は4~6⽉期(平均)を+0.8%上回る⽔準にあります。2024年⼊り後の個⼈消費の低調さは⼀時的なものにとどまり、⾜もとでは再び勢いを取り戻しています。

7⽉の実質可処分所得は、前⽉⽐+0.1%(6⽉︓同+0.1%)と⼩幅なプラスが続いています。四半期ベースでは、2024年1~3⽉期が前期⽐+0.3%、4~6⽉期が同+0.2%、7⽉の4~6⽉期対⽐が+0.3%と安定した伸びを⽰しているものの、実質個⼈⽀出の伸びを下回る状況が続いています。

可処分所得を上回るペースで消費を⾏った結果、7⽉の貯蓄率(貯蓄額÷可処分所得)は2.9%へ低下し、コロナ禍前の半分に満たない⽔準に低下しています(図表2)。

コロナ禍で積み上がった過剰貯蓄は、すでに取り崩されたとみられるものの、家計は貯蓄率の低下を許容してでも、⾼⽔準の消費を続けている状況にあります。

コロナ禍を経て、家計の貯蓄率に対する⽔準感が変わった可能性は否定できないものの、各種経済指標において、家計の消費者マインドが悪化している点や労働市場が減速している点などを踏まえると、消費の持続可能性に疑問を投げかける内容となっています。

住宅のインフレ率低下ペースも加速の可能性

消費を取り巻く環境を総合的に判断すれば、⽬先、個⼈消費は⼀定の減速局⾯を迎える可能性があります。2024年7⽉の⾷料品及びエネルギーを除いたコアPCE(個⼈消費⽀出) デフレーターは前年⽐+2.6% と、6⽉( 同+2.6%)から横ばいとなりました(図表3)。

内訳では、コア財(6⽉︓前年⽐▲0.9%→7⽉︓同▲0.5%)の下落幅が縮⼩したものの、コアサービス(6⽉︓前年⽐+3.8%→7⽉︓同+3.7%)は僅かながら伸びが鈍化しました。

コアサービスのうち、ウェイトの⾼い住宅サービス(住居家賃や帰属家賃)のインフレ率低下は依然として緩やかなものにとどまっているものの、新規契約物件の家賃を⽰すZillow家賃指数(前年⽐)は、コロナ禍前を下回る⽔準に低下していることから、住宅サービスのインフレ率低下ペースは、加速し始める可能性があります(図表4)。

物価の瞬間⾵速を⽰す前⽉⽐では、7⽉のコアPCEデフレーターは+0.16%(6⽉︓+0.16%)と、おおむね市場予想通りの結果となりました(図表5)。

FRBがインフレのモメンタムを測るうえで重視している3ヵ月前⽐年率値は+1.72%(6⽉︓+2.10%)と4ヵ月連続で伸びが減速したほか、6ヵ月前⽐年率値では+2.57%(6⽉︓+3.28%)と減速に転じており、物価⽬標である2%が視野に⼊りつつあります。

7⽉のコアPCEデフレーターは、引き続きインフレ圧⼒が和らいでいるとの⾒⽅を裏付けるものとなり、9⽉FOMCでの利下げ開始を正当化する結果といえます。もっとも、インフレ抑制に注⼒してきたFRBは、労働市場悪化のリスクも注視し始めていることから、インフレ動向がFRBの利下げ判断に及ぼす影響は⼤きくないと考えられます。

このため、市場の焦点である9⽉FOMCでの利下げ幅や、その後の利下げ時期については、8⽉の雇⽤統計(9/6公表)の結果に⼤きく左右されることになります。

米国労働市場…需要の減速が鮮明

⽶労働省が公表した2024年7⽉のJOLTS(雇⽤動態調査)によると、求⼈件数は767.3万件と市場予想(810.0万件)を⼤きく下回り、2021年1⽉以来、およそ3年半ぶりの低⽔準となりました(図表6)。

加えて、6⽉分が791.0万件と速報値の818.4万件から下⽅修正されるなど、労働需要の減速が鮮明となっています。

7⽉の求⼈件数を業種別にみると、物流・⼩売・卸売(前⽉差▲15.7万件)や医療・社会福祉(同▲18.7万件)が⼤幅に減少したほか、景気との連動性が⾼い建設業(同▲5.1万件)なども減少しました。

離職者数のデータをみても、労働市場の減速が⼀段と鮮明となっていることが確認できます。離職者のうち、⾃発的離職者数は7⽉に327.7万⼈と、6⽉(321.4万⼈)から+2.0%増加したものの、均してみれば減少傾向にあります(図表7)。

求⼈数が減少するなかで、労働者が雇⽤環境の悪化を意識して転職を躊躇している可能性があります。⼀⽅、7⽉の⾮⾃発的離職者数(レイオフ等)は、前⽉⽐+12.9%の176.2万⼈と6⽉(156.0万⼈)から急増しました。今後、企業が雇⽤を⼀段と削減するのか注⽬されます。

パウエルFRB議⻑が労働市場の需給の尺度として重要視する「失業者1⼈当たりの求⼈件数」は、2022年3⽉の2.03件をピークに低下傾向にあり、2024年7⽉は1.07件(6⽉︓1.16件)と、2021年5⽉以来の低⽔準となりました(図表8)。

8⽉22⽇〜24⽇に開催されたカンザスシティ連銀主催のジャクソンホール会議では、ブラウン⼤学のエガートン教授が寄稿した『2020年代の⾼インフレから洞察』のなかで、「失業者1⼈当たりの求⼈件数」に着⽬して、⾜もとの⽶国経済が⼈⼿不⾜から⼈⼿余剰に移りつつあることを指摘しました。

「失業者1⼈当たりの求⼈件数」が1を下回る(失業者数が求⼈件数を超える)と、インフレ率を引き下げるためのコスト、すなわち失業率が急上昇する確率が⾼まるとしています。

7⽉の雇⽤統計では、失業率が4.3%と4ヵ月連続で上昇し、サーム・ルールに抵触したことで、⽶国の景気後退への懸念が急浮上しました。上述のとおり、「失業者1⼈当たりの求⼈件数」の1割れが視野に⼊り、失業率の上昇に対する警戒感が着実に強まっているだけに、8⽉の雇⽤統計において失業率が⼀段と上昇するのか注⽬されます。

※ 失業率の過去12ヵ月の最低値に対して直近3ヵ月平均が0.5%上昇したときに景気後退が始まるとされる法則

8月の民間雇用者数も、3年7ヵ月ぶりの低水準

企業向け給与計算サービスのオートマチック・データ・プロセッシング(ADP)が公表した2024年8⽉の⺠間雇⽤者数は前⽉差+9.9万⼈(7⽉︓同+11.1万⼈)と市場予想の同+14.5万⼈を下回り、2021年1⽉以来、およそ3年7ヵ月ぶりの低⽔準となりました(図表9)。

四半期平均でみると、2023年10~12⽉期の前期差+12.4万⼈から2024年1~3⽉期が同+16.6万⼈、4~6⽉期が同+16.7万⼈と加速したあと、7~8⽉の4~6⽉対⽐は+10.5万⼈と⼤幅に増勢が鈍化しています。

ADP雇⽤統計の結果とは対照的に、6⽇に⽶労働省が公表する8⽉の雇⽤統計では、⾮農業部⾨雇⽤者数が前⽉差+16.5万⼈と、7⽉(同+11.4万⼈)から伸びが⾼まることが予想されています(図表10)。

⽶景気の後退への懸念が⾼まっているだけに、8⽉の雇⽤統計がそうした懸念を払しょくできるのか注⽬されます。

全⽶供給管理協会(ISM)が公表した、2024年8⽉のISM⾮製造業景況感指数は51.5と、7⽉及び市場予想(ともに51.4)を⼩幅ながら上回り、景気拡⼤・縮⼩の分かれ⽬である50(以下、中⽴⽔準)を2ヵ月連続で超えました(図表11)。

項⽬別では、新規受注指数が53.0(7⽉︓52.4)、企業活動指数が53.3(7⽉︓54.5)と中⽴⽔準を超え、サービス需要は依然底堅さを維持していることが⽰唆されました(図表12)。

7⽉に続き、8⽉もISM製造業景況感指数の低調さを背景とした、⽶景気の先⾏きに対する悲観的な⾒⽅を、ISM⾮製造業の堅調さが緩和する格好となりました。もっとも、ISMサーベイにおいても、労働市場の先⾏きに対する警戒感も強まっている状況が⾒て取れます。

製造業の雇⽤指数は、7⽉の43.4から8⽉に46.0へ上昇したものの、依然中⽴⽔準を下回っています。また、⾮製造業の雇⽤指数は6⽉の46.1から7⽉に51.1へ上昇し、中⽴⽔準を回復したものの、8⽉に50.2へ低下しており、均してみれば、労働市場は軟化⽅向に進んでいます。

現状では、労働市場の急速な悪化は回避されているものの、企業の雇⽤に対する⾒⽅が慎重化している点が、8⽉の雇⽤統計にどのように顕在化するか注⽬されます。

東京海上アセットマネジメント

※当レポートの閲覧に当たっては【ご留意事項】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『【米ドル円】東京海上アセットマネジメントが振り返る…9月第1週の「米国経済」の動き』を参照)。

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