年金なんて、さっさともらっておけば…年金月23万円・75歳の高齢男性、「年金を70歳まで繰下げたこと」をいまだに後悔する理由
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年9月9日 10時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
老後の生活のベースとなる公的年金。できるだけ多くもらえたら……とは誰もが願うものです。そこで注目されているのが、年金の受取り開始時期を遅らせるだけ年金が増額となる「繰下げ受給」。しかし、実際に増額となった年金を受け取っていても後悔するケースもあるようです。
年金の受け取り…20万人は「繰上げ」を選択、37万人が「繰下げ」を選択
年金の受け取りは原則65歳からですが、60~75歳の希望するタイミングで受取り開始できます。
60歳から64歳と早く受け取るのが「年金の繰上げ受給」、66~75歳と遅く受け取るのが「年金の繰下げ受給」といいます。繰上げ受給では1ヵ月早めるごとに0.4%ずつ受取額が減額され、最大24.0%減。つまり最大4分の3になるイメージ。一方、繰下げ受給では1ヵ月遅らせるごとに0.7%ずつ増額。最大84.0%増。つまり約2倍になるイメージです。
ちなみに昭和37年4月1日以前生まれの場合、年金繰上げによる減額率は0.5%で、最大30%の減額でした。減額幅が小さくなり、より選びやすくなったのです。
また昭和27年4月1日以前生まれでは、繰下げの上限年齢が70歳で増額率は最大で42%でした。つまり、より年金の受取りを遅らせることで、年金受取額を増やすことができるようになりました。
さらに、年金の繰上げでは老齢基礎年金と老齢厚生年金は一緒に繰上げなければなりませんが、年金の繰下げでは片方だけを繰下げるということも可能。つまり65歳からは老齢基礎年金だけを受取り開始とし、老齢厚生年金だけを繰下げるという選択ができます。
年金の繰上げを選ぶのも、年金の繰下げを選ぶのも、原則通り65歳から受け取るのもそれぞれの判断次第。厚生労働省『令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、老齢厚生年金受給者で年金の繰上げを選択した人は20万6,757人。これは対象2,804万5,102人の0.7%。5年前から全体の0.3%→0.4%→0.5%→0.6%と少しずつ、早めに受取り開始とする人が増えています。
一方で年金の繰下げ受給を選んだのは37万4,481人。これは全体の1.3%で、5年前から全体の0.7%→0.8%→1.0%→1.2%→1.3%と、少しずつ、遅めに受取り開始とする人も増えています。
年金「65歳で月16万円」→「70歳で月22.7」でも後悔
個人の都合に合わせて年金の受取り開始時期を選べるようになっていますが、年金が増額となる繰下げ受給のほうに関心を寄せる人のほうが多いようです。
山崎進さん(仮名・75歳)も年金の繰下げ受給を活用したひとり。昭和24年生まれの山崎さんの時代は、繰下げは70歳前。年金が1.5倍になるといううたい文句を聞いて、「そんなお得な制度があるなら、利用しない手はない」と考えたとか。
同い年の奥さんは65歳から年金の受取りを開始。その額、月12万円ほど。
――2人の子どもはそれぞれ家庭をもち、私たちはローンも払い終えていて、夫婦2人が暮らしていけばいいだけ。妻の年金だけでも十分暮らしていけると考え、投資するつもりで繰下げ受給を選んだんです。
山崎さん、65歳から年金の受取りを開始していれば月16万円ほど受け取れるはずでした。5年待てば月22.7万円に。投資に例えたら、確かに魅力的です。
こうして70歳まで繰下げをして年金の繰下げを開始。計算通り、月22.7万円を受け取り、これが生涯続きます。しかし75歳になった山崎さん、実際に繰下げ受給を選択した身として、「年金なんて、さっさともらったほうがいいよ」と吐き捨てるようにいいます。
――確かに、年金が1.5倍ほどになって喜んでいたさ。これでちょっとは贅沢ができるとね。でもすぐに病気しちゃってさ
70歳で大きな手術を行い、いまでも病院通いが続いています。年金が増額となった分、確かに安心感には繋がっているものの、健康なうちに年金を受け取り、好きなように使えば良かったと悔やんでいます。
――私も年金を受け取るようになったら、色々な所に旅行に行こうと妻と計画していました。それまでは我慢だと……ほんとう、妻にも申し訳なくて
ソニー生命保険株式会社が全国のシニア(50歳~79歳)の男女に対し行った『シニアの生活意識調査2024』によると、現在の楽しみで最も多かったのが「旅行」で45.3%。「テレビ/ドラマ」39.9%、「グルメ」28.1%、「映画」25.9%、「読書」22.3%と続きました。トップの旅行は、健康だからこそ楽しめるもの。そう考えると「年金なんて、さっさともらったほうがいいよ」といった山崎さんの気持ちもよくわかります。
ただ山崎さんのように健康を害した際に「年金が増えた分、安心できる。年金の繰下げを選んでよかった」と考える人もいるでしょう。結局は、いつから年金を受け取るのがいいのかは、人それぞれの考え方次第。どうすれば自分は後悔しないのか……よく考えることがポイントです。
[参考資料]
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