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家賃月5万円・築50年のビルで20年間「ゴルフ会員権売買」を行う借主、立退要請を断固拒否→訴訟へ…裁判所が命じた“妥当な”立退料【弁護士が判例解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年9月19日 11時15分

家賃月5万円・築50年のビルで20年間「ゴルフ会員権売買」を行う借主、立退要請を断固拒否→訴訟へ…裁判所が命じた“妥当な”立退料【弁護士が判例解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

「地震で大破するかもしれないビル」のオーナーは、耐震工事に多額の費用がかかるため建て替えを計画していました。しかし、ひとりの借主が立退きを拒否したため、ついに訴訟へ発展。その結果、裁判所は立退き料の支払いと引き換えに、賃借物件からの立退きを認めました。では、裁判所が算出した「妥当な立退料」はいくらだったのでしょうか。弁護士の北村亮典氏が、実際の判例をもとに解説します。

地震で大破の可能性がある築50年のビル、適切な「立退料」はいくら?

【建物オーナーからの相談】

築50年が経過した鉄筋コンクリート5階建てのビルを所有しています。かなり老朽化が進んでおり、耐震診断では震度5以上の地震が発生した場合、大破するかもしれないと言われています。

耐震工事をすると6,000万円近くの費用がかかるとのことでしたので、店子には立ち退いてもらい建て替えを計画しているのですが、1階にある貸事務所の店子1室だけが立退に応じてくれません。

弁護士からは裁判を起こして立ち退いてもらうしかないこと、ただし裁判所から立退料の支払いを命じられる可能性があると言われていますが、立退料がどの程度かかるかよくわかりません。

なお、立退きを拒否している店子は、20年ほど前に入居し、そこでゴルフ会員権売買を行っているようです。賃料は月5万円です。

借主が退去を拒否する場合、「正当事由」が必要

【弁護士の解説】

賃貸人として賃貸借契約を解約する場合には、老朽化を理由とした賃貸借契約の解約の申入れを行う必要があります。この解約の申入れを行うことにより、解約申入れ時から6ヵ月を経過すれば賃貸借契約は終了となります(借地借家法27条1項)。

しかし、賃貸人からのこの解約の申入れは、それをしただけでは当然に解約が認められるわけではなく、賃借人が解約を拒んだ場合には、解約の申入れに「正当事由」がなければ、法律上の効力が生じません。

この点は、借地借家法28条が

「建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない」

と規定しているとおりです。では、「正当事由」が認められる場合とは、どのような場合を言うのでしょうか。

「老朽化」だけでは正当事由にならない

本件のような建物の老朽化を解約の理由とする場合、老朽化だけでは正当事由は認められず、妥当な金額の「立退料」の提供が必要とされるケースが非常に多いです

本件の事例は、東京地方裁判所平成24年11月1日判決をモチーフにした事例です。裁判所は、建物の老朽化が相当進んでおり、解体の必要性が高いことは認めつつも、長年賃借物件で事業を営んできた賃借人の利益も考慮し、立退き料の支払いと引き換えに、賃借物件からの立退きを認めました。

では、本件において裁判所は立退料をどのように算定したのでしょうか。

この裁判例においては、立退料について、不動産鑑定士による鑑定が行われています。その鑑定では、以下のように述べて、主に借家権価格を中心として立退き料を算定しています

また、賃借人が貸室で事業を営んでいたことから、賃借人側は営業補償を加えるよう求めましたが、本件では、営業損失が発生する証拠はないとしてこれを認めませんでした。

賃貸物件の立退料の算定方法のひとつとして参考になる事例です。

【判旨】

1(立退料の金額)

鑑定の結果によると、本件貸室の借家権価格が372万円、通損補償額63万7,300円(工作物補償額21万9,600円、動産移転補償額6万9,900円、移転雑費補償額34万7,800円)の合計であると認められるところ、本件において、原告による解約の正当事由の補完としての立退料の金額は、上記の借家権価格の3分の2にあたる248万円と通損補償額63万7,300円の合計額311万7,300円とするのが相当である。

2(賃借人からの営業補償を加味すべきとの主張について)

被告らは、立退料は、鑑定の結果算出された金額に、開発利益の配分170万9,037円及び営業補償1,733万4,080円を加味するべきであると主張する。

しかしながら、本件において、前記の借家権価格及び通損補償額の他に、開発利益の配分額相当額を支払わせる必要があるとは認められないし、営業補償についても、本件貸室を明け渡すことにより被告らにその主張するような損失が生じる蓋然性が高いと認めるに証拠はなく、これを、上記金額に加味する必要があるとはいえない。

※この記事は、2018年9月1日時点の情報に基づいて書かれています(2024年9月11日再監修済)。

北村 亮典 大江・田中・大宅法律事務所 弁護士

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