アメリカより46%以上も安いってホント?マックの看板メニュー〈ビッグマック〉の価格から見えてくる「安いニッポン」の裏側【帝国データバンク情報統括部が解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年10月20日 12時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
マクドナルドの看板メニューであるビッグマックは世界中の店舗で展開されていますが、実は日本のビッグマックは世界的に見ても非常に安いという事実をご存じでしょうか? 本記事では、帝国データバンク情報統括部の『帝国データバンクの経済に強くなる「数字」の読み方』(三笠書房)より一部を抜粋、再編集して、「ビッグマック指数」を通して「安いニッポン」といわれるようになった背景について解説していきます。
ビッグマック指数を通して見る「安いニッポン」の今
新型コロナ禍が明けて、海外からの訪日旅行客が急増しています。そこで異口同音に発せられるのは「日本の物価は安い!」という言葉です。ここでは「安いニッポン」について、ビッグマック指数(BMI)を通して価格の舞台裏を垣間見てみましょう。
なぜビッグマックを使うのか、その背後にある理由や日本の価格に迫ります。
まず、ビッグマック指数について説明します。これは、マクドナルドのメニューにあるビッグマックの価格を使って各国の物価水準を比較しようとする指標です。なぜビッグマックかというと、マクドナルドが世界100カ国以上でほぼ同品質で販売するビッグマックの値段は、その国の原材料費や光熱費、店舗の家賃、従業員の賃金など、さまざまな要素を反映するため、各国の標準的な商品として比較しやすいためです。ビッグマック指数はイギリスの経済専門誌『The Economist』が提唱したもので、1年に2回発表されています。
そもそもビッグマック指数は、通貨が正しい水準にあるかどうかを示す気軽なガイドとして1986年に考案されたものです。この指数は、外国為替レート決定理論の考え方のひとつである購買力平価(PPP)理論にもとづいて算出されています。PPPはさまざまな経済データを国際比較する時に頻繁に使われるもので、より長期的なトレンドに沿った為替水準を示しています。
それでは、日本のビッグマック指数はいくらなのでしょうか。
2024年1月時点での価格は1個450円(3.04ドル)です。この価格をもとに、他の国のビッグマック価格と比較することで、物価水準の違いを知ることができます。とはいえ、そもそもこの価格は高いのでしょうか、それとも安いのでしょうか。答えを先に言えば、非常に安いと言えるでしょう。
調査対象となっている55カ国・地域のうち、日本は45位です。前後の順位をみると、44位はルーマニア(506円、3.43ドル)、46位はベトナム(445円、3.01ドル)となっています。日本は基準となるアメリカのビッグマック(841円、5.69ドル)より46%以上、トップのスイス(1,207円、8.17ドル)からは62%も安い価格です。
日本の「ビッグマック」はなぜ安いのか?
なぜ日本のビッグマックは安いのでしょうか。いくつか理由はありますが、1つ目の理由として、生産性向上と技術の進化があげられます。日本の効率的な生産ラインと技術進化により、商品を生産するコストが削減されています。
2つ目としては、競争の激化が考えられます。飲食業界は激しい競争のなかにあります。これが価格を下げざるを得なくさせ、消費者にとっては安価で購入できる選択肢となります。
3つ目は、日本の労働者は同じ労働時間で多くの仕事をこなしており、それがビッグマックにかかるコストを下げている要因となっています。ビッグマック指数が安いということは、日本が相対的に物価の安い国であることを実感するでしょう。
これは一つの商品に限った話ではありませんが、他の商品やサービスも同様に安くなる傾向があります。この安さは観光客にとっては大きなメリットで、外国からの旅行者にとってはリーズナブルな価格で美味しい食事を楽しむことができるのも日本の魅力の一つとなっています。
もちろん、価格が安いからといって品質が低いわけではありません。日本でも食品や商品の製造段階から環境への配慮が欠かせません。品質と環境への取り組みを両立させることが、日本の商品において当たり前の価値となっています。
日本の安さはビッグマックの価格だけでなく、日本での暮らし全体にも表われています。製造業やサービス業において、日本は独自の方法で生産性を高め、効率を向上させてきました。これが、商品を手頃な価格で提供できる要因となっています。
特に、公共交通機関の利便性や治安の良さ、教育の充実など、価格以外の要素も含めて日本が提供する暮らしの豊かさには目を見張るものがあります。
「安いニッポン」は価格だけではなく、その背後に広がるさまざまな価値が魅力です。工夫と技術の結集、環境への取り組み、そして価格だけでない暮らしの充実感。価格の裏に隠れたこうした価値に気づき、日本の魅力を改めて感じてみてください。
とはいえ、日本が賃金上昇をともなう経済成長に失敗した結果、現在のような「安いニッポン」になったことも確かです。ビッグマック指数は、単なるハンバーガーの価格比較以上の意味を考えることができ、その背後には国の経済構造や文化が反映されていると言えるのではないでしょうか。
帝国データバンク情報統括部
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