あなたの血管は大丈夫?超効果的な健康診断票の見方【医師が解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年9月17日 11時0分
(※写真はイメージです/PIXTA)
内科医の橋本将吉氏は著書『「老いても元気な人」と「どんどん衰えていく人」ではなにが違うのか』で血管がいかに老化対策に必要かを説いています。一体どうしてでしょうか? その理由を著書から説明します。
健康診断で血管の不調を知ろう
血管はあなたの健康の重要なライフラインですが、実に厄介なのが血管の不調は気づきにくい点です。血管が硬くなったり、不要なものがこびりついたりしても、私たちはもちろん見ることができませんし、なかなか知覚できません。手足がしびれる、胸が苦しい、ろれつが回らないなどの自覚症状が出てきたときには、すでに動脈硬化が進んでいる状態です。
だから血管の病気は始末が悪いといわれるんです。そのため、自覚症状が出る前から血管の健康に意識を向けることが重要なわけですが、そんなことができるのは一握り。普通は「あなたの血管マズいかもしれません」と言っても「え? どこも痛くないのに?」とどこ吹く風です。そこで効果的なのが、自身の体の状態を目に見える数値で知ることです。
つまりは健康診断ですね。正常でない数値を目の当たりにすると、いやが応でも意識に変化が出てくるものです。しかし、医師や看護師の方々も1日に何人もの診断をしなければならないので、1人ひとりに懇切丁寧にその数値の意味を説明している時間がないかもしれません。
つまり、自分を気遣えるのは自分自身。ある程度、気をつけるべき項目や数値の見方を知っておくようにしてほしいのです。
血管をボロボロにする3大地獄を知る
会社などで実施される一般的な健康診断は、過去にかかった病気やケガなどの調査である問診、身体測定、血圧、貧血検査、血中脂質検査、血糖検査、尿検査などが行われます。もちろん、どれも大切な指標ですが、血管の状態を知るには、血圧、血中脂質検査、血糖検査に注目してください。
なぜなら、「高血圧」「高脂質」「高血糖」は、血管をボロボロにする3高、血管にとっては地獄のような環境と言っていいものだからです。血圧とは、心臓が動脈に血液を送り出すときの血管壁に与える血液の圧力のことです。簡単に言えば、どれくらいの勢いで血液を送っているか、という数値です。
血圧が上がると血液が勢いよく血管の内壁にあたるので、かかる負担も大きくなり、血管が傷つきやすくなります。通常の風だと、しなやかに揺れているだけの木の枝が、台風などの強い風が吹くと、折れるなどして見るも無残な姿になるのと同じです。血管が傷つくと硬くなったり内壁が狭くなったりして、さらに血流が悪くなります。
すると、頑張って血液を流すために、さらに血圧が高くなるという「血圧上昇スパイラル」に陥ることがあります。要は血圧が高いと血管の状態が悪い可能性が高いということです。血圧の上とか下といった言葉を聞いたことがあると思います。これは、心臓が収縮したときと拡張したときの数値です。
血液を送り出すために心臓が収縮したときを「上の血圧」や「最高血圧」と呼び、心臓が血液を取り込むために拡張したときを「下の血圧」や「最低血圧」と呼んでいます。診察室で測った場合、上の血圧が140mmHg以上、または下の血圧が90mmHg以上だと高血圧と診断されます。
診察室と限定しているのは、診察室だと緊張やストレスで血圧が上がる傾向があるからで、家庭で測った場合は上が135mmHg以上、または下が85mmHg以上だと高血圧とされています。
コレステロールってどんなものか、今、ぱっと頭に浮かびますか?
次は血中脂質検査について説明します。字面のごとく、血中に漂う脂質を測る検査です。主に測るのは、皆さんもよく耳にする言葉ではないでしょうか。コレステロールと中性脂肪です。人間は、ものを食べると、胃などで分解、消化、吸収し、いらないものを排泄します。
さてこの吸収したものは、どこにいくでしょう。ここまで、読んできた方はわかりますね。そう、血管です。血管に入ります(正しくはリンパ管ですが、リンパ管に入って胸管というところを通り、最終的には鎖骨下静脈で血管に入ります)。血管には、糖をはじめ、アミノ酸(タンパク質)、脂質、ビタミン、ミネラルの5大栄養素といわれるものが溶けて流れています。
そして、例えば糖は脳に運ばれて、脳を働かせるエネルギーになったり、アミノ酸は筋肉をつくるのに使われたりするわけです。さて、まずは血液中のコレステロールについて説明していきます。コレステロールは、食事によって直接取り込まれるのが2割程度。そのほかは、肝臓や小腸で、脂や糖などからつくられているのです。
このコレステロールは、血中では、LDLコレステロール=通称・悪玉コレステロールとHDLコレステロール=通称・善玉コレステロールの2種類が存在します。ここで、ギットギトの背脂たっぷりのラーメンを想像してみてください。なんだかドロドロしていますよね。さらに言えば、血液の約90%は水分です。
性格が合わずに、いがみあっている人たちのことを水と油と言いますが、この2つは混ざらないイメージはありませんか? ドロドロしていて、なおかつ、水と混ざらない。なんだか、血液の中で、流れにくそうに感じますよね。そう、実際のところ脂は、血液の中で流れにくいんです。
そこで、コレステロールなどの多くの脂は、流れやすいように、肝臓で周りにタンパク質をくっつけ、水に溶けて血中を流れやすい形になっています。これがLDLコレステロールであり、HDLコレステロールです。LDLとHDLの最後のLの文字は、リポタンパクを表しています。そして、リポとは脂肪の意味。つまり脂肪のくっついたタンパク質というわけです。
LDLコレステロールが増えるか、HDLコレステロールが増えるのかは、摂取した脂の種類などによって決まります。最近、アマニ油が、油なのにもかかわらず体にいいと話題になりましたが、これはアマニ油が善玉のHDLコレステロールを増やしやすい油というわけです。そして、詳しくはあとで説明しますが、悪玉コレステロールという名が示す通り、LDLコレステロールは、血管を悪くする親玉のような存在で、増えると動脈硬化の原因になります。
一方で、HDLコレステロールは、そのLDLコレステロールが血管に悪さをするのを抑制させる役割があるので、善玉といわれているわけです。しかし、単純にLDLコレステロールが悪の親玉だから、絶対に成敗するべき対象なのかといえば、そうではありません。
細胞の機能を維持するために役立ったり、体に重要なホルモンやビタミンD などを合成するのにも役立ったりしているのです。役立っているからこそ、形を変えてまで血管の中を漂っているわけです。ただし、増えすぎると血管に悪さをしてしまう。つまり、増えすぎないことが重要なのです。
ですので、健康診断では、特にLDLの値に注意してください。LDLコレステロールが140mg/dl以上の場合は、高LDLコレステロール血症とされており、いわゆる危険警報が鳴らされている状態です。120〜139mg/dlの場合も境界域高LDLコレステロール血症といわれ、いわば注意報といったところでしょうか。
先ほど、LDLコレステロールは体にも役立つと説明した通り、59mg/dl以下だと少なすぎて、これも注意が必要な状態です。また、HDLコレステロールは、40mg/dl未満だと低HDLコレステロール血症とされていますので、これも注意が必要な状態です。
糖があなたのおなかの脂肪に変わるまで
では、もう1つの中性脂肪についてです。甘いものを食べたら太るといわれて、おなかについたぷにぷにの脂肪と、砂糖などの糖質がどうも結びつかないという方がいらっしゃるかもしれません。そんな方のために、少し説明しておきます。
人は、糖質をメインに、脂質、タンパク質などから体を動かすエネルギーをつくりだしています。このエネルギーが余ったとき、インスリンというホルモンなどの働きによって、いつかエネルギー不足が起きたときのために、中性脂肪という形に変えて、細胞に貯蔵します。いわば、中性脂肪は、蓄電池のような存在です。
甘いものを食べて脂肪がつくのは、このような理屈からです。そして、この中性脂肪をためる場所が皮膚の下であれば、皮下脂肪、内臓であれば、内臓脂肪というわけです。中性脂肪が、どう血管に悪さをするのかは、あとでわかりやすく、詳しくご説明します。
ここでは、中性脂肪が増えると、LDLコレステロールが増加しやすくなるという簡単な説明にとどめておきます。中性脂肪は空腹時で150mg/dl以上、非空腹時で175mg/dl以上だと、基準値を超えています。最後は血糖検査。これは血液中を流れるブドウ糖の量を測っています。ブドウ糖は人間に必要なエネルギー源ですが、多いと血流を悪くしたり血管を傷つけたりします。
通常、食前は約70〜100mg/dlの範囲で推移しています。空腹時の血糖が126mg/dl以上、食事をとったあとに測った血糖が200mg/dl以上だと危険信号だと考えてください。まとめると、上の血圧の値が140mg/dl以上、悪玉コレステロールが140mg/dl以上、空腹時で、中性脂肪が150mg/dl以上、血糖が126mg/dl以上だと血管もマズい状態にあるかもしれないということです。
家に健康診断票がある方はぜひ、見直してみてほしいですし、今は一部の薬局などで、そんなに時間をかけずに、簡易的に測ることができるようになっています。インターネットで、「ゆびさきセルフ測定室ナビ」で調べてみれば、測定内容や測定できる薬局が見つかるはずです。
1つ注意しておきたいのが、血圧や血糖値、中性脂肪が高かったり、高血圧や糖尿病などと診断されたりした人たちのことを「どうせ欲望の赴くままに食べていたんでしょ?」とか「我慢がきかない人なのね」という偏見を持ってはいけないということです。
人の顔がまったく違うように、体の中身だって千差万別。生活習慣に気を配っていても、体質的に、それらの値が上がりやすい人もいるからです。遺伝が大きく関係していることも、最近明らかになってきました。医学や医療の世界には、誰も悪くないというのはよくあることです。
また、ご自身の数値が高くても「俺はダメだ」「こんな性格だから仕方ない」などと言ってあきらめないでください。大切なのは、あきらめずに少しずつ気をつけ、改善していくことなのです。
橋本将吉 内科医
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