実は血圧上昇で血液が「暴徒化」する!血管がボロボロになるメカニズム【医師が解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年9月18日 11時0分
(※写真はイメージです/PIXTA)
内科医の橋本将吉氏は著書『「老いても元気な人」と「どんどん衰えていく人」ではなにが違うのか』で血管がいかに老化対策に必要かを説いています。一体どうしてでしょうか? その理由を著書から説明します。
20歳以上の約2人に1人が高血圧になっている
ここからは、血圧が高いとどうして血管がボロボロになるのか、詳しく話していきたいと思います。そもそも血圧の値はなにを表しているのかといえば、血管の壁に与える血液の圧力のことです。単位はmmHg。mmは単純に長さの単位で、Hgは水銀の元素記号です。「ミリメートルエイチジー」とか、「ミリ水銀」などと呼ばれています。
ここで少々、水銀計にまつわるうんちくです。なぜ水銀かというと、現在は製造や輸入が禁止されていますが、以前は水銀血圧計が使われていた名残です。これは水銀がどれぐらいの高さまで押し上げられるかで血圧を測るものです。100mmHgなら水銀を100mm押し上げる圧力を指します。
なぜ、わざわざ水銀なんかを使っているかというと、水銀は水よりも重いから。正確にいうと、水の13.6倍です。水で血圧を測定すると単純に13.6倍の高さが必要になって、計測器が巨大になってしまうので水銀が使われていたのでした。
勘の良い方ならお気づきかもしれませんが、血圧というのはものすごい力なのです。なんといっても、低血圧とされている100mmHgでも、水銀を100mm押し上げるわけです。これが水なら136cmの高さまで吹き上げる計算になります。成人の1分間の心拍数は60〜100回といわれています。1分間だけでもそれだけの回数、高い圧力が血管にかかっているわけです。
それだけに血管の負担はものすごいものがあり、傷つきやすくなります。血管が傷つくとどうなるのか。イメージしやすいように簡単に言えば、膝などを擦りむいたときにしばらくすると、かさぶたになって、硬くぶつぶつができるのと同じように、血管が硬く盛り上がってしまう。これが、動脈硬化の要因になるのです。
日本には、上が140mmHg以上、または下の血圧が90mmHgの高血圧の人が4000万人以上いるとされています。実に20歳以上の約2人に1人が高血圧なんです。つまり、それだけ、年をとってからも元気かどうかを決める重要な要素である血管が、ボロボロになっている可能性が高いというわけです。
高血圧になる原因はなに?
高血圧になる原因はさまざまありますが、その主な原因の1つが、塩分のとりすぎだとされています。塩分の中には、ナトリウムという物質が含まれており、これが水を引き寄せるという性質を持っています。なめくじに塩をかけたらどうなるでしょう。そう、しぼんでしまいますね。あれも、このナトリウムの力なんです。
ナメクジの体の中の約90%は水です。塩を振りかけると、塩の中のナトリウムが体の中の水分を外に出してしまうというわけなんです。それと同じようなことが体内でも起こります。塩分を多くとると、血中にナトリウムが増えます。すると、血中のナトリウムが細胞にある水をどんどんと、血液の中に引き寄せ、血管の水分量が増えて、血管がパンパンになってしまうんです。
そうなると、血液が血管を押す圧力は強まる=血圧が高くなるのです。水風船は、少ない水だと簡単に割れませんが、パンパンに水を入れたら割れやすくなりますよね。それと同じで、大量の血液が、暴徒のように荒々しく血管に圧力をかけ、血管が傷つきやすくなるというわけなんです。
もう1つの原因が体重です。「体重?」と思った方はアリと象を思い浮かべてみてください。アリが全身に血液を送る力と象が全身に血液を送る力、どちらのほうが強いでしょうか。当然、象のほうが強い力が必要になります。
これは極端な例ですが、人間におきかえても同じことが言え、体重が重いと、全身に血液を回すために、心臓はものすごい勢いで血液を送り出す必要があります。結果、血圧が高くなる傾向があるというわけです。統計的にも体重が落ちると血圧が下がるというデータもあります。
続いての原因がストレスです。暑くなったら、体温を下げるために汗をかかせたり、夜になったら、眠るために体をリラックスさせたり、体を健康に維持するために、さまざまな器官に指令を伝えているのが、自律神経と呼ばれる神経です。自律神経には、交感神経と副交感神経の2種類があります。
例えば日中、体を活発に動かしたいときに優位に働くのが、交感神経、逆に、体を休めるときに優位に働くのが、副交感神経です。この2つがバランスをとりながら働き、私たちの体は健康が保たれています。ストレスがかかっている状態というのは、いわゆる心身に負荷がかかっていて危険にさらされている状態です。
そのため、体は活発に動いて、その危険に立ち向かおうと判断して、交感神経が優位に働き始めるのです。活発に動くためにはエネルギーが必要なので、エネルギーを体中に急いで運ばなければなりません。そこで、交感神経は血管を収縮して、水道のホースをつまんだときと同じ原理で、血流を速くします。血流が速くなるということは、血圧が上がるということです。
つまり、ストレスがかかり続けている状態では、血圧が高くなり続ける危険性があるのです。ほかにも運動不足や多量の飲酒など、さまざまなことが関係しているとされていますが、主には塩分、体重、ストレスだと考えています。高血圧と診断された人は、その3つには特に気をつけるようにしてください。
橋本将吉 内科医
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