キャッシュレス先進国に住むこどもの「リアルなお金事情」とは?時代が変化する今だからこそ、親から子に「現金」で教えておきたいこと【現役ママFPが解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年9月17日 9時45分
(※写真はイメージです/PIXTA)
「こどもの適切な金銭感覚に悪影響かもしれない」と疑いながらも、日常の買い物ではスマホでピッ、ネットでポチっと購入する様子を見せてしまうことに不安がある親御さんは少なくないのではないでしょうか。未来に向けて、キャッシュレス化はさらに加速するでしょう。キャッシュレス先進国在住の友人家族に聞いた、リアルなこどもたちのキャッシュレス事情を踏まえ、『見える』現金で身に付けておきたいスキルについて現役ママFPがお伝えします。
日本のキャッシュレス化の現状
ここ数年で、一気にキャッシュレス決済が浸透し、現金を手にする機会も減ってきているのではないでしょうか。それもそのはず。[図表1]のデータにもあるように、2013年には15.3%だったキャッシュレス決済比率は、右肩上がりに上昇し、2023年は39.3%となり、10年で2.5倍以上の上昇率となっています。
日本政府は『2025年6月までに40%程度、将来的には80%を目指す』としているので、ますます加速する予測です。となると、こどもたちにとって、キャッシュレスと上手く付き合っていくことが、より豊かに生きるための必須スキルになることは間違いないでしょう。
[図表1]のグラフから、利用手段がわかります。クレジットカードがダントツの一強で83.5%、次いでコード決済が8.6%、電子マネーが5.1%、デビットカードが2.9%となっています。この内訳、世界でもめずらしい比率になっているのをご存じでしょうか? 特にクレジットカードの利用率は世界有数のトップクラス。クレジットカードは月を跨いだ後払いになる性質上、利用する年齢になったこどもたちにはその使い方を特に丁寧に伝えておきたいものですね。
そして、顕著に伸びてきているのが、電子マネーとコード決済です。小中学生のスマホ所持率が上がっていることから考えると、その利用スタートも早まってくることでしょう。気軽に使えるからこそ、親が身近で使う様子を目にできる初期から、繰り返し、どんな決済方法なのか、正真正銘の『お金』であるということを根気よく伝えることが親の役目といえそうです。
ここまで、日本の直近10年のキャッシュレス化の躍進を見てきましたが、それでも世界各国と比べるとまだまだ発展途上です。世界の状況を見ていきましょう。
キャッシュレス先進国のこどもたちの状況
2025年までに40%という目標に届きそうな日本ですが、最終目標の80%をすでに超えている国もあります。[図表2]のグラフをご覧ください。お隣の韓国と中国は世界トップの普及率です。
このような国では、こどもたちがどのように日常生活のなかでお金を使っているのか気になりませんか? 将来の日本と思えば、世界に視野を拡げて、こどもたちへの伝え方に生かせることがみつかりそうです。
今回、筆者が海外に在住している友人家族から聞いた、現地でのキャッシュレスの様子をご紹介します。
国ごとに異なる「キャッシュレス事情」
イタリアのミラノの場合
観光立国のインバウンド対策でキャッシュレスが推進されているのかと想像していましたが、実は2022年で24%。友人は、電車やバスはチャージ式のICカードを使うそうですが、10回分ずつこどもに入金させて、お金であることを意識させると言っていました。
スーパーではカードを使えても、イタリアらしい街中の市場では使えないこともしばしばで、こどもへのおこづかいはユーロで渡しているそうです。キャッシュレスと現金の使い分けは日本と大差なく、学校での金融教育も積極的なものは特にないそうです。
カナダのトロントの場合
カナダの普及率は2021年で63%で、日本よりかなり高くなっています。カナダの主流な手段は、約半数がクレジットカードです。実際に、カナダ人の父と日本人の母の家族では、高校生のお子さんには現金を渡すことはなく、こどもの銀行口座に送金し、こどもは銀行のキャッシュカード(デビットカードのように口座に残高がある場合に支払い可能)かスマホで支払いをするそうです。
トロントでは12歳までは大人の同伴なしに外出できず、1人で家に残しておくのも違法になるので、基本、1人でお金を扱うのは13歳以降。しかし、早期から金融教育が行われ、学校で現金を使ったお金の基本や経済活動を体験型で学び、その流れでキャッシュレスの知識も学ぶそうです。
キャッシュレス先進国の裏側では、こどもたちへの金融教育が早期から必須課題として行われ、国民の金融リテラシー向上のための体制が整えられていることがわかります。
中国の上海の場合
そして、最後に世界でトップクラスの普及率を誇る中国の友人にも聞いてみました。
中国ではコロナ前から、スマホでのQRコード決済が生活の大部分を占め、外出時は、充電器を持ち財布を持たないのが普通とのことです。つまり、小学生くらいのこどもは現金をあまり見ることがないまま育ちます。お金は使ったらなくなるという増減を示そうにも、現金を出すとコンビニですらお釣りが出ないということもしばしば。
まだスマホを持たない小学生のうちは親に買ってもらうしかなく、自分でお金を使う練習の機会がないまま、単独行動をする中学生になると、自分のスマホにおこづかいが送金され、いきなりスマホ決済を使いだすこどもも少なくないそうです。
友人が唯一、小学生のこどもに現金を持たせられるのは、通っているインターナショナルスクールで毎週開催されるバザーだけとも話してくれました。そこだけが、こどもたちが現金を使って増減を体感し練習する、貴重な機会となっているそうです。
上記3国は、キャッシュレス化の段階がそれぞれ違います。その段階で、こどもが置かれるお金環境も大きく左右されていることがわかりました。豊かに生きていくためのお金スキルを身に付けるには、
①まずは『現金』。無理のない自分らしい金銭感覚を十分に身に付ける。 ②その感覚を生かしながら、便利なキャッシュレスを取り入れる。この順番が必須だと感じています。日本の学校でのお金教育は始まったばかり。その前段階として、家庭のなかで親を見て真似ることが、こどもにはリアルな体感として響きます。幸い、まだまだ現金を大切にする国民性で、現金が使えないところはない日本です。家庭でこそ育める、現金を使った大事なお金の基本を親子で意識してみませんか?
キャッシュレスを持たせる前に!現金で身に付けておくべき5つのお金のキホン
キャッシュレスでは体感しにくい、現金だからこそわかりやすく伝えられることは少なくないですよね。特に意識して伝えたい5つのキホンをお伝えします。
『お金は道具』その役割を知る
お金は、物の価値をはかりながら物と物を交換する道具であり、お金そのものには価値はありません。お金持ちになりたいと言うこどもに、筆者はよくハサミの例で話します。
「たくさんハサミがあったとしても邪魔だし、上手く使えなければ、あれもこれも使ってみて振り回されるだけで、危ないものにもなるよね。道具は上手に使えてこそ便利で、使い勝手がよいほど嬉しい気持ちや幸せな気持ちを生み出すものだよね。お金も一緒だよ」と。「将来、道具に振り回されるような大人にはならないでね」と伝えています。
『お金は使ったら減る』を知る
支払う際に財布からお札が減っていく経験は現金でしかできません。親のスマホやカード決済を見て育つこどもは、魔法の電話や魔法のカードだと勘違いし、いくらでも使えると感じてしまうようです。おこづかいで自分のお財布からお金が減る体験が重要です。
また、筆者は銀行のATMでお金を引き出す際に、「さっきスマホでピッと支払った分は、銀行さんがママの代わりにこの口座からお店に払ってくれてるの。その分のお金がなくなってるよー」としっかりお金が減っているアピールをしています。
『ニーズ』と『ウォンツ』を考える
今月のニーズは? と月予算としてあらかじめ考えておくことも必要ですが、考えるタイミングとしては、欲しいと思い手に取ったその瞬間と、現金の場合はさらにもうワンチャンスあります。
小銭を探したりお札の枚数を数えたり、支払う行程が多くなる現金払いの場合、その手間がフィルターのように働き、「本当に必要なもの?」「また今度でもいいかも」など、親子で思い直したり葛藤する時間にもなりますね。
お金は感謝のしるし
お金は経済をスムーズに回す血液とよく言われますが、こどものうちから自分もその一端を担ってるということを話してあげたいものです。筆者はわかりやすく、『感謝の気持ち』にのってお金は回っていると伝えています。
働いてくれる親への感謝だけでなく、自分がモノやサービスを買う際にも、ありがとうの言葉を添えてお金を払う習慣ができたら素敵ですね。その理解があれば、将来、世界の経済発展に自分のお金を投じ運用するという投資への意識も、自然と芽生えてくるでしょう。
お金の動きを記録する習慣
キャッシュレスになると利用履歴をデータとしていつでも見ることができて便利ですが、そもそも振り返る習慣がなければ、計画的に利用したり貯蓄できているかの確認をしたりせず、気づかないうちに大きな出費をしていたということにもなりかねません。
実際に、キャッシュレス払いのほうが現金払いの1.7倍も多くお金を使ってしまうという調査結果も報告されているので、お金を使い始めるこどものころからの確認の習慣が自分を守るという意識で、ぜひおこづかい帳から始めてみましょう。
キャッシュレスこそ親の目が届くうちにスタートしよう
今よりもっとキャッシュレス推進が進む未来の日本で、より豊かに生きるための金銭感覚をどこで体感し磨いていくか、親として考えていくことは急務だと感じています。
多感なこどものうちに、実際に現金に触れ、視覚や触覚などの“五感”でお金を感じた成功と失敗の経験が、将来、お金がキャッシュレスに形を変えたとしても、上手に付き合っていく大人になる鍵になるのではないでしょうか。
そのためにも、過剰に恐れることなく、親が一緒に確認してあげられる間に、現金もキャッシュレスも自分が心地よく使えるバランス感覚を養っていきたいものですね。
北村 由紀
ファイナンシャルプランナー
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