フィリピン「企業の4割でAI導入」も…さらなる成長を阻む緊急課題
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年9月16日 7時15分
写真:PIXTA
一般社団法人フィリピン・アセットコンサルティングのエグゼクティブディレクターの家村均氏が、フィリピンの現況を解説するフィリピンレポート。今回は、フィリピンの経営者へのアンケート調査から、AIがフィリピンの主要産業であるBPO産業にどのようなインパクトをもたらすのかを考えていきます。
比・経営者の8割「自社のさらなる成長に自信」
PwCフィリピンとフィリピン経営者協会(MAP)が共同で実施した調査によると、フィリピンの経営者の多くは、地政学的な不確実性があるにもかかわらず、今後12ヵ月間で自社の収益が増加することに自信を持っていることが明らかになりました。この調査では、168人のCEOの85%が収益成長に楽観的であると回答しており、前年の79%から上昇しています。また、今後3年間の収益成長についても86%が自信を持っていると答えましたが、これは前年の87%からわずかに減少しました。
今後12ヵ月の成長の主な原動力として、インフラ開発、個人消費、外国直接投資(FDI)を挙げており、経営者たちは政府がインフラ開発を推進し、他国との関係を強化し、インフレを上手くコントロールしていることを評価しています。
しかし、ロシア・ウクライナ戦争や西フィリピン海での中国との紛争、米大統領選挙など他国での選挙の動向などの地政学的な不確実性が、依然として企業にとって大きな懸念材料となっています。これらの問題がサプライチェーンや企業運営に深刻な影響を与えると懸念しているCEOは62%にのぼりました。
また、調査では、技術革新が今後のビジネスモデルや業務プロセス、産業を変革する可能性があると指摘し、特に生成AIの影響が大きいとしています。すでにAIを採用しているCEOは40%にのぼる一方で、残りの60%のCEOはまだ広範には導入していないと回答しており、技術の認知度や導入に向けた準備が不十分という課題が浮き彫りになっています。
教育システムの改革や従業員のスキルアップが必要である一方、AI導入が進めば、フィリピンの主要産業であるビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)に大きな影響を与える可能性があるとされています。
AI技術の導入によって、労働市場にも影響が及ぶ可能性があり、特にスキルの低い労働者はAIを活用できる人材に置き換えられるリスクがあります。AIが雇用を直接奪うわけではありませんが、AIを使いこなせる人材がそうでない人材に取って代わることが予想されており、教育システムがこの変化に対応する必要があると指摘されています。
AI導入推進を阻む「人材不足」と「AI教育」
フィリピンの情報技術・ビジネスプロセス管理(IT-BPM)業界では、人工知能(AI)の導入率が60%を超えているものの、AIを扱える人材の不足が課題となっています。また、ITおよびビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)企業の多くがAIの使用を開始している一方で、データプライバシーやセキュリティ、既存システムとの統合が課題としてあります。
フィリピンの教育機関では、AIに精通した教員の不足が大きなボトルネックとなっており、これがAIに対応できる労働力の育成を妨げています。特に、現在の卒業生は産業界のニーズに十分に対応しておらず、BPO業界においても追加の再訓練やスキル向上が必要です。このため、企業にとっては余分なコストが発生することが懸念されています。
フィリピン政府もAIやサイバーセキュリティ分野での競争力を高めるための労働力のスキルミスマッチを解消しようとしています。政府と産業界は「フィリピンスキルフレームワーク」を立ち上げ、教育機関の成果を産業界のニーズに一致させるための取り組みを進めています。しかし、このフレームワークは現時点での職種にしか対応していないため、AIの進展に伴って新たに生まれる職種にも備える必要があるとの指摘があります。
AIがもたらす自動化の進展により、未来の仕事が大きく変わると予想されていますが、BPO業界団体は教育、エンジニアリング、倫理に基づいた効果的なAIガバナンスを模索しています。
また、フィリピン人がAIの進展に適応できるようにするため、AIリテラシー向上の取り組みが必要としています。科学、技術、工学、数学(STEM)関連のコースを充実するための教育プログラムが求められているなか、フィリピン商工会議所も、STEMプログラムの強化を提案し、フィリピンの卒業生の雇用可能性を高めることを目指しています。フィリピン商工会議所人材開発財団は、AIに対応するためには、まずデータ分析者を育成することが重要であるとし、AIの進展があっても、データを分析し、チェックするための高いスキル人材が求められるとしています。
この記事に関連するニュース
-
ハイドリック&ストラグルズが報告、世界の取締役会はサステナビリティの面で進展を示すも、AIおよび地政学的リスクが大きな課題に
共同通信PRワイヤー / 2024年11月22日 9時41分
-
STEM人材からの経営層への信頼度は主要国で日本が首位、オープンな職場環境とウェルビーイングへの優れた取り組みを評価
PR TIMES / 2024年11月21日 14時0分
-
SCSKが AI セントリックなデジタルオファリングサービスを提供
PR TIMES / 2024年11月19日 11時0分
-
SAS、アジア太平洋地域(APAC)におけるAI動向調査を実施
Digital PR Platform / 2024年11月14日 11時5分
-
日本経済が抱える「生産性格差」は8.8兆円 AI導入の遅れで数百万人規模のSTEM人材が週6時間近くを浪費
PR TIMES / 2024年10月29日 17時15分
ランキング
-
1【独自】船井電機前社長『不正を働いたことはない』 “破産の申し立て”は報道で知る「本当に驚いた。なんでこんなことに…」
MBSニュース / 2024年11月22日 18時20分
-
2三菱UFJ銀行の貸金庫から十数億円抜き取り、管理職だった行員を懲戒解雇…60人分の資産から
読売新聞 / 2024年11月22日 21時35分
-
3「築浅のマイホームの床が突然抜け落ちた」間違った断熱で壁内と床下をボロボロに腐らせた驚きの正体
プレジデントオンライン / 2024年11月22日 17時15分
-
4物価高に対応、能登復興支援=39兆円規模、「103万円」見直しも―石破首相「高付加価値を創出」・経済対策決定
時事通信 / 2024年11月22日 19時47分
-
5ファミマ、プラ製スプーン「有料化」の実験結果を発表 大手コンビニで初、どうなった?
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年11月21日 12時20分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください