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年金月20万円で生活費を賄い、70代両親が大事にとっておいた「退職金2,000万円」…じわじわ削り取る、我が子を失い豹変した「40歳一人娘の大暴走」【FPの助言】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年9月15日 10時45分

年金月20万円で生活費を賄い、70代両親が大事にとっておいた「退職金2,000万円」…じわじわ削り取る、我が子を失い豹変した「40歳一人娘の大暴走」【FPの助言】

(※写真はイメージです/PIXTA)

大事にとっておきたい退職金。できることなら、長生きリスクが待ち受ける老後の後半戦まで温存しておきたいという人も多いでしょう。しかし、予期せぬ事態により、あっという間に使い果たしてしまうことも……。本記事では、田辺さん(仮名)の事例とともに、子が親の老後におよぼす影響についてFP相談ねっと・認定FPの小川洋平氏が解説します。

可愛い一人娘「少しのあいだ住まわせて」

「老後は慎ましくのんびり暮らそう……」

田辺祐一さん(仮名/73歳)は妻と2人、穏やかな老後を送っていました。しかし、数年ぶりに帰ってきた一人娘の紗香さん(仮名/40歳)の「少しのあいだ住まわせて」というひと言によって、状況は一変します。

離婚した紗香さんは、実家に帰ってくることになったのです。もともと義母との折り合いが悪いことで夫とは度々揉めていましたが、1年ほど前から言い争いが絶えなくなり、とうとう離婚に至りました。2歳になる息子もいましたが、パート勤務で経済力がないことを理由に元夫が引き取ることに。

自分の経済力のなさによって愛する息子と離れ離れになった無力感からか、紗香さんはSNSの女性の起業を支援をするアカウントの発信にのめり込みました。同じように起業する女性たちの姿をみて、次第に自身も起業をと考えるようになります。

紗香さんには自身の離婚の経験から、同じように悩んでいる女性のカウンセラーを仕事にしていきたいという熱い思いがあります。成功するためには、SNSを通じて紹介された起業のコンサルティングを受ける必要があるそうですが、自分のパートの収入だけではその授業料に到底手が届きません。そこで、「毎月30万円の起業コンサルを受けたいので、お金を貸してください」と父親である田辺さんに頼みこみます。

田辺さんは、紗香さんからの頼みを聴いて、初めは「そんなことに大金を払っても上手くいくはずはない」と断っていました。しかし何度もめげずに頭を下げる娘の姿に、「子供と離れて無気力になっていた娘が、そんなに熱意を持ってやりたいというのなら……」と次第に気持ちが動きます。

最終的に「1年分くらいなら……」と、老後の資金として手を付けず、大切に残しておいた退職金の2,000万円から無理をして支払うことに。

普段から贅沢をしてこなかったため、これまでは年金収入だけで暮らすことができていました。しかし、夫婦合わせて公的年金額が月20万円程度の田辺さんたちにとっては、もし今後、介護状態などになった場合への備えも含めて、本当は残しておきたいと思っていたお金です。

じわじわ減っていく2,000万円

田辺さんの援助から半年が経ち、1年が経っても、紗香さんの企業はほとんど売上に繋がりません。

それどころか、会費だけでなく紗香さんはSNSをもっと上手に使おうと運用代行に依頼します。また、異業種交流会に入って自分の活動を広めたいと言い、入会金や月会費が必要と支出を増やしていきます。さらに、異業種交流会に入ると同じ会の仲間の店に行ったり、仲間のサービスを受けたりと、売上にはなかなか繋がらないものの出費だけが増えていくようになっていきます。

「このまま売上にならないようなら、もう高いお金を払うのはやめたほうがいいんじゃないか?」

田辺さんは紗香さんに言いますが、紗香さんはすっかりコンサルタントを信じてしまっており、「もうすぐだから。いま辞めてはもったいない」といつまでも成果に繋がらないままズルズルと続けていきます。

その後、2年、3年と経過しても、年間で数万円の収入を得られるようになった程度で、実を結ぶことはありません。ついに、田辺さんの老後の資産も残すところ300万円程度にまで減ってしまっていたのでした。

「もうこれ以上は無理だ……」田辺さんは紗香さんに告げます。

現在の娘の様子

資金源を失った紗香さんは売上にならないままカウンセラーとしての独立を諦めました。そして、自分のために老後の資金をほとんど使い果たしてしまった両親のために、パートから派遣社員に切り替えて働きはじめ、決して多くない給料から両親の家計を支えることになったのでした。

本当に子を思うなら

現在は副業解禁の動きが進み、フリーランスとしての働き方も増えてきています。そういった起業家に向けたコンサルティングを行う人も多く、SNSのアカウントではコンサルを受けた人が成功して稼いで、海外で活動をする華々しい様子などがアップされているものも。「自分もこんな風になりたい」と、影響を受ける人も多いでしょう。

しかしなかには、今回のように高額な費用が掛かるコンサルもあり、当然ながらそれを受けたからといって必ず成果が得られるというわけではありません。

事例の田辺さんは、安易に資金援助を行い、止めるに止められなくなり、老後の資金を使い果たしてしまったことが大きな問題でしょう。援助をするのであれば、娘のために出しても問題のない上限額をあらかじめ決めて、それ以上はもう出せないとしっかり線引きするべきです。それでも続けたいという本人の意思があるのならば、自分でお金を工面させるべきです。

高額なコンサルにお金を払う前に、情報収集の方法を学ぶところから始め、自分でしっかり事業計画を考え、まずはお金を掛けずにできるようSNSなどを活用して試験的にスタートしてみたり、今回のような業種であればパートをしながらまず始めてみて、コツコツと実績を積み上げていったりするなど、選択肢はたくさんあります。

親としてして娘のために協力してあげたいと思うのならばお金を出すのではなく、一緒に情報を得て、無理せずに始められるところから始められるように教えてあげることもできたはずです。

30代、40代の子が「起業したい」と言い出したら…

最近は、女性や若者の起業に関しては公的な融資が充実しており、政策金融公庫等で開業資金を調達したり、補助金を受けて必要な備品を揃えたり、広告費に充てて開業したりすることも可能です。

日本政策金融公庫の「2019年度新規開業実態調査」によると、起業する人の平均年齢は43.5歳で、起業する人の36%が40代、33.4%が30代であることがわかります。

そのくらいの年齢層の場合、もう親は老後の生活を送っているケースも多く、田辺さんのように手元にお金があると、子のためにとついつい貸してしまうというケースもあるでしょう。しかし、自分達の生活資金や介護資金がどの程度必要かをしっかり考え、援助するならば無理のない金額で行うことが必要です。

小川 洋平

FP相談ねっと

CFP

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