大暴落が起きると「2番底」を伴うが…今回は「回避できる」といえる理由【ストラテジストが解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年9月18日 8時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
本記事は、マネックス証券株式会社が2024年9月13日に公開したレポートを転載したものです。
本記事のポイント
・大暴落が起きると通常は2番底を伴う ・ファンダメンタルズは堅調
大暴落が起きると通常は2番底を伴う
8月7日の公開記事『「日本版ブラックマンデー」、この先の展開は?…「反騰ターゲット」のタイミング【ストラテジストが解説】』で、ジョージ・ソロスの再帰性理論について述べた。あまりに大きな市場変動が起きると、「市場価格の動き」そのものが「投資家の判断」の根拠として跳ね返ってきてしまう。こうなると、もうファンダメンタルズは関係なく、投資家の判断と価格の動きだけでループが回り続ける。
これが再帰性理論だが、この理論には続きがある。価格の動きが「再帰」するのは投資家の判断だけではない。価格の動きの影響がファンダメンタルズまで「再帰」し、通常であれば価格の動きの出発点となるはずのファンダメンタルズそのものを変えてしまうこともあるのだ。
株価の動きは速い。株価が先に動き、遅れて業績が修正されるケースはよくある。株価が大きく下落し、PER(株価収益率)もじゅうぶん下がったので「割安になった」と判断して買ったところ、あとから業績が下方修正されPERが上昇することがある。割安だと思ったのに、実は割安ではなかったという状態になる。2008年のリーマン・ショックが典型例だ。
こうした現象をとらえて、「株価には先見性がある」「株式市場は景気の先行きを映す鏡だ」などといわれるが、それは間違いである。株価が先行きを予想して下がるのではない。株価が下がったから、景気や業績が悪くなるのだ。株価の下げに連動して為替が円高に振れることも、景気・業績の悪化に拍車をかけることも、もはやいうまでもない。
大暴落が起きると通常は2番底を伴うという理由が、これである。市場の急変がファンダメンタルズの悪化を招き、それを嫌気して再度、株価が下がるというメカニズムである。
今後、懸念されるのは、為替の影響だろう。相場の急変動で一気に巻き戻った円高が、企業業績の下方修正を呼ばないか。現在の株価は調整を経てPERは過去平均並みに戻っており、割高感が払拭されたように見える。しかし、下方修正リスクを考えれば、この水準では買えないことになる。
ファンダメンタルズは堅調
図表1は、QUICKコンセンサスによる日経平均株価の今期予想EPS(一株当たり利益)とドル円相場を示したものである。予想EPSは細かなアップ&ダウンはあるものの、上昇トレンドを維持している。これほど円高に動いても、業績の下方修正はほとんど起きていないように見える。アナリストはそんなにも楽観的なのか? いや、そんなわけはない。下方修正もあるが、それを上回る上方修正が続いているのである。
図表2はIFISによるリビジョン・インデックスだ。直近では上方修正145回に対して、下方修正が139回、まだ上方修正のほうが多いのである。
これだけの円高である。当然、下方修正は起きているのだ。下方修正のトップ3業種は、ご想像のとおり、電機、自動車、機械である。直近の1週間、電機の下方修正だけで30回を超えている。しかし、上方修正も多いのだ。上方修正のトップ3業種は、情報通信、小売り、銀行とみごとに内需系が並んでいる。
まとめると、円高で外需産業は業績の下方修正が起きているが、それを上回るペースで内需企業の業績が上方修正され、日本株全体ではしっかりとEPS成長が維持されている。
ファンダメンタルズは堅調である。財務省と内閣府が昨日(9月12日)発表した7~9月期の法人企業景気予測調査は、大企業全産業の景況判断指数(BSI)がプラス5.1だった。2四半期連続で「上昇」が「下降」を上回った。10~12月期は大企業がプラス7.2とこの先もさらに景況感が改善していく見通しが示された。
為替について述べると、直近の日銀短観によれば大企業・製造業の下期の想定為替レートはドル円で142円50銭程度である。現状並みの円高であれば、企業の想定レートどおりであり、下方修正ラッシュということにはならないだろう。
こうした状況を勘案すると、過去に見られたような、タイムラグを伴ってファンダメンタルズが悪化して2番底を迎えるというパターンは今回は回避できるように考える。したがって、これ以上、押す場面があれば、積極的に拾っていってもいいだろう。
広木 隆
マネックス証券株式会社
チーフ・ストラテジスト 執行役員
この記事に関連するニュース
-
三菱UFJ・三井住友FG「買い」継続。金利上昇が追い風、二期連続の最高益(窪田真之)
トウシル / 2024年11月19日 8時0分
-
トランプ・トレード後の日本株相場は膠着も…日経平均「4万円回復」はありえる【ストラテジストが解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年11月19日 6時0分
-
午前の日経平均は小反発、米株高を好感 円安一服で伸び悩みも
ロイター / 2024年11月8日 12時10分
-
日本株は「徐々にレンジを切り上げる展開」を予想 ~先月の金融市場の振り返りと見通し【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフリサーチストラテジスト】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年11月7日 9時50分
-
トランプ氏当選確実に、米大統領選。日経平均5万円、5年以内に達成と予想する理由(窪田真之)
トウシル / 2024年11月7日 8時0分
ランキング
-
1【独自】船井電機前社長『不正を働いたことはない』 “破産の申し立て”は報道で知る「本当に驚いた。なんでこんなことに…」
MBSニュース / 2024年11月22日 18時20分
-
2物価高に対応、能登復興支援=39兆円規模、「103万円」見直しも―石破首相「高付加価値を創出」・経済対策決定
時事通信 / 2024年11月22日 19時47分
-
3三菱UFJ銀行の貸金庫から十数億円抜き取り、管理職だった行員を懲戒解雇…60人分の資産から
読売新聞 / 2024年11月22日 21時35分
-
4「築浅のマイホームの床が突然抜け落ちた」間違った断熱で壁内と床下をボロボロに腐らせた驚きの正体
プレジデントオンライン / 2024年11月22日 17時15分
-
5ファミマ、プラ製スプーン「有料化」の実験結果を発表 大手コンビニで初、どうなった?
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年11月21日 12時20分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください