なんでこうなった…定年後の楽しみは“3日に1回のサウナ”年金月18万円・貯金2,000万円の66歳元サラリーマンが「老後貧乏」に陥ったまさかの理由【CFPの助言】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年10月11日 11時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
長寿大国の日本では“長生きリスク”という言葉も生まれるほど、老後の期間が延びています。定年後は現役時代のような収入が望めない以上、家計の変化には細心の注意を払わなければなりません。しかし、それでも、老後のマネープランが崩れてしまう原因は思わぬところに潜んでいるものです。サウナ通いが老後の楽しみだったAさんの事例をもとに、牧野FP事務所の牧野寿和CFPが解説します。
定年後、趣味のサウナに足しげく通う66歳Aさん
元サラリーマンのAさん(66歳)は、5歳年下のパート勤めの妻と、とある地方都市で暮らしています。住まいは分譲マンションで、住宅ローンは返済済みです。
Aさんは大学卒業後、法人向け機器メーカーの営業マンとして60歳まで勤めあげました。その後5年間は嘱託として再雇用を受け、昨年退職。退職時の貯蓄は退職金を含めて約2,000万円でした。
現在の収入は年金のみで月額18万円ほど。また、2年後には妻の「特別支給の老齢厚生年金」が加わり、夫婦で月20万円となる予定です。さらに70歳以降は月に約23万円まで増える見込みであり、老後の金銭的な不安は小さかったといいます。
そんなAさんの現在の楽しみは、3日に1回のサウナ通いです。
朝起きるとすぐに近所の健康ランドへ出かけ、のんびりとサウナにいそしみます。その後は食堂で大ジョッキの生ビールを飲みながら昼食をとり、休憩スペースで昼寝。たっぷり楽しんだあと夕方帰ってくるといったコースで、1日4,000円、月4万円はサウナ通いに費やしていました。
Aさんの目に止まった、近くの“娯楽施設”
そんなある日のことです。サウナに行くにはいつも施設の送迎バスを利用していましたが、その日の帰り、ロッカーに忘れ物を取りに行ってるあいだにバスが出発してしまったのです。
「次のバスまで30分くらい時間があるなあ……」ぼーっと外のバス乗り場に立っていると、近くのパチンコ店が目に入ってきました。
実は、Aさんはサラリーマン時代、パチンコに苦い思い出があります。
バブルが崩壊した1990年代、業界全体の需要が伸び悩み、業務中にパチンコに行って暇をつぶしていたときがありました。
はじめは暇をつぶす目的だったのですが、Aさんはどんどんパチンコにハマり大損。2人目の子どもが生まれたばかりの妻にバレた結果、離婚寸前のトラブルに発展したのです。
激怒した妻にAさんは、「子どもたちが成人するまでは、一切ギャンブルはしないと誓う」と約束。言葉どおり、これまでその約束を破ったことはありませんでした。
しかし……。
20分でやめるぞ… “禁断の楽園”に足を踏み入れたAさん
次の送迎バスまで、約25分。Aさんは、「子どもたちも独立したし、俺は意志の強い人間だ。さくっとやって、20分で戻ってこよう」と、30年ぶりのパチンコ店に吸い込まれていきました。
数時間後。店から出てきたAさんは、思わず天を仰いでしまいました。久しぶりにパチンコをしたAさんの感想は、「あのころとは使うお金がひとケタ違う」です。たった数時間でサウナ代1ヵ月分の約4万円を失ってしまいました。
翌日以降のAさんは、パチンコで損したお金を取り戻そうと、サウナどころではありません。妻には何食わぬ顔で「今日も健康ランドへ行ってくるから」と言って家を出ては開店前からパチンコ店に並ぶ日々。
しばらくは妻にバレないよう午後からはサウナに行くなど、偽装工作にも余念がなかったAさん。しかし、負けが込んでくるとサウナへ行くことも忘れ、妻から不審がられることも増えてきました。
また、パチンコでの負け額が増えていくにつれ、さらに大きなリスクを追って一発逆転を狙うようになったAさんは、パチンコだけではなく、競馬にも手を出してしまいました。最初こそビギナーズラックで大穴を当てたAさんでしたが、その後は負けるばかりです。
こうした生活を続けた結果、Aさんの預金残高は、退職後1年も経たないうちに1,000万円を切っていました。
次第にAさんの形相も変わり、嫌な予感がした妻はAさんに尋ねました。「ねえあなた、まさか……」
Aさんはもう隠しきれないと、ギャンブルを再開してやめられなくなっていることを白状。本人の意思だけではどうにもできないと思った妻は、病院へ連れていき、Aさんは「ギャンブル依存症の1歩手前」と診断されました。
今後の治療は専門医に委ねるにしても、崩壊してしまった家計はこれからどうすればいいのか……妻はAさんと、知り合いのCFPに家計改善と今後の資金繰りについて相談することにしました。
日本における“ギャンブル依存”の実態
消費者庁・内閣官房が、令和3年に全国20~79歳の男女5,000人に行った「ギャンブル等に関する消費行動等についての意識調査」によると、国内のギャンブルの現状は下記のようになっています。
1.ギャンブル等に対するイメージ
<全体(5,000人)100.0%>
・趣味や気晴らしの範囲で楽しむもの……37.0%
・自分とは縁がないもの……23.4%
・リスクが伴う、なるべく避けるべきもの……20.6%
・趣味や気晴らしを超えた、日常生活の一部……2.0%
・収入を得る手段……1.9%
・やめたくてもやめられないもの……4.6%
・いずれでもない……10.4%
2.あなたは、どのような種類のギャンブル等を行っていますか(複数回答可)
<全体……100.0%>
・競馬……39.4%
・競艇……9.3%
・競輪……6.6%
・オートレース……3.2%
・パチンコ……32.9%
・パチスロ……24.2%
・宝くじ(ロト・ナンバーズ等も含む)……53.9%
・サッカーくじ……15.6%
・インターネットを使ったギャンブル(上記を除く)……1.8%
・海外のカジノ……1.7%
・その他……3.3%
3.競馬、パチンコ、宝くじで、頻度と施設に入ってから出るまで1度に使う金額
本人だけでなく、家族の家計を巻き込む「ギャンブル依存症」
消費者庁HP「ギャンブル等依存症でお困りの皆様へ」によると、「ギャンブル等依存症」について、パチンコや競馬といったギャンブル等にのめり込んで、コントロールができなくなる精神疾患のひとつと定義されており、下記のような問題を生じさせるとされています。
・うつ病などの健康問題
・ギャンブル等を原因とする多重債務や、貧困といった経済的問題
・家庭内の不和などの家庭問題
・虐待や自殺、犯罪などの社会的問題
ギャンブル等依存症は、適切な治療と支援により回復が十分に可能です。しかし、放置しておくと症状が悪化するばかりか、借金などの問題が深刻化することが懸念されます。
したがって、消費者庁「消費者ホットライン」や金融庁「多重債務者向け相談窓口」、公益財団法人「日本クレジットカウンセリング協会」など、ギャンブル依存症の諸症状に対応する相談窓口が設けられています。
妻が「家計の異変」に気づけなかったワケ
筆者はA夫婦から一連の話を聞き、気になるところがありました。それは、A家の家計管理方法についてです。
A家は、夫婦の収入から毎月支出に必要な分を、あらかじめ家計用に作った共通口座に入れて管理していました。しかし、この口座は長年Aさんが管理しており、退職金についてもAさん個人の口座に預金していたため、妻が老後のための生活資金が減っていることに気づくのが遅れたようです。
現在、A家の毎月の収入は、Aさんの年金と妻のパートを合わせて約26万円です。その一方で、毎月の支出は、Aさんの現役時代と変わらず月35万円。ここに先述のサウナ代やギャンブル代が加われば、貯蓄が減っても致し方ありません。
筆者は、家計は妻に一任することとし、まずAさんは治療に専念してもらうことを提案しました。そして、少しずつ携帯電話の通信費や保険料、サブスクリプションの料金といった固定費を見直し、現在の収入に合った支出額の削減を行うよう助言しました。
後日談
後日、Aさんが再び事務所にみえて、その後の様子について話してくれました。A夫婦は筆者の提案どおり家計を見直したほか、Aさんは同じ悩みを抱える人たちが定期的に集まる「自助グループ」に通い始めたそうです。
「自分は大丈夫だと思い込んでいましたが、まさか病気だったとは……。ギャンブルにハマることは恥ずかしいことだと内心後ろめたい気持ちもありましたが、自助グループに行ってみたら同じ悩みを抱えた仲間がいると知り、安心しました。しっかり自分と向き合い、これからは妻や子どもたちを困らせることのないように改心します」と、Aさんは語ってくれました。
消費者庁によると、ギャンブル依存症を発症する際は、「家庭行事を顧みなくなる」「金銭的事情について暴言を吐く」など、さまざまな兆候が表れるようです。
自身や家族がこうした兆候に気づいたら、ためらうことなく専門の医療機関を受診するとともに、今回のA夫婦のように、家計を守る手段の検討が重要です。
牧野 寿和
牧野FP事務所合同会社
代表社員
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