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親父、たくさん遺してくれてありがとう…〈年金月24万円・退職金2,000万円〉分相応の老後を送る67歳長男だったが、90歳・我が子を想う父の死で一転、破滅へ。元凶となった「遺言状の中身」【FPの助言】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年9月21日 10時45分

親父、たくさん遺してくれてありがとう…〈年金月24万円・退職金2,000万円〉分相応の老後を送る67歳長男だったが、90歳・我が子を想う父の死で一転、破滅へ。元凶となった「遺言状の中身」【FPの助言】

(※写真はイメージです/PIXTA)

故人の意向を記す「遺言状」。親から子へ遺された場合、我が子を想って遺した財産の継ぎ先が書かれているでしょう。しかし、なかにはもらわなければよかったと後悔する相続財産もあって……。本記事では、鎌田さん(仮名)の事例とともに、相続における注意点についてFP相談ねっと・認定FPの小川洋平氏が解説します。

90歳父の死…思いがけない相続

鎌田遼平さん(仮名/67歳)は妻と2人で早期リタイア生活を送っています。長年勤務した会社を60歳で定年退職し、それまで積み上げた資産1,000万円に加え、退職金2,000万円を受け取り、当初は年金も繰り上げをして月額24万円を受け取りながら生活していました。

5年ほど前、鎌田さんが62歳になったころに遼平さんの父の貞夫さん(仮名/90歳)がこの世を去りました。高齢にも関わらず畑仕事をしたり、自分で食事の準備をしたりするなど亡くなる直前まで元気でいたものの、ある日の明け方に急性心筋梗塞を発症。苦しむ父親からの緊急連絡を受け、鎌田さんはすぐに救急車を呼びましたが、病院でそのまま息を引き取ったのです。

父が遺した遺言状

姉の博美さん(仮名)と父の葬儀を終えて一息ついたあと、父が遺言を遺していたことがわかります。父の財産は、現預金2,000万円ほどと、保有していたアパートの5棟でした。父は不動産の分割は難しいと考えたのか、姉の博美さんには現預金全額、アパート5棟は鎌田さんに相続させると遺言に記してあったのでした。

こうして父の不動産を引き継ぐことになった鎌田さん。不動産投資の知識はほとんどありませんでしたが、満室時で毎月300万円程度の家賃収入がある不動産を相続することになり、有頂天になります。

「親父は本当にいいものを遺してくれた。俺たちのために、こんなにたくさん遺してくれてありがとう」そう父に心から感謝します。

思わぬ収入源を手にしたことで鎌田さんの生活水準は上がり、外食の回数が増え、旅行にも頻繁に行けるようになり、お金の心配をせずに楽しく過ごせる老後を手にすることができました。

知らなかった…不動産経営の落とし穴

それから5年が経ったころ、鎌田さんは思わぬ悩みを抱えることになったのでした。

「お金がない……」。

家計が赤字になった理由

アパート経営には固定資産税や火災保険料、修繕費、管理費用などの経費が掛かります。そのため、家賃収入から必要な経費を差し引いて得られた利益が不動産収入としての利益となります。また、給湯機やエアコンなど、各部屋の設備が劣化すると、所有者である鎌田さんに修理をする義務があり、それらの修繕費も発生します。それが5棟分も重なってくるため、高額な費用の支払いが段々と苦しくなってきます。

さらに、不動産経営の素人である鎌田さんから抜け落ちていたのは、経費と税金による支出です。

家賃収入から得られた利益は、確定申告をしなければなりません。家賃収入は、公的年金などの所得と合わせて所得として合算されるため、所得税や住民税、国民健康保険料の課税対象となり、翌年以降支払う必要があります。しかし、これまでに不動産経営の経験がなく、利益がどの程度出るのか、毎月の収支がどうなるのかをまったく見ずに家賃収入を使ってしまっていたのです。つまり、そういった経費や税金を考えず、収入を大幅に支出が超えてしまう水準の生活を送っていたということです。

また、アパートを継いだ当時、満室経営となると5棟合計で月に300万円程度の収入がありましたが、周辺に新しいアパートが次々と建築されるなかでは、鎌田さんの古いアパートの入居者は減る一方です。家賃を下げて入居者を増やそうという試みもしましたが、入居者が入るようになっても満室時の収入は減り、入居者もそれまでよりも低い所得層の人が集まるようになり、家賃滞納などのトラブルが増えるように。

不動産会社からはリフォームを勧められますが、手元のお金に余裕がなく、入居者が増えるかどうかもわからない投資をする気にはなれず……。

結果、古くて家賃が安いアパートのまま経営を続けることになり、資金繰りと家賃の悩みを抱え、現状を把握できないままどうしたらいいかと頭を抱えることになったのでした。「このままでは破滅だ。こんなことになるなら、もともとなければよかった……」鎌田さんは後悔しています。

資産相続について生前に行っておくべきこと

今回、鎌田さんが相続をきっかけに生活資金を失ってしまった理由は、不動産経営を知らないまま相続してしまったことです。

「子供達に賃貸物件を遺して年金の代わりに……」このように考えて子供に賃貸物件を相続財産として遺す人も多いようです。不動産を上手く活用することで相続税の圧縮にもなり、家賃収入を生む資産になるためです。

しかし、不動産経営はあくまで「経営」です。どういった経費が掛かるのか、いつ、どのくらいのお金が出入りするのか、こういった資金繰りの管理をせずに入ってきたお金を使ってしまうと、鎌田さんのように手元のお金を使い過ぎてしまうことがあります。

また、古くなれば安易に家賃を下げるのではなく、家賃を下げなくても入居者が入ってくれるように屋根や外壁、室内のリフォームのためにお金を掛けたほうがいいのか、まずはそういった検討をするなど、経営判断が必要となります。資金管理や経営ができない人に不動産を手渡してしまい、今回のようなことになってしまう事例は少なくありません。「我が子だから大丈夫、きっと自分で調べてきちんとやっていくさ」という楽観的な考えで我が子を苦しめる事態になっては、本末転倒でしょう。

高い相続税を払うことになったとしても、現預金や生命保険などで遺したほうが、のちのトラブルは少ないものです。生前に相続対策を考えるときは、相続人が受け取って困るような結果が想定されるものに関しては、事前に売却して現金化しておくことが必要な場合もあります。

大切な遺産を、誰にどのように遺すか

鎌田さんのように、相続がきっかけでかえって資産を失ってしまうような事例もあります。また、相続する資産価値よりも負債のほうが大きく、相続するメリットがないようなケースも想定されます。

令和5年司法統計年報3家事編によると、相続放棄の受理件数は28万2,785件にもなり、過去最高の件数となっています。もちろん、それ以外の家族間での話し合いにより相続放棄するようなケースもありますが、相続放棄せずに相続したら負の財産を引き継いでしまうという家族も一定数いるのです。

自分の資産を遺された家族にどう遺したいのか、またどのように資産を配分し、その理由と想いを家族に伝えるのか、こういったことをまだ元気なうちに考える必要があります。

小川 洋平

FP相談ねっと

CFP

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