愚かでした…「退職金3,000万円」60歳の定年サラリーマン、銀行の特別待遇に意気揚々。初めて投資に挑戦も「わずか25日」で大後悔のワケ
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年9月20日 6時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
多くの企業が採用する60歳定年。そのあとも継続雇用で働き続けるのが一般的で、再雇用制で非正規社員として働き続ける人が多いようです。その場合、定年を迎えた時点で退職金を手にするもの。まとまったお金を手にしてホクホクしていると、銀行から連絡が入るのも定番。そしてこのあと、大ピンチに直面することも、よくあるパターンのようです。
60歳定年で受け取る大卒サラリーマンの退職金、平均1,900万円
長寿化が進むなか、希望すればいつまでも働ける環境が整いつつあります。来年4月からは65歳までの雇用確保が義務となり、ほとんどの企業がその対応を完了しています。
企業側の対応としては、「定年制の廃止」「定年の引上げ」「継続雇用制度の導入」のいずれかの処置が求められていましたが、定年制を廃止したのは3.9%、定年年齢を引き上げたのは26.9%、継続雇用制度を導入したのは69.2%でした。ほとんどの企業で「定年という考え方はそのまま」という状況です。
定年年齢はどうなったのか、というと、「60歳」が66.4%、「61~64歳」が2.7%、「65歳」が23.5%、「66~69歳」が1.1%、「70歳以上」が2.3%(前述の通り、定年制廃止が3.9%)。規模の小さい企業ほど人材確保の面で定年年齢を引き上げる傾向にありますが、日本の大多数の企業で「60歳」がひとつの区切りになる現状は変わらないようです。
加藤和也さんは(仮名・60歳)先日、大学を卒業して以来勤めてきた会社を定年となりました。勤めている会社では継続雇用制度として、再雇用制度を導入しているといいます。
継続雇用制度のほか、勤務延長制度を導入したり、どちらかの制度を利用するか選択できたりするケースも。再雇用制は定年でいったん退職となり、改めて雇用契約を結び直すのが一般的。契約社員や嘱託社員など、非正規社員として再雇用するケースが多いようです。
一方、勤務延長制度は定年後もそのまま変わらず勤務できる制度。再雇用は少なからず“新規一転”、一方でモチベーションが低下するということもありますが、勤務延長制であれば“これまで通り”なので、モチベーションを保ちやすいというメリットも。ただ、企業側としては人件費の点では再雇用制度のほうがメリットが多いとされています。
もうひとつ退職金の違いも。再雇用制の場合、定年のタイミングで退職金が支払われますが、勤務延長制の場合は実際に退職したときに支払われるケースが多いようです。
再雇用制を利用した加藤さんは、定年を迎え退職金を手にしてホクホク顔だとか。
厚生労働省『令和5年就労条件総合調査』によると、定年退職による退職金額は、大卒で平均1,896万円。さらに勤続年数別にみていくと、「35年以上」で平均2,037万円、「30~34年」で1,891万円、「25~29年」で1,559万円、「20~24年」で1,021万円。企業別にみていくと、従業員「30~99人」で1,282万円、「100~299人」で1,347万円、「300~999人」で1,662万円、「1,000人以上」で2,191万円です。
加藤さん、大企業を勤め上げ、手にした退職金は2,500万円ほどと平均以上。ホクホク顔になるのも頷けます。
定年退職金あるある…退職金が振り込まれた銀行から1本の電話
平均以上の退職金を手にしてホクホク顔の加藤さん。そんな笑顔が一転する出来事が起きたといいます。きっかけは、退職金が振り込まれた銀行からの連絡。
――この度は定年、おめでとうございます。私たちは退職者様向けにさまざまなプランを用意しています。一度、ご説明を……
銀行が直々に連絡をしてくることなど、今まで一度もありません。恐縮する気持ちでいっぱいになり、都合をつけて銀行に行ったという加藤さん。約束の日に銀行を訪れると、「加藤様、こちらへ」と別室に通され、お茶まで出てきたといいます。
――こんな特別待遇……
このあとも、恐縮しっぱなしだったという加藤さん。その場で提案されたのは、「退職金プラン」。破格の高金利の定期預金(6ヵ月)で、投資信託購入が条件というものでした。
――新NISA、聞いたことはありますか? 今、普通預金に預けたままはリスクです。分散して運用することをおすすめしています
そんな売り文句だったか……加藤さん、少々うろ覚えだといいますが、「銀行さんのいうことだから」と、半分を定期預金、半分で投資信託の購入を決めたといいます。
これまで仕事ひと筋だった加藤さん。投資には目もくれず、資産運用といえば貯金一択でした。初めての投資……気分は非常に高揚していたといいます。
しかし、週末に金融機関に勤めていた大学の同級生と会ったとき「それは引っかかったな」とひと言。
――手数料、高いだろ
定期預金の金利は6ヵ月5%、一方で、投資信託の購入手数料は3%。
定期預金の利子:1,250万円×5%×(6/12ヵ月)=31万2,500円
投資信託の購入手数料:1,250万円×3%=37万5,000円
すでに投資信託購入時の手数料が定期預金の利息を上回っているのです。さらに投資信託の取引の際の手数料も相当高いことがわかりました。
――騙されたのか、俺?
――騙されてはいないけど、もう少し考えるべきだったな
さらに追い打ちをかける出来事が。銀行での特別待遇に意気揚々だった日から25日、日本中が大騒ぎになった株価の大暴落。投資デビューしたての加藤さんには、あまりに刺激的でした。
――もうだめだ、俺は破産してしまう
パニックになり、友人に電話をかけた加藤さん。「とりあえず落ち着け」といわれ、冷静さを取り戻したといいます。
金融広報中央委員会『金融リテラシー調査2022年』によると、購入時の商品性の理解として、投資信託購入者のうち22.8%が「商品性をあまり理解していなかった」と回答。さらに6.8%は「商品性を理解していなかった」と答えています。投資初心者のなかには「元本が保障されたものではないことすら知らなかった」という人も。資産運用が当たり前になるなか、金融知識が低いまま参入し、大損害を被るケースがあとを絶ちません。
――恥ずかしながら……本当に愚かですよね
恐縮しっぱなしの加藤さん。「今からでも遅くない」と“お金の勉強”を始めたといいます。
[参考資料]
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