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自宅は長男が、銀行預金は二男が相続…兄弟間で揉めない「完璧な遺産分割協議書の中身」【弁護士が解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年9月28日 14時45分

自宅は長男が、銀行預金は二男が相続…兄弟間で揉めない「完璧な遺産分割協議書の中身」【弁護士が解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

遺産分割協議書を作成するには、さまざまな書類が必要となります。では、遺産分割協議書の作成にはどのような書類が必要となるのでしょうか? また、遺産分割協議の成立後、遺産分割協議書を使って行う手続きにはどのようなものがあるのでしょうか? 本記事では、遺産分割協議書の必要書類や遺産分割協議書を使って行う手続きについて、Authense法律事務所の堅田勇気弁護士が詳しく解説します。

遺産分割協議書の基本的な概要

故人(「被相続人」といいます)の遺産をわけるには、原則として遺産分割協議をして、遺産分割協議書を作成しなければなりません。はじめに、遺産分割協議と遺産分割協議書の概要を解説します。

「遺産分割協議」とは?

遺産分割協議とは、相続人全員で行う遺産わけの話し合いです。人が亡くなると、遺言書がない限り、亡くなった方が有していた財産は自動的に分割されるものを除き、相続人全員の共有となります。しかし、共有のままでは遺産の使い勝手がよくないうえ、原則として預金を解約したり株式などの有価証券を換価したりすることもできません。

そこで、確定的に遺産をわけるために、遺産分割協議をすることとなります。遺産分割協議では、誰がどの遺産を相続するかについて、相続人全員で話し合います。

遺産のわけ方はさまざまであり、「自宅土地建物は長男が相続し、A銀行の預金は二男が相続する」のように遺産ごとにわける方法や、「唯一の遺産である自宅土地建物を長男が相続する代わりに、長男が二男に対して〇円を支払う」のように金銭の支払いでバランスを取る方法など、さまざまな方法が考えられます。

なお、遺産分割協議を成立させるには相続人全員による合意が必要であり、一人でも合意しない相続人がいる場合は協議を成立させることができません。

相続人間で遺産分割協議が成立せずお困りの際や、相続人のなかに行方不明や認知症の者などがいて遺産分割協議を進めることができない場合などには、弁護士に相談することをお勧めします。

「遺産分割協議書」とは?

遺産分割協議書とは、相続人間で合意した遺産分割協議の結果を記した書面です。相続人全員が協議内容に合意していることを示すため、遺産分割協議書には相続人全員が実印で押印します。

遺産分割協議書に決まった様式はありません。ただし、遺産分割協議書は遺産の名義変更や解約手続きなどに使用するため、誰がどの遺産を取得することになったのか誰が見てもわかるよう、明確に記載してください。また、手書きで作成してもパソコンで作成しても構いませんが、協議の内容を明確に記載することが必要です。

遺産分割協議書を自分で作成することが難しい場合は、弁護士などの専門家に作成してもらうとよいでしょう。

遺産分割協議書作成の流れ

遺産分割協議書は、どのような流れで作成すればよいのでしょうか? 相続が発生してから遺産分割協議書を作成するまでの一般的な流れを解説します。

相続人・遺産を確定する

はじめに、相続人の確定を進めます。なぜなら、遺産分割協議には相続人全員が参加する必要があり、一人でも協議から漏れた場合は遺産分割協議が無効となってしまうためです。

相続人の確定は記憶や家族の証言などだけで行うのではなく、被相続人の戸籍謄本や除籍謄本などの書類を取り寄せる必要があります。相続人の確定のために必要な書類は、後ほど改めて解説します。

相続人の確定と並行して、遺産の確定を進めます。どのような遺産がどの程度あるかわからなければ、遺産分割協議を行うことが難しいためです。確定した遺産は、一覧表にまとめておくと遺産分割協議の参考としやすいでしょう。

なお、相続人確定のための必要書類を自分で取得することが難しい、被相続人と同居していた相続人がいないなどの理由により被相続人の遺産を把握することが難しいといった場合にも、弁護士などのサポートを受けることをお勧めします。

遺産分割協議を成立させる

相続人が確定でき、遺産の洗い出しも完了したら、遺産分割協議を行います。遺産分割協議には相続人全員が参加する必要があり、成立させるには相続人全員による合意が必要です。

なお、遺産分割協議は必ずしも相続人全員が一堂に会して行う必要はなく、電話などで個々に合意を取り付ける形をとっても構いません。

遺産分割協議書を作成する

遺産分割協議がまとまったら、合意した内容を記した遺産分割協議書を作成します。遺産分割協議書は、誰がどの遺産を相続することになったのかがわかるよう、明確に記載してください。記載があいまいである場合は手続きに使用できず、追加の書類が必要となる可能性があります。

相続人全員が署名押印する

遺産分割協議書を作成したら、相続人全員が署名と実印での押印を行います。押印をもらうタイミングで、印鑑証明書も預かるようにするとスムーズです。

遺産分割協議書の作成に必要な書類

遺産分割協議書の作成には、さまざまな書類が必要となります。ここでは、遺産分割協議書の作成に必要となる主な書類を紹介します。なお、ここで紹介する書類は遺産分割協議書を作成するためだけに必要となるのではなく、実際に遺産の名義変更や解約をする際にも必要となるものです。そのため、遺産分割協議書を作成する段階で書類を集めておくとスムーズでしょう。

「被相続人の出生から死亡まで」の連続した戸籍謄本等…最新の戸籍謄本だけでは不十分な理由

被相続人の相続人を確定するため、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本、除籍謄本、原戸籍謄本が必要です。

被相続人の子どもは原則として相続人となりますが、最新の戸籍謄本を見ただけでは、被相続人の子どもを全員確認できるわけではありません。なぜなら、現代の戸籍は「夫婦と子ども」で編成されることとされており、被相続人の子どもが婚姻をしたり子どもが産まれたりした場合は、被相続人の戸籍から抜けることになるためです。

しかし、出生時点などには被相続人と同じ戸籍に入っていることが原則であるほか、婚外子や養子などであっても認知をした時点や養子縁組をした時点で被相続人の戸籍に表示されます。そのため、出生から死亡までの連続した戸籍謄本、除籍謄本、原戸籍謄本を確認することで、被相続人の子どもを洗い出せるようになります。

なお、相続人が被相続人の兄弟姉妹や甥姪である場合は、これに加えて被相続人の父母それぞれの出生から死亡までの連続した戸籍謄本、除籍謄本、原戸籍謄本も必要です。これにより、父母の子ども(つまり、被相続人の兄弟姉妹)を洗い出せるためです。

また、被相続人の子どものなかに被相続人より先に亡くなった者がいる場合はその亡くなった子どもの出生から死亡までの連続した戸籍謄本等も取得しなければなりません。なぜなら、この場合にはその亡くなった子どもの子ども(被相続人の孫)が代襲して相続人となるためです。

自分で集めることが難しい場合は、弁護士などの専門家へご相談するとよいでしょう。取得手数料は、戸籍謄本は1通450円、除籍謄本と原戸籍謄本は1通750円です。

「相続放棄」をした人がいる場合は必要な書類が増える

相続人全員の印鑑証明書

遺産分割協議書は、相続人全員の印鑑証明書とセットで使用することが原則です。なぜなら、印鑑証明書があることで、遺産分割協議書に押した印が実印であることの証明ができるためです。印鑑証明書を代理で取得するには印鑑登録カードなどを預かることになるため、よほど信頼している同居の家族などでない限り、代理での取得は難しいでしょう。

そのため、印鑑証明書は各相続人に取得してもらったうえで、遺産分割協議書への押印時に預かるようにするとスムーズです。印鑑証明書の取得費用は市区町村によって異なりますが、1通200円から400円程度であることが一般的です。

相続人全員の戸籍謄本

相続人が生存していることを確認するため、相続人全員の戸籍謄本が必要です。戸籍謄本の取得費用は、1通450円です。

被相続人の住民票除票

被相続人の最後の住所を確認するため、被相続人の除票が必要です。除票は、被相続人の最後の住所地を管轄する市区町村役場で取得できます。取得手数料は市区町村によって異なりますが、1通200円から400円程度です。

相続放棄をした人がいる場合は相続放棄受理証明書

相続放棄をした人がいる場合は、その者についての相続放棄受理証明書が必要です。相続放棄とは、相続開始後一定期間内(原則として3ヵ月以内)に家庭裁判所に申述することで、はじめから相続人ではなかったことになる手続きです。

正式に相続放棄をした者はもはや相続人ではないことから、遺産分割協議に参加する必要もなければ、遺産分割協議書に署名や押印をもらう必要もありません。その代わり、本当に相続放棄が受理されたことを確認するため、相続放棄受理証明書が必要となります。相続放棄受理証明書は相続放棄をした者が取得して送ってくれることもありますが、家庭裁判所へ請求することで、ほかの相続人が取り寄せることもできます。

財産の特定書類

遺産分割協議書は作成後、遺産の解約や名義変更などの手続きに使用します。そのため、財産を特定したうえで、それぞれの財産を誰が取得することになったのか明確に記載しなければなりません。財産を明確に記載するため、遺産分割協議書に記載する遺産の種類に応じて次の書類などが必要です。

・不動産:全部事項証明書(法務局で取得)、固定資産税課税明細書 ・預貯金:預貯金通帳または残高証明書 ・有価証券:残高証明書 ・車:車検証

遺産分割協議書を使用する主な手続きと必要書類

遺産分割協議書は、作成後にさまざまな手続きに使用します。ここでは、遺産分割協議書遺産部を使用する主な手続きを紹介するとともに、各手続きに必要となる書類の例を解説します。

ただし、状況によってはここで紹介した以外の書類が必要となることもあるため、実際に手続きをする際は、手続き先または弁護士などの専門家へ相談することができます。なお、次の書類をまとめて「相続手続き基本書類」と定義します。

・遺産分割協議書 ・相続人全員の印鑑証明書 ・被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本等など、相続人確定に必要となる書類 ・相続人全員の戸籍謄本 ・被相続人の住民票除票 ・相続放棄をした者がいる場合の「相続放棄受理証明書」

不動産の名義変更(相続登記)

不動産の名義変更とは、被相続人名義の不動産を相続人の名義へと変える手続きです。この手続きは、その不動産を管轄する法務局で行います。相続登記の主な必要書類は、次のとおりです。

・相続手続き基本書類 ・相続登記申請書(自分で作成) ・不動産を相続する相続人の住民票 ・不動産の固定資産税評価証明書または評価通知書(不動産の所在地を管轄する市区町村役場で取得) ・不動産の登記事項証明書 ・相続関係説明図(または法定相続情報一覧図)

預貯金の解約

預貯金の解約とは、被相続人の普通預金や定期預金などの預貯金を解約し、預貯金を引き出す手続きです。この手続きは、被相続人が口座を有していた各金融機関で行います。預貯金の解約には、原則として次の書類などが必要です。

・相続手続き基本書類 ・金融機関所定の「相続届」など(手続き先の金融機関で取得) ・被相続人の通帳とキャッシュカード(なければ紛失扱いで手続き可能)

有価証券の名義変更・移管

有価証券の名義変更や移管とは、被相続人の証券口座を解約し、預託していた有価証券(上場株式や投資信託など)の名義を相続人へと変え、相続人が有する証券口座へ移し替える手続きです。この手続きは、被相続人が口座を有していた証券会社で行います。有価証券の名義変更や移管には、次の書類などが必要となります。

・相続手続き基本書類 ・証券会社所定の「相続届」など(手続き先の証券会社で取得)

自動車の名義変更

自動車の名義変更とは、被相続人名義の自動車を相続人へと変える手続きです。この手続きは、運輸支局などで行います。自動車の名義変更に必要となる手続きは、次のものなどです。

・相続手続き基本書類 ・車検証 ・車庫証明書(あらかじめ、今後の駐車位置を管轄する警察署で取得)

ただし、名義変更をしようとする自動車の時価によっては一部の書類を省略できます。

相続税申告

相続税とは、遺産などに対してかかる税金です。各相続人が納めるべき相続税の額は遺産分割の内容によって異なるため、相続税申告には、原則として遺産分割協議書の写しを添付しなければなりません。相続税申告には計算根拠や計算過程を示すさまざまな書類が必要です。相続性申告を自分で行うことは容易ではないため、税理士などの専門家にご相談ください。

遺産分割協議がまとまらないと…

遺産分割協議書を作成するためには、遺産分割協議がまとまっていなければなりません。では、相続人間で遺産分割協議が成立しない場合は、どうすればよいのでしょうか? 最後に、遺産分割協議が成立しない場合の対応を解説します。

遺産分割調停を申し立てる

遺産分割協議がまとまらない場合は、遺産分割調停を申し立てて解決を図ることになります。遺産分割協協議とは、家庭裁判所で行う話し合いの手続きです。話し合いとはいえ、相手方と直接対峙するのではなく、家庭裁判所の調停委員が双方から交互に意見を聞き、意見を調整する形で進行します。そのため、冷静な主張がしやすくなり、意見がまとまりやすくなります。

遺産分割審判に移行する

遺産分割調停を経ても相続人間の合意が得られない場合には、遺産分割調停が不成立となります。遺産分割調停が不成立となると、自動的に遺産分割審判へ移行します。遺産分割審判とは、家庭裁判所に遺産のわけ方を決めてもらう手続きです。

家庭裁判所が下した審判には相続人全員が従わなければならず、仮に不服がある場合は審判書を受け取ってから14日以内に即時抗告を行うことができます。

相続人が多い場合は特に注意が必要

遺産分割協議書の必要書類について解説しました。遺産分割協議書の作成や作成した遺産分割協議書を使って行う手続きには、さまざまな書類が必要となります。

特に、相続人が多い場合や被相続人の兄弟姉妹などが相続人となる場合は必要書類も多くなるため、書類を集めるだけでも一苦労です。自分で書類を集めることが難しい場合や遺産分割協議書を作成することが難しい場合は、弁護士などの専門家のサポートを受けるとよいでしょう。

堅田 勇気

Authense法律事務所

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