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本当に知らなかったんです…3億円相続予定で「年金不要論」に賛同していた52歳元会社員が戦慄。年金事務所から送られてきた「赤い封筒」の正体【FPが警告】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年9月30日 12時45分

本当に知らなかったんです…3億円相続予定で「年金不要論」に賛同していた52歳元会社員が戦慄。年金事務所から送られてきた「赤い封筒」の正体【FPが警告】

(※写真はイメージです/PIXTA)

本記事の主人公である早田さん(仮名・52歳)は、ゆくゆく受け取れる3億円の資産があるからと国民年金の保険料支払いを軽視。色を変えながら年金機構からの通知を無視し続けます。その結果、思わぬ窮地に追い込まれることに……。本記事ではFPの青山創星氏が、早田さんの事例とともに、誰もが知っておくべき「国民年金保険料の未納」の注意点について解説します。

大手IT企業の社員から自営業者へ、そして年金不要論の罠に…

早田博司さん(仮名・52歳)は、大手IT企業でシステムエンジニアとしてキャリアを積み、安定した収入と社会的地位を得ていました。しかし、早田さんは50歳を目前に大胆な決断を下します。妻の反対を押し切り会社を辞め、自営業へと転身したのです。

「自分の時間は自分のもの。好きな仕事だけを選んで、充実した日々を送れる」。そんな希望を胸に、早田さんは晴れやかな顔で会社をあとにしました。

しかし、現実は彼の想像を超えて過酷なものでした。本来の仕事だけでなく、営業、経理、事務処理、すべてを一人でこなさなければならない日々。そのうえ、誤算だったのが「社交的だから営業力には自信がある。自営業になっても仕事を得ることはできる」と思っていたのに、現実はそうはいかなかったことです。

当初は会社員時代の人脈などを生かして仕事を得ていましたが、それも徐々に減り、ついに貯金を取り崩して生活をするようになりました。

さらに追い打ちをかけたのが、社会保障制度などの変化です。厚生年金から国民年金への切り替えにより、国民年金保険料が一人約20万円、しかも夫婦別々に支払いが必要であることがわかりました。その上、国民健康保険料が家族で約80万円も全額自己負担となりました。思うように稼げない中で、それらの支払いすら大きな重荷となっていきました。

早田さんは、以前心房細動のカテーテル治療で約250万円の治療費がかかりましたが、高額療養費制度の適用を受けて10万円程度の自己負担で済ますことができました。そのような経験もあったため、国民健康保険の保険料はどんなに苦しくても払っておきたいと考えていました。

その一方で、ネット上で頻繁に目にする「年金は将来もらえない」「年金保険料を払うのは無駄」という情報に惑わされてしまいます。

実は、早田さんは将来的に両親から不動産を含む資産を相続する予定があり、その額は3億円以上になる見込みです。ただし、現在は両親からの援助は一切受けておらず、そのため直近の資金には困っていたものの、老後の生活資金には困らないという状況にあったのです。

こうしたさまざまな事情が重なった結果、「年金なんて払わなくても、3億円あれば十分老後は安泰だ」。そう思い込んだ早田さんは、自分の分の国民年金の保険料支払いを無視するようになりました。

無視された警告 - 青から黄色、そして運命を分ける"赤い封筒"

年金機構からの通知は交通信号のように色を変えながら、早田さんの元へ届き続けました。

最初に届いたのは青い封筒。「特別催告状」と書かれたそれは、滞納処分や財産の差し押さえについても書かれていたものの、「そろそろ払ってくださいね」と優しく諭すかのような印象を受けました。早田さんは、「たかが年金だ」と軽く考え、引き出しにしまい込みました。次に届いたのは黄色い封筒。しかし、この封筒もすぐにゴミ箱へ直行。

そして、とうとう"赤い封筒"が到着します。その赤い色は、まるで早田さんの危機的状況を象徴するかのようでした。開封すると、指定期限までに納付がない場合は滞納処分を開始する。滞納処分が開始されると延滞金が課され、財産が差し押さえられる場合がある。被保険者に連帯納付義務者(世帯主および配偶者)がいる場合、連帯納付義務者に対しても財産の差し押さえを行う場合があることなどが書かれていました。

「財産の差し押さえ? そんなまさか……」

妻にも事の重大性を伝えざるを得ない状況に。「支払わなくても大丈夫だと思っていた、こんなことになるとは知らなかった」という彼の言葉に、妻は呆れながらも、年金納付を夫に任せっきりにしてしまっていたことを反省しました。

慌てた早田さんは、知り合いのFPに電話で相談。年金の重要性などを改めて聞くと共に、このまま放っておくと督促状が来て、督促指定期限を過ぎると滞納処分が始まって財産の差し押さえにつながること、差し押さえされると預金の引き出しもできなくなり、社会的信用の失墜にもつながりかねないこと、保険料免除や猶予の制度を利用できるか確認する方法もあることなど、さまざまなことを知りました。

家計が苦しく手持ちが少ないなかで数十万円の年金納付は早田さんに大きな痛手です。先に受け取れるであろう資産がどれだけあっても、何の役にも立ちません。悩んだ結果、早田さんは、覚悟を決めて両親に事情を説明。両親からも呆れられながらも、年金保険料を立て替えてもらうことにしました。

そして、赤い封筒の届いた3日後には年金保険料を納付することができ、財産の差し押さえは回避することができたのでした。

早田さんの経験から学ぶこと

その後、早田さんは「年金納付をやめよう」という判断をしてしまうような経済状態ではいけないと反省し、自分の働き方を見直すことにしました。

「好きな仕事だけをして生きたい」と考えての脱サラでしたが、結果として早田さんにはサラリーマンが合っていたことに気づいたようです。両親から相続を受けるのはまだ先なので、安定した家計を保つために、50代からの転職活動に苦労しながらも励んでいます。

今回の件で早田さんが学んだことをまとめると以下のようになります。

  1. 年金保険料の支払いは資産の有無に関わらず国民の義務。
  2. 年金機構からの通知を無視すると、財産差し押さえなどの深刻な事態を招く可能性がある。
  3. 年金未納は本人だけでなく、家族全体に影響を及ぼし、経済的困難や家族関係の悪化を招く恐れがある。
  4. 問題が発生した場合、早期の対応が重要です。不確かな情報に基づく思い込みの行動は避ける。
  5. 年金制度は老後の生活保障だけでなく、障害年金や遺族年金としての機能も持つ、多面的な社会保障制度。
  6. インターネット上の不確かな情報を鵜呑みにせず、公的機関や専門家からの正確な情報を基に判断することが重要。
  7. 「相続予定の資産」と「現在使える資産」は異なります。将来の不確実な資産をあてにした判断は危険。
  8. 家族とのオープンなコミュニケーションを保ち、重要な決定は家族で相談して行うことが大切。

早田さんはFPに相談した際、投資の神様と呼ばれるウォーレン・バフェット氏の「リスクは、自分が何をしているのかわからないことから生じる」という言葉を教わりました。

この言葉は、正しい情報に基づいて正確に理解・判断することの重要性を強調しています。正確な知識を持たないまま行動すると、リスクが高まるという教訓です。年金不要論などに惑わされることもあるかもしれませんが、それが早田さんのような危機を招く可能性をはらんでいることを忘れないようにしましょう。

青山 創星 ファイナンシャルプランナー

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