定年目前65歳サラリーマン「退職金は2,500万円です」…目を輝かせた銀行員に〈特別プラン〉を紹介され申込も、3ヵ月後に知ったむごい事実「さすがにひどすぎます」【FPの助言】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年10月3日 10時45分
(※写真はイメージです/PIXTA)
サラリーマンとして安定した収入を得てきたものの、目前に迫る年金生活……。定年退職前後での今後の収入減に対する不安。そんなタイミングで退職金という大金を手にしたら、少しでも増やしたいと思う人は多いでしょう。そんな人たちをターゲットにしている人たちもいて……。本記事では、Aさんの事例とともに退職金運用の注意点について、FPの牧元拓也氏が解説します。
退職金を使った老後資金運用
数ヵ月後に長年勤めた会社の退職を控えているAさんは現在65歳、現在の収入源は老齢年金と個人年金で合わせて年間270万円ほどです。もともと生活費が毎年240万円ほどであったので、収入が少なくても大丈夫だろうと思ってはいたものの、最近の物価の上昇が気になってこのままでいいのかと不安になり、銀行へ相談しに行きました。
銀行員「退職金専用プランが使えます」
銀行で老後の資金について相談したところ、「退職金の受取予定はありますか?」と尋ねられました。上場企業に長く勤めていたこともあり、退職金は2,500万円程であると伝えたところ【退職金専用プラン】が使える、との提案を受けました。
「これは退職金の半分を定期預金、半分を投資信託に預けていただくと定期預金の金利が7%になります」との説明でした。
Aさんは投資経験もなく、貯金はずっと普通預金に預けています。普通預金の金利がようやく0.1%になった世の中で、金利7%と聞いて少し及び腰になってしまいました。ですが、定期預金であれば元本は保証されているし、半分は投資に回るということはもっと増やせる可能性もある、安全に資産を増やしていけば老後も安心だ、そう思って退職金を全額を使って申込をすることにしました。
退職金は金融機関の預金残高を増やせるチャンス
退職金専用の定期預金は多くの金融機関で取り扱っています。金融機関からすると、退職金は預金残高を大きく増やせる機会。特に大手メガバンクに比べて規模が小さい地方銀行や、信用金庫などにとっては絶好のチャンスです。そのため、お客様に選んでもらうために、いろいろなキャンペーンで魅力を高めようとしています。
よくあるのは以下のようなキャンペーンです。
・普通預金とセットの預入で金利上乗せ・投資商品とのセット預入で金利を上乗せ
・老齢年金の受け取り銀行に指定することで金利上乗せ
新NISAが始まり、世の中が投資へ目を向け始めるなか、いままで投資経験がなく、まだ動き出せていない人も多くいます。
そのような人にとっては定期預金は普通預金よりもお得で安心感があるでしょう。しかしこのような商品を選ぶときは注意が必要です。
条件付きの高金利
Aさんが預け入れをしたような退職金専用プランは、いろいろな【条件付き】であることが多いです。たとえば以下のようなことがあげられます。
例1「金利〇%は預入当初3ヵ月のみの適用です。以降は店頭表示金利となります」
金利7%など高金利を謳っているときは、適用期間が3ヵ月など非常に短いことが多いです。たとえ1,000万円預けても年利7%で3ヵ月間適用となると、
1,000万円×7%×3/12ヵ月=17万5,000円さらにここから20.315%の税金が控除されますので、
17万5,000ー3万5,551円=13万9,449円となり、実質リターンは1.39%です。大手銀行の定期預金はおおよそ年利0.125%なので、ローリスク高利回りな商品に見えても実際は最初の数ヵ月間だけということを理解せず契約し、あとから気づくという方も多いです。
例2「運用商品の比率は50%以上に設定する必要があります」「セットプランで選ぶ投資信託について、購入時手数料0円の商品は対象外です」
金融機関は預金への預入よりも、ほかの投資商品を販売したほうが収益が大きいことが多いです。そのため、定期預金を多めに預けたい投資未経験の方でも、セットプランを購入する場合は半分以上を投資商品に預けなくてはいけなくなります。
また投資商品の中でも、多くは投資信託の中から選ぶことになります。投資信託の手数料は商品・金融機関によって異なります。購入時手数料は無料から3%程度の商品が多いです。手数料が発生すること自体にはなんら問題はありませんが、購入時手数料が発生するのは、アクティブファンドであることが多いです。アクティブファンドの内容を理解せずにテーマ型、新興国などリスク性の高い商品などを選択してしまう場合もありますので、注意が必要です。
Aさんは投資未経験で深く理解もしないまま購入をしてしまいました。3ヵ月後、銀行でもらった資料をよく見ると、7%は3ヵ月間のみであって、投資信託は新興国債券ファンドになっていました。
キャンペーンや広告に惑わされないために
「私が投資未経験だから勧めたんですね。さすがにひどすぎます」がっくりと肩を落とすAさん。
日本も現在物価上昇(インフレ)が起きていますが、新興国では、私たちが想像するよりずっと深刻で異常な物価上昇(ハイパーインフレ)が先進国よりも起こりやすいのです。これは、新興国の不安定な経済状況における生活必需品の不足などが原因となって起こります。トルコやメキシコ、ブラジルなどの新興国債券は、リスク性の高い商品の1つです。
高金利のキャンペーンや広告はついつい飛びついてしまいがちですが、おいしい話には必ず条件や注意点があります。1ヵ所の銀行だけでなく、FPなど複数の機関に話を聞いて客観的に理解をしてから判断するようにしましょう。
牧元 拓也
ファイナンシャルプランナー
株式会社日本金融教育センター
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