「ロイヤル顧客」との関係構築が企業の命運を握る…新規開拓ではなく“顧客育成”が重要である理由
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年10月28日 11時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
ブランドや商品、サービスの熱狂的なファン・支持者である「ロイヤル顧客」。顧客全体の20%程度にもかかわらず、彼らの購入額は企業売上の実に80%を占めています。本記事では『コミュニティドリブン経営 ファン起点で広げるビジネスの新潮流/著者:小父内信也氏』(幻冬舎)より一部抜粋し、ロイヤル顧客の重要性について詳しく解説します。
「顧客中心の経営」が必須の時代になる理由
前回までのコラムで、「顧客中心の経営」が必須の時代になる理由として下記のうち3つをご紹介しました。
・理由1:人口減少によるLTV最大化へのシフト ・理由2:多様な競合の出現〜独自の価値に基づいた差別化が求められる時代〜 ・理由3:情報爆発時代の到来〜信頼できる情報を求める現代ユーザー〜 ・理由4:ロイヤル顧客による売上貢献度の高まり今回は、最後の「ロイヤル顧客による売上貢献度の高まり」について解説していきましょう。
ロイヤル顧客による売上貢献度の高まり
今後、持続的な企業価値向上のためには、ブランドや商品、サービスの熱狂的なファン・支持者である「ロイヤル顧客」との関係構築が重要になります。具体的には、以下の2点です。
①ロイヤル顧客の育成による顧客数に頼らない売上安定化(ロイヤル顧客自身の売上)
②ロイヤル顧客からの推奨による新たな顧客と市場の獲得(ロイヤル顧客が生み出す他者の売上)
つまり、自社のロイヤル顧客が生み出す売上への貢献度合いを高める必要があるわけです。
ロイヤル顧客の育成による売上安定化 新規開拓ではなく、顧客育成が重要な理由〜パレートの法則〜
まず1つ目の「ロイヤル顧客の育成による売上の安定化」という観点から説明していきます。
顧客中心の経営を実現するために、顧客の声に耳を傾ける。これは、新規開拓よりも既存顧客の育成に注力することを意味します。決して新規開拓が不要であるとは言いませんが、費用対効果は、顧客育成のほうが大きいと、私は考えます。なぜなら、ロイヤル顧客の売上貢献度は、想像以上に大きいからです。
これは、有名な「パレートの法則」で説明ができます。パレートの法則とは、20%の要素が全体の80%を生み出しているというもので、「2:8の法則」とも呼ばれます。これを企業に置き換えると、20%の顧客(ロイヤル顧客)による売上が、売上全体の80%を占めているというわけです。
私も初めてこの法則を聞いたときは、にわかには信じられませんでした。「たった20%の顧客だけで事業が成り立つ? まさか」。しかし、この法則は多くの事業、サービスで当てはまっていることが証明されています。
そして、パレートの法則を大きく上回る企業もあります。ファンマーケティングで有名な「カゴメ」は、上位2.5%のユーザーが売上の30〜40%を占めていると言いますし、クラフトビールで有名な「ヤッホーブルーイング」もやはり、上位10%のユーザーが売上の60%以上を生み出していると言います。つまり、20%にも満たない超ロイヤル顧客が企業の命運を握っている時代なのです。
株式会社ヤッホーブルーイングで顧客調査/体験設計の責任者を務めるジュンジュン氏(佐藤潤氏)は、ロイヤル顧客による売上貢献について、次のように話しています。
「弊社ではお客様のブランドロイヤルティを『ぞっこん度』という指標で定量的に捉えています。『なんとなく飲んでいる』から『すっかりハマっている』までの5段階でお客様のお気持ちを確認しています。その結果、上位と下位では購入額に10倍以上の開きがあり、上位のロイヤルティの高いお客様が会社の売上/利益を支えてくださっているのは確かです」
ロイヤルティの高さは、購入額、購入回数に直結する
ロイヤル顧客が売上の大部分を占める仕組みについて、図をもとに解説します。[図表1]は、顧客のロイヤルティを三角形で分類したもので、上にいくほどロイヤルティが高いことを示しています。なお三角形の下には、見込み顧客、潜在顧客が広く存在しています。
ロイヤル顧客(=熱狂的なファン)になればなるほど、購入額や購入回数は増えていきます。新商品が出るたびに購入してくれたり、自分の生活になくてはならないと、何度もリピート購入してくれたりします。飲食店も同様です。全国チェーンの外食産業などもロイヤル顧客が店舗の売上を支えてくれているものです。これは、疑う余地のない事実であり、多くの方にとっても納得感のある話なのではないでしょうか。
ロイヤル顧客は、企業・ブランドのサポーター
さらに、ロイヤル顧客は、企業・ブランドのファンですから、ときに企業の代弁者となって、SNSで発信したり口コミしたりすることによって、新しい顧客を連れてきてくれる効果も発揮します。
つまりロイヤル顧客は、売上だけでなく、マーケティングにも協力してくれる最強のサポーターなのです。ロイヤル顧客にフォーカスすることで、新規開拓も同時に実現できる。彼らがSNSで発信したレコメンド(推奨の声)、これを「リファラル」と呼び、口コミによる拡散効果の重要指標として注目している企業もあります。
これは、まさに「類は友を呼ぶ」状態。距離感や価値観が近いユーザー同士は、似たような趣味、思考を持つ傾向があり、同じようにロイヤル顧客になりやすいのです。「類は友を呼ぶ」。ロイヤル顧客マーケティングにおいて、これは非常に重要な概念です。ロイヤル顧客に向き合い、共創しながら事業活動を続けることで、ファンがファンを呼び、自然とその輪が大きく広がっていくわけです。
また、マーケティングの世界でよく知られている「1:5の法則」からも、ロイヤル顧客マーケティングの有効性は明らかです[図表2]。
この法則は、新規顧客の獲得コストが、既存顧客にリピートしてもらうコストに比べて、5倍かかるという経験則です。つまり新規顧客に対して、躍起になって手を尽くすよりも、既存の顧客にアプローチして、リピーターになってもらう努力をするほうが事業成長に結びつきやすい、ということになります。
このように、ロイヤル顧客に経営資源を集中することは、経済合理性の観点からも、非常に有効であると言えます。
ロイヤル顧客からの推奨による新規顧客の獲得〜ロイヤル顧客から広がる、信頼と共感〜
続いて、2つ目の「ロイヤル顧客からの推奨による新規顧客の獲得」という観点について、考えてみましょう。
マーケティングリサーチ会社の株式会社アスマークが全国の20代から50代の男女に「情報取得に関するアンケート調査」を実施したところ、全世代で信頼できる情報ソースは「友人・知人・家族」がトップ、次いで「専門家」「有識者」の順という結果が出ました。この結果から、現代ユーザーは専門家よりも、友人や知人・家族など、自分に近い存在からの情報を信頼していることがわかります。
熱狂的なファン=ロイヤル顧客は、まるで企業の代弁者のように、SNSで発信したり、近しい人々にブランドや商品を紹介したりしてくれるという特徴を持っています。それにより、ロイヤル顧客の周囲の人々もその声に共感、反応し、新しい顧客となりやすい。これが積極的なシェア(共有)のステージの効果です。
長くなりましたが、「顧客中心の経営」の必要性、重要性がお分かりいただけたのではないでしょうか。
小父内 信也
株式会社Asobica
取締役CCO
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