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明らかに異常…売上は急増も利益は横ばいで申告。50代社長が用意した新米税務調査官への「お土産」【税務調査の実態を税理士が解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年9月28日 10時45分

明らかに異常…売上は急増も利益は横ばいで申告。50代社長が用意した新米税務調査官への「お土産」【税務調査の実態を税理士が解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

いつくるか、いつくるか、と税務調査に備えている経営者や個人事業主の人もいるでしょう。なかには「お土産」まで用意しているという人も。本記事では、不動産会社のもとへ入った税務調査の実例から、税理士の清川英哲氏が税務調査の実態について解説します。

経営規模が小さくても税務調査は入る

筆者は現在、公認会計士・税理士・証券アナリスト・宅建士・ファイナンシャルプランナーとして活動しています。もともと消費者金融に勤めていました。

ここでは、筆者の税理士としての活動で目の当たりにした「税務調査」についてお話します。これまでに法人・個人併せ20回ほど担当した税務調査の経験のなかで、特に印象深かった実例を紹介していきます。

設立4年目の不動産賃貸業

読者の皆さまの中には、会社の役員や経営者、個人事業主の方もいらっしゃると思います。そうした立場の方が「自分の会社にはいつ税務調査が入るのだろう」と考えられたことは、おそらく1度や2度ではないでしょう。そして、経営者仲間に、何年周期で税務調査が入ったか聞いたことがある方も1人や2人ではないかもしれません。さらに、「自分のところは20年間で1度も入ったことがない」、「2年前に入ったよ」といった話を聞かれた方もいると思います。

今回は、設立4年目に税務調査が入った不動産賃貸業のケースから、税務調査が入る「周期」について、解説していきます。

税務調査では基本的に「3年間分」を見られる

税務調査が入った場合、どの程度遡って調査されると思いますか? 答えは、「基本的に」と限定すると、3年です。そのため、設立や個人事業を始めて4年目になったら、税務調査がやってきても不思議ではありません。

一方で、それなりに会社の規模が大きい、もしくは悪質性の高い会社や個人事業主などであれば5年、さらには7年遡られるケースもあり得ます。

筆者が初めて担当した税務調査も、5年。調査される期間が長いだけでなく、会社の本社と倉庫を同時に、それも抜き打ちで朝9時に乗り込まれるケースでした。そのあとに担当した、創業から税務申告をしたことがない居酒屋も同じく5年。

割と税理士として独立したばかりのことでしたので、当時は「5年」が基本だとも思ったほどでした。とはいえ、基本的に税務調査は、「3年」と考えておけば問題ないでしょう。

税務調査は基本的に顧問税理士に電話で知らされる

いつものことですが、今回も知らない電話番号から着信がありました。

税務署「〇〇税務署ですが、〇〇先生はいらっしゃいますでしょうか?」

筆者「はい、私です」

といった感じで、税務調査のことが淡々と伝えられます。映画『マルサの女』のように、いきなり会社にズカズカ入ってくるようなことはしません。あくまで通常の税務調査なので、まずは顧問税理士に電話が来ます。

そして、税務調査の日程はおおよそ2日。長くて3日です。ついでに、税務署の希望日も聞いて、のちに会社の社長(50代男性)とすり合わせます。

今回の調査対象の会社名について考えていた筆者は、ここで疑問を抱きます。

「あれ? ここは、3期か4期程度しか決算をしていなかったはずなのに……」。

遠慮せずに、なぜ設立3期しか決算をしていない会社に税務調査が入るのか聞いてみました。すると、返ってきた答えは、「売上金額」と「利益金額」との関係に異常が見られたとのこと。たしかに、当該会社は設立から3年間、顕著に売上の増加が見られたものの、利益は横ばい。それについて「異常」と見られたようです。

とはいえ、常にさまざまなことが起きるのが会社。増収・利益横ばい、という会社も決して珍しいわけではありません。あまり納得感がないながらも、とりあえず税務調査を受けることにしました。

設立3年で税務調査が入るのは、ある意味ラッキー?

ところで、経営者さんのなかで、自社の決算書についてなんでも答えられる方はいますでしょうか。特に、資産と負債が記載されている「貸借対照表」。

筆者も、前任の税理士から会社の税務顧問を引き継ぐことがあります。すると、「なんだろう? この資産とか負債は……」と思うようなことが多々あります。

たとえば、預り金1万5,342円、仮払金24万5,300円……といったものであったり、長期貸付金の貸付先が役員の名前でなかったり。

いったんわからない支払や入金をこういった勘定科目にしておいて、数年経ったところで、誰もわからなくなるようなことは度々あります。さらに、税理士の交代があると、ほぼ迷宮入りになります。ただし、もちろんこのようなよくわからない勘定科目について税務署に聞かれても誰もわかりません。

「わかりません」という回答をすればするほど、税務調査も厳格にされますし、時間も長引く可能性が高まります。ただ、今回のように設立3年ともなると、さすがに会社と税理士双方で記憶も新しいし、探られたら痛いような変な取引も出づらいので、基本的にいわゆる「謎の勘定科目」は出にくいのです。

今回やってきたのは、比較的年齢が若い調査官2名。聞かれたことにはサクサク回答し、エビデンスも完備しているため、税務調査は予定していた2日間もかからず終了。  

税務署への「お土産」

「税務署にお土産はもっていかせるべきか?」といった質問はたびたび聞かれます。

今回も社長から「税務署が入ったら、少し間違いを指摘されて少し追徴されたほうがもっと痛い腹を探られなくて済むのではないか?」という質問を受けました。これについては、税理士としての経験上、なんとなく肯定されてもいいかなとは思います。

というのも、ここの会社、資料がしっかりしていないんだよなという会社ほど、「あれ、こんなもので終わり?」ということがあります。ちなみに、今回の会社はやりすぎというくらいしっかり管理されていたので、「普通、ここまで見るか!?」というくらい見られました。

とはいえ、税務署に少し持って行ってもらうために、わざと緩い会計をするのはどうかと思います。あくまで私見ですが。

というわけで、税務調査は基本的に3年です。それを超えるといつでも税務調査の対象にもなると思ってください。そして、税務調査の中心は、会計ソフトに記載のある「会計帳簿」です。少しお金がかかっても、会計ソフトでしっかり記録するようにしておいてください。結果的に会社を守ることになります。

起業して間もない経営者、事業主の方のご参考になれば幸いです。

清川 英哲

株式会社アートリエールコンサルティング

税理士/公認会計士/証券アナリスト/CFP/宅地建物取引士

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