年金18万円・実家でひとり暮らしの〈72歳父〉急逝。思い出に浸りながら「遺品整理」の〈40代の子どもたち〉が目撃した「亡父の別の顔」
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年9月27日 9時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
誰もが訪れる「親の死」。悲しみに包まれるなか、相続税の申告などのために「遺品整理」を行う必要があります。そのとき思わぬものを発見し、仰天することも珍しくないようです。
高齢化と共に「おひとり様の高齢者」が増加
高齢化と人口減少が進むなか、高齢者人口は1950年以降、初めて減少に転じました。一方で、総人口に占める高齢者の割合=高齢化率は29.1%と過去最高を記録しています。また、75歳以上の人口は2,000万人を突破し、10人に1人が80歳以上となっています。
高齢化とともに増えているのが、ひとり暮らしの高齢者。厚生労働省『令和5年国民生活基礎調査』によると、2023年の高齢者世帯(1人以上、65歳以上の高齢者がいる世帯)は1,656.0万世帯。そのうち単身の高齢者は855.3万世帯です。
男女別にみていくと、男性の単独世帯は304.2万世帯、女性の単独世帯は551.1万世帯。これは平均寿命の差。2023年の平均寿命は男性81.09年、女性87.14年。男性のほうが年上の夫婦が多いこと、そして男性のほうが短命であることから、ひとり暮らしの高齢女性が増えています。
高齢者のひとり暮らしが増えるに従い増えるのが、そんな親を心配する子どもたち。「高齢の親が実家でひとり暮らしをしているんだが、大丈夫だろうか?」というものです。若いころは何ともなかった段差や階段が、高齢者にはきつく。また「火の元はちゃんとしているだろうか」「鍵はちゃんと閉めているだろうか」「ひとり病気で倒れていないだろうか」など、心配はつきません。
一方で親にしても「子どもに心配されるほど年老いていない」と子どもの心配に対して腹を立てたり、「子ども家族に迷惑をかけるのはしのびない」と頑として子どもたちのサポートを拒否したりすることも珍しくありません。
小林聡子さん(仮名・45歳)も、実家でひとり暮らしをしている父親を心配するひとり。小林さんは、2つ下に妹、3つ下に弟の3人きょうだい。みんな結婚し、それぞれ家庭を持つています。母親は20年ほど前に他界。10年前には末っ子の弟の結婚が決まり、実家を出ていきました。
――ひとり暮らしも快適だよ
――ひとりなら年金だけで十分に暮らしていけるし
年金は月18万円。手取りだと15万~16万円程度でしょうか。確かに、趣味らしい趣味も聞いたことがない父親なら、それで十分に暮らしていけそう。しかしもともと腰が悪く、階段の上り下りも大変そうなのをみては、同居を提案してきたという小林さん。ところが父親は「お互い気を遣う生活のほうがイヤだろう」と首を縦に振ることはなかったといいます。
父の遺品整理で実家に集まった3人の子どもたち…思い出話に花が咲き
ひとり暮らしの親を心配する子ども。しかし小林さんの場合、親を心配する日々は、突然、終わりを迎えます。父親が突然亡くなったのです。心筋梗塞。近所の人たちと集まっているなか倒れたといいますが、孤独死ではなかったことが唯一の救いだと小林さん。
葬儀がひととおり終わり、落ち着いたころ、遺品整理のためにきょうだいたちが集まりました。
押入れから出たきたのは、古い家族写真。父の子どものころのもの、出会ったころだと思われる父と母、小林さんたちがまだ幼いころの家族の様子……「昔は、たくさん写真撮っていたよね」などと、思い出話に花を咲かせながら、遺品の整理を進めていったといいます。
株式会社林商会による『遺品整理に関する調査』によると、遺品整理を行ったタイミングとして最も多かったのは「葬儀後すぐ」で35.5%。「四十九日後すぐ」22.5%、「3ヵ月以内」20.5%と続きます。また遺品整理にかかった時間で最多は「1ヵ月以内」で22.0%。「1週間以内」17.5%、「3日以内」12.5%、「3ヵ月以内」12.0%と続きます。小林さんきょうだいのように思い出話をしたり、感情の整理をしたりしながら進めるからでしょうか、長時間かけて行う人も結構います。
遺品整理を一緒に行う人は「自分と親族数人」が8割と圧倒的。一方でモノが多く、業者に依頼するケースも珍しくなく、その費用は「自分たち+業者」というケースでは「1万~5万円」「5万~10万円」「10万~30万円」が22.2%。「業者に全面依頼」というケースでは「~30万円」と「30~50万円」が半数ずつでした。
遺品整理に思わぬ出費、という嘆きの声はよく耳にするもの。遺される人たちに大きな負担をかけぬよう、万が一のときのことを普段から親子で話し合っておくこと、また少しずつ終活を進めていくことが大切です。
小林さんらの場合、特に急ぐこともないと時間を見つけて、すべて自分たちで行うつもりだったとか。
――話に花が咲き、全然進みませんでした(笑)
遺品整理、2回目のとき。この日は父親の書斎の整理をすることになっていました。そこで見つけた遺品の数々に、小林さんたちは目が点となります。
――なに、これ?
かつら、衣装、刀…父親が遺した「謎」の答え
小林さんの父親の書斎から出てきたのは、金や青などさまざまな髪色のかつら、どこで着るのかわからないような奇抜な服、何に使うのかわからないような刀のようなもの……何が何なのかわからない小林さんたちは、しばらく無言になってしまったといいます。
ただ妹が「わかった、これだわ」と発したのを機に、謎はすべて解けたといいます。
――これ、コスプレするためのものじゃない?
かつらや服などと一緒に出てきたのは大量のマンガ。小林さんも知っているようなメジャーなものもあれば、最近の新しいものまで。子どもたち、3人ともマンガやアニメには疎くよくわかりませんでしたが、そのなかのひとつが父親のお気に入りのよう。表紙で描かれているキャラクターの絵を見る限り、かつらや衣装などはそのキャラクターになりきる、コスプレするための道具だったのです。
――お父さん、こんな趣味があったんだ
遺品整理を通じて、父親の意外な一面を発見した小林さんたち。コスプレイヤーの仲間たちと笑顔で写る写真も見つけ、思わずほっこりしたそうです。
――楽しそうね、お父さん
――ねっ、趣味とか何もない人かと思った
――こんな風にも笑うんだ、親父
再び、話に花が咲き、作業は停滞。「どれくらい時間がかかるんでしょうね」と大笑いの小林さん。父親との急な別れではあったものの、小林さんたちは、何とも幸せな時間を過ごしているといいます。
[参考資料]
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