遺産分割の「弁護士費用」…相場を超えて高額な請求をされたワケ【弁護士が解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年10月5日 14時45分
(※写真はイメージです/PIXTA)
遺産分割を自分で進めることが難しい場合や、相続人同士で遺産分割協議がまとまらない場合、対応を弁護士に依頼することが可能です。弁護士にはどのようなことを依頼できるのでしょうか? また、遺産分割への対応を弁護士へ依頼する場合、どの程度の費用がかかるのでしょうか? 本記事では、遺産分割の弁護士費用について、Authense法律事務所の堅田勇気弁護士が詳しく解説します。
遺産分割を弁護士へ依頼する場合の費用相場
遺産分割を弁護士に依頼する場合の費用や報酬の計算方法は、それぞれの法律事務所によって異なります。なぜなら、弁護士報酬は自由化されており、各事務所が自由に定められるためです。そのため、遺産分割について依頼した場合の具体的な費用を知りたい場合は、依頼を検討している先の事務所に確認する必要があります。
ただし、自由化される前の日本弁護士連合会による旧報酬規程をベースに報酬を設定している事務所も存在します。弁護士報酬の目安を知りたい場合には、旧報酬規程が1つの参考となるでしょう※。
ここでは、遺産分割について弁護士に依頼した場合にかかる費用の種類を紹介します。実際の報酬額は事務所ごとに異なるほか、依頼する業務の内容によっても異なるため、あくまでも参考としてご覧ください。
初回相談料
遺産分割について弁護士に依頼したい場合、まずは初回の法律相談をしたうえで、正式に依頼するかどうかを決めることが一般的です。相談料は、30分あたり5,000円から1万円程度が目安です。
着手金
遺産分割について弁護士に依頼した場合は、着手金が発生することが多いでしょう。着手金とは依頼する時点で支払うものであり、結果に関わらず支払いが必要となる費用です。遺産分割事件の場合、着手金は20万円から40万円程度が目安となります。着手金が安価である代わりに成功報酬が高く設定されているなど、事務所ごとに特色があります。
成功報酬
成功報酬とは、弁護士による案件処理の内容に応じて発生する報酬です。成功報酬は、経済的利益に対する割合で定められることが多いでしょう。遺産分割事件の場合、成功報酬は5%から15%程度が目安となりますが、最低額が別途定められていることもあります。
日当・実費
弁護士へ遺産分割について依頼する場合、報酬のほかに日当や実費がかかる場合もあります。実費は依頼する業務の内容によって異なるものの、数千円から数万円程度であることが一般的です。日当は1日あたり3万円から5万円程度が目安ですが、はじめから報酬に日当が含まれている場合もあるため、あらかじめ確認することをおすすめします。
遺産分割の弁護士報酬は誰が負担する?
遺産分割について弁護士へ対応を依頼する場合、弁護士報酬は誰が支払うのでしょうか? ここでは、順を追って解説します。
依頼者が負担するのが原則
弁護士費用は、弁護士に依頼した者が負担するのが原則です。相続人のうち一人が依頼する場合はその者が負担することになり、数人が共同して依頼する場合はその数人が分割して負担することとなります。もちろん、ほかの相続人が分割して弁護士費用を負担することに合意する場合には、ほかの相続人とともに負担をしても構いません。
相手方に負担させることはできない
不法行為による損害賠償事件などの場合には、損害額と併せて相手方に弁護士費用の一部を負担させることもあります。
しかし、遺産分割事件はその性質上、「勝ち・負け」を決めるものでもなければ、誰かが一方的に「悪い」わけでもありません。そのため、相手方に弁護士費用を負担させることはできないのが原則です。
たとえば、一部の相続人が遺産分割協議に関する連絡を無視し続けたことなどによりやむを得ず調停や裁判に至った場合などであっても、原則として、相手方に弁護士費用を負担させることはできません。
遺産分割に関して弁護士に依頼できることと費用の目安
遺産分割に関して弁護士に依頼できることと、それぞれの費用の目安をご紹介します。紹介する金額はあくまでも目安であり、実際に依頼をご検討の際は相談先の事務所へご確認ください。
相続人調査
相続人調査とは、戸籍謄本や除籍謄本などを辿り、故人(「被相続人」といいます)の相続人が誰であるのか確定する手続きです。相続人が被相続人の兄弟姉妹である場合や、相続開始から数十年間にわたって手続きが放置されていた場合は、相続人の調査にも大変な手間がかかるでしょう。そのような際は、弁護士に相続人調査を依頼することができます。相続人調査を弁護士に依頼する場合の費用の目安は、10万円から20万円程度です。
相続財産調査
遺産分割協議を行う前には、被相続人の遺産を洗い出さなければなりません。どのような遺産がどの程度あるかわからなければ、遺産分割協議をすることが困難だからです。しかし、被相続人が一人暮らしであった場合や、被相続人が家族に対して財産の話をしてこなかった場合などには、どこにどのような遺産があるのかわからない場合もあるでしょう。そのような際は、弁護士に相続財産の調査を依頼することができます。
相続財産調査を弁護士に依頼した場合の費用の目安は、20万円から30万円程度です。ただし、遺産の数が多い場合や、調査が難しい遺産がある場合は、追加の費用がかかる可能性があります。
遺産分割の代理交渉
遺産分割協議は当事者同士で行うことが原則ですが、弁護士に代理で交渉してもらうことも可能です。先ほど解説したように、遺産分割協議の代理交渉を依頼した場合の弁護士費用の目安は次のとおりです。
・着手金:20万円から40万円程度 ・成功報酬:経済的利益の5%から15%程度(最低報酬額あり)
遺留分侵害額請求
遺留分侵害額請求とは、遺言書や生前贈与などで自身の最低限の取り分(「遺留分」といいます)を侵害された場合に、侵害された遺留分相当額を、遺産を多く受け取った者に対して請求する手続きです。この手続きや交渉を弁護士に依頼する場合の費用の目安は次のとおりです。
・着手金:20万円から40万円程度 ・成功報酬:経済的利益の5%から15%程度(最低報酬額あり)
なお、ほかの相続人から遺留分侵害額請求をされた場合も、弁護士へ対応を依頼することが多いでしょう。その場合の費用も、請求する側の報酬と同等となるのが一般的です。
遺言執行
遺言執行とは、被相続人が遺した遺言書を遺言書どおりに実現する手続きです。遺言執行を弁護士に依頼する場合の費用の目安は遺産総額によって異なり、最低30万円程度から、かつ遺産総額の1%から2%程度であることが多いでしょう。なお、弁護士に遺言執行者への就任を依頼する場合、遺言書を作成する時点で、遺言者自身が依頼することが一般的です。
遺産分割に関する弁護士費用が高額になりやすいケース
遺産分割に関する弁護士費用が高額になりやすいのはどのような場合なのでしょうか? ここでは、弁護士費用が高額になりやすいケースを3つ紹介します。
遺産が多額である場合
1つ目は、遺産が多額である場合です。遺産分割に関する弁護士報酬は、その人が獲得した経済的利益の額によって変動することが一般的です。そのため、遺産が多額であり、その人が獲得する遺産が多ければ多いほど、弁護士費用も高くなる傾向にあります。
相続人の数が多い場合
2つ目は、相続人の数が多い場合です。相続人が多い場合はそれだけ相手方の数が増えるため、弁護士報酬が高くなる可能性があります。
調停や審判にまで発展する場合
3つ目は、裁判外での協議がまとまらず、遺産分割調停や遺産分割審判にまで発展する場合です。遺産分割協議がまとまらない場合は、遺産分割調停に移行して解決を図ることとなります。遺産分割調停とは、家庭裁判所で行う話し合いであり、調停委員が当事者から交互に意見を聞く形で進行します。遺産分割調停を成立させるには、相続人全員による合意が必要です。
遺産分割調停が不成立となった場合は、遺産分割審判へと移行します。遺産分割審判とは、諸般の事情を考慮したうえで、裁判所が遺産のわけ方を決める手続きです。遺産分割協議への対応を弁護士へ依頼している場合、遺産分割調停に移行した時点で追加報酬が発生するのか、遺産分割調停までは同料金で遺産分割審判へ移行した際に追加料金が発生するのかは、事務所によって異なります。そのため、料金内で対応してもらえる範囲についても、あらかじめ確認しておくとよいでしょう。
遺産分割について弁護士へ依頼する主なメリット
遺産分割について弁護士に対応を依頼すると、弁護士費用が発生します。しかし、それでも弁護士へ依頼することには、メリットが少なくありません。最後に、遺産分割の対応を弁護士に依頼するメリットを3つ解説します。
交渉を有利に進めやすくなる
弁護士は法令を熟知していることはもちろん、交渉についても場数を踏んでいます。また、審判にまで移行した場合の「落としどころ」を想定したうえで、交渉することが可能です。そのため、遺産分割協議を有利に進めやすくなります。
心理的な安心感が得やすくなる
遺産分割協議は親族間で行うものであり、直接自身の意見を主張したり交渉したりすることに不安を感じる人も少なくないでしょう。特に、相続人の中に威圧的な態度を取る人がいる場合などにはなおさらです。弁護士に代理で交渉してもらうことで、自分で直接相手と対峙する必要がなくなることから、心理的な安心感が得やすくなります。
書類作成や交渉などの手間が軽減される
遺産分割など相続の場面では、さまざまな書類を集めたり作成したりしなければなりません。なかには見慣れない書類も多く、これらを揃えるだけで大変な思いをすることもあるでしょう。遺産分割調停に移行する場合などには、調停の申し立てにあたって必要となる書類なども集める必要が生じます。
弁護士へ依頼することで、相手との交渉を代理してもらえるのみならず、遺産分割協議書などの書類の作成なども代行してもらえるため、相続に関して割くべき手間を大きく削減することが可能となります。
まずは費用相場を確認
遺産分割について、弁護士に対応を依頼した場合の報酬について解説しました。相続の場面では、弁護士にさまざまなことを依頼できます。遺産分割協議の代行や遺産分割調停のサポートなど相手方との交渉がまとまらない場合の交渉を依頼できることはもちろん、相続人調査や遺産調査、遺言執行、遺留分侵害額請求などの依頼も可能です。
相続や遺産分割に関してお困りの際は、弁護士への相談をお勧めします。弁護士へ依頼した場合の費用は事務所によって異なるうえ、依頼したい業務の内容によっても異なります。そのため、まずは初回相談を活用して困りごとの内容を伝え、依頼した場合にかかる具体的な費用も確認するとよいでしょう。
<参考>
※弁護士会:(旧)日本弁護士連合会報酬等基準
https://miyaben.jp/wordpress/wp-content/themes/miyaben/img/indication/expenses_kijun.pdf
堅田 勇気
Authense法律事務所
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