共済に入っているから安心ですよね?民間の生命保険に入っていない45歳娘に72歳母が不安を抱くワケ【CFPの助言】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年10月1日 11時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
Aさん(72歳)は45歳の娘が「保険料が安いから」と共済にしか加入しておらず、今後大丈夫かな? と不安に感じています。Aさん自身、民間の生命保険に入っていて大病をしたときにとても助かったので、できれば生命保険に入ったほうがいいのでは?と娘に勧めているとのこと。今回は同じような考えを持つ人に向け、CFPなどの資格を持つトータルマネーコンサルタントの新井智美さんが「共済と民間の生命保険の違い」について解説します。
Aさんが熱心に保険を勧めるワケ
45歳の一人娘がいるAさん(72歳)。独身の娘は都会でバリバリ働いているキャリアウーマン。これまで大きな病気をしたこともなく、健康にも自信があるせいか共済にしか加入していません。娘が実家に帰省するたびにAさんは生命保険の加入を勧めるのですが「私は大丈夫!」の一点張りです。
保険会社の社員でもないAさんが熱心に民間の生命保険への加入を娘に勧めるのにはワケがあります。実はAさんは50代の頃に乳がんを患ったのですが、保険に入っていたお陰で何も心配することなく治療に集中できたという経緯があったのです。
ある日、いつものように保険の話になったAさんと娘。ついに娘から「お母さんはいつも保険に入れって言うけどさ、共済との違いは何かちゃんと説明できる? 私にプレゼンしてみてよ!」と強く言われてしまいました。
共済の掛金が安いワケ
共済とは、お互いを助け合うことを目的としており、利益を追求していません。そのため、共済に加入している人同士がお金を出し合い、もしものことが起こったときに保障される仕組みです。
共済のメリットはなんといっても掛金が安いことです。利益を追求していないため、掛金を安くできますし、最終的にみんなが払った掛金が余った場合は割戻金として還元されるといった無駄のない点も魅力でしょう。ただ、保障内容はシンプルに設計されているため、Aさんのように不安を感じる人もいます。特に老後の保障額が少なくなる点は不安に感じるでしょう。
共済にはさまざまな種類があり、一番よく知られているのは県民共済や全労済(こくみん共済)ではないでしょうか。ほかにはコープ共済やJA共済などがあります。また、学校共済のように学校に勤めている人を対象とした共済もあり、組合員になることで加入できます。
共済には掛金が安く、年齢や性別によって掛金が変わらないといったメリットがあるものの、保障があまり十分でない点や、年齢が上がることで保障金額が下がってしまうなどのデメリットがあります。
民間の生命保険は、各保険会社が保険業法という法律に基づき、営利目的で行っており、その分保険料が共済に比べて割高になっています。また、加入時の年齢や性別によって保険料が異なる特徴も共済と異なる点です。
ちなみに共済では掛金、民間の生命保険では保険料と使う言葉が異なる点も覚えておきましょう。
共済は組合員しか加入できませんが、民間の生命保険は告知に問題がなければ誰でも加入できます。また、保障内容も時代に合ったさまざまな種類を取りそろえており、カスタマイズすることも可能です。
民間の生命保険に向いている人とは?
民間の生命保険には、貯蓄性のある終身保険や養老保険、変額保険などがあり、保障を受けながら貯蓄できるというメリットがあります。また、定期保険や医療保険、がん保険は基本的に掛け捨てですが、入院や手術、通院だけでなく、働けなくなった際の保障も用意されているなど、保障の範囲の広さや充実度が高い点もメリットでしょう。
共済と民間の生命保険の大きな違いは、共済の場合、運営組織が破綻してしまうと保障が受けられないことです。民間の生命保険の場合、保険会社が破綻してしまっても「生命保険契約者保護機構」によって保険金を確実に支払うために、保険料の一部を積み立てている責任準備金の90%までが補償されるので安心できるでしょう。もちろんその後の契約に影響が全くないとは言い切れませんが、保障が全く受けられなくなる共済に比べると安心です。
これらのことから、共済に向いている人と民間の生命保険に向いている人には以下の違いがあります。
共済に向いている人の特徴として挙げられるのは、掛金が安く最低限の保障でいいと思っている人です。主に子どもなどは共済でも十分だと考える人も多いのではないでしょうか。
逆に民間の生命保険に向いている人とは。保障を受けながら貯蓄もしたいと考えている人や十分な保障を受けたいと思っている人です。
民間の生命保険に入ったうえで共済でカバー
Aさんの娘さんは45歳ですので、これから病気にかかるリスクも大きくなります。また働いているなら、働けなくなったきとの保障もあったほうがいいでしょう。もちろんケガや病気で休職することになったときには加入している健康保険組合から手当てが受け取れますが、実際に受け取れるのは申請してから2~3ヵ月後です。民間の生命保険だとすぐに保険金や給付金を受けられるため、その間の収入不足を解消できます。
一番いい方法は、現在必要な保障は何かを把握したうえで民間の生命保険に加入し、それでも不足する部分や不安に感じる部分があれば共済にも加入することを検討することです。そうすることで、民間の生命保険では保障の対象とならなかったケースでも共済では保障の対象となり、保障を受けられる可能性があります。
確かに保険料はずっと払っていくため生涯でみれば大きな額になります。しかし、がん保険のように、いったんがんに罹患した場合はその後完治したとしても加入できないといった制約もあります。
結果としてAさんの娘さんは老後の不安を少しでも和らげるために、必要と思われる終身保険や医療保険、がん保険は民間の生命保険で備え、不足する部分があれば共済を利用することを考え始めたそうです。
必要な保障は人によって異なります。ただ、後悔することはしたくないものです。
共済と民間の生命保険のメリット、そしてデメリットを理解したうえで、自分にあった保障を準備しておきましょう。また、民間の生命保険は加入してからもライフスタイルの変化に応じて見直すことも忘れないようにしてください。
新井智美
トータルマネーコンサルタント
CFP
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