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景気後退は「恐るるに足らず」?…マーケットのプロが考察する〈利下げ後〉の株式相場

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年10月5日 9時15分

景気後退は「恐るるに足らず」?…マーケットのプロが考察する〈利下げ後〉の株式相場

(※写真はイメージです/PIXTA)

利下げに舵を切った米国。この決定は景気と株価にどのような影響をもたらすのか……また、私たちはどのような投資行動が求められるのか。フィデリティ・インスティテュート主席研究員でマクロストラテジストの重見吉徳氏が、過去のデータを紐解きながら考察します。

「利下げ後の米景気と株価」今までの動向とポイント

9月17日から18日にかけて米連邦公開市場委員会(FOMC)が開かれ、0.5%の利下げが決定されました。

このほか、年内に追加で0.5%、来年2025年に1%、再来年2026年に0.5%の利下げを実施した上で、政策金利を中立水準付近(2.9%)に誘導する見通しを示しました。

利下げは、経済に存在するすべてのパーティーを「救済」します。

現在の米国で言えば、これから住宅を買おうとしている家計、すでに高いクレジットカード・ローン金利を課されている家計、設備投資や運転資金が必要な企業、低稼働率のオフィス不動産を保有する主体、保有債券に巨額の含み損を抱える商業銀行、債務・GDP比が第2次大戦時並みである中央政府、そして、債務超過状態にあるFRB自身もそうです。

今後、いくぶんの景気鈍化や景気後退があったとしても、中期的には景気が強くなっていく絵や、それを先読みするように株価が上がっていく絵をイメージしておくのがよいでしょう。

まず、最初に投資家に関わりがある「利下げ後の米景気と株価」についてまとめます。

第2次大戦以降の米利下げ時のS&P500

[図表1]は、第2次世界大戦が勃発した1939年以降の、合計14回の米国の利下げ期におけるS&P500指数の平均リターンを示しています(価格指数の月中平均値を使用)。

主要な観察点を述べると、 利下げ開始12ヵ月後、24ヵ月後、36ヵ月後におけるリターンの平均値は、約11%、27%、35%のプラス(上昇)でした。

大変望ましい結果です。

ただし、①あくまで平均値ですし、②24ヵ月後や36ヵ月後となると、次の利下げ局面と重なる(=データが互いに重複している)場合もある点に注意が必要です。

そこで、次に、利下げ開始から12ヵ月間における株価の軌道なども確認してみます。

[図表2]は、第2次世界大戦が勃発した1939年以降の、合計14回の米国の利下げ期におけるS&P500指数(価格リターン、月中平均値)の全軌道と平均値を示しています。

主要な観察点を述べると、[図表1]でも示したとおり、利下げ開始12ヵ月後におけるリターンの平均値は、約11%のプラス(上昇)でした。また、利下げ開始12ヵ月後におけるリターンは、全14回中12回がプラスでした。リターンがマイナスだった2回は、ITバブル崩壊後と世界金融危機時です。

12ヵ月後の株価は「上昇」でも、途中は下がる場合も

ただし、利下げ開始12ヵ月後におけるリターンがプラスだった12回をみると、利下げ開始後6ヵ月や9ヵ月あたりにかけて、株価が下がる場合があることが観察できます。

なぜなら、そもそも、全14回の利下げ後12ヵ月間のうちに、9回は景気後退が生じているためです。プラス、1回は利下げ開始後14ヵ月目から景気後退に入り、数ヵ月間、株価はいくぶん調整しています。

逆に言えば、今後の気持ちの持ち方(2回を除けば、12ヵ月後にはプラスになっているため)「景気後退は恐るるに足らず」ということかもしれません。

今後の対処方法……2回を除けば、下落の期間は半年から9ヵ月程度に留まるため、「景気後退による下落は『残された、限定的な機会』と捉え、積み立て投資で安値を拾う準備を進める」ということかもしれません。

[図表4]は、全14回の米国の利下げ期におけるS&P500指数(価格リターン、月中平均値)の軌道を、「景気後退入りしたとき」と「景気後退入りしなかったとき」に色分けしたものです。株価の挙動をイメージしておかれてください。

簡単に言えば、直観のとおり、「景気後退入りしなかったとき」のほうが、「景気後退入りしたとき」に比べて、株価は高く、安定的に推移するようにみえます。

いまはもう「景気後退」なのか

景気後退のテクニカルな基準は「2四半期連続のマイナス成長」です。ただし、過去をみると、「景気後退はおもに失業率が上昇しているとき」です。失業者の割合が増えているわけですから、景気後退と判定されるのも自然です。

「現在、失業率は上昇中」ですから、「すでにわれわれは景気後退のなかにいて、いまから数年後になって、全米経済研究所(NBER)が『景気後退は、2024年半ばから始まっていた』と判定する」可能性も考えられます。    

「いまが景気後退?」と疑問に思われるかもしれません。

たとえば、アトランタ連銀のリアルタイムGDP予測「GDPNow」によれば、7-9月期の実質GDP成長率は+2.9%であり、FRBが考える潜在成長率(1.8%)を大きく上回って推移しています。  

逆に言えば、①景気後退がこの程度で済むのであれば、あるいは、②ここからやや雇用が減るなどする浅い景気後退に留まるならば、やはり「恐るるに足らず」かもしれません。

いずれにせよ、前節で確認したように、株価は景気後退の場合でも長期では上昇する場合が多いわけですから、冷静な判断が必要でしょう。

今回が「3回目」になるリスクは?

もちろん、今回の利下げ局面が、ITバブル崩壊後と世界金融危機時につづく、3回目の株価本格調整局面となる可能性も完全には否定できません。

たとえば、

  • 米国の大統領選挙の「結果」をめぐって、米国内が内戦事態となる。
  • ウクライナがロシアに長距離ミサイルを撃ち込み、ロシアとNATOが全面戦争に入る※プーチン大統領は「ウクライナによる長距離ミサイルの発射は、NATO諸国、米国そして欧州諸国がロシアと戦争状態にあることを意味する」と述べています。なぜなら、「ウクライナは長距離ミサイルを発射するためのプログラミング技術や、ターゲットに照準を合わせるための衛星データを扱う能力がなく、長距離ミサイルの発射にはNATOが関与する必要がある」(プーチン氏)ためです
  • イスラエルとレバノンやイランが全面戦争に入る

  • 新たなパンデミックが起きる

といったことです。

こうしたリスクにどう対処するかは、各投資家の期待とリスク許容度しだいです。

筆者としては、十分な分散投資をお勧めします。

重見 吉徳

フィデリティ・インスティテュート

首席研究員/マクロストラテジスト

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